編集部には、地方在住の40代・50代の方から「ジムをやるなら、やっぱり名前の通ったブランドに加盟したほうがいいのでしょうか」という相談がときどき届きます。名前が挙がりやすいのがゴールドジムです。
ただ、相談の中身を聞いていくと、多くの方が最初に調べているのは「加盟金はいくらか」でした。ジムというビジネスに関しては、そこは実は二番目です。ジムの採算は、費用の大部分が会員数と関係なくかかるという構造で決まります。加盟金は一度きりの出費ですが、この構造は毎月ずっと効き続けます。
この記事では、実在するジム系フランチャイズが公表している収支モデルの数字を使って、「何人集めれば赤字を脱するのか」を実際に逆算します。そのうえで、大型総合ジムであるゴールドジムを検討するときに本部へ確認すべき項目を整理します。
ゴールドジムのフランチャイズは儲かる?先に結論と、手取りの目安
先に3行で結論を書きます。
- ジムの採算は「加盟金」ではなく「損益分岐会員数(何人集まれば赤字を脱するか)」で決まる
- 設備が大きいジムほど、費用が会員数と関係なく一定額かかる。つまり会員が減った分がそのまま赤字になる
- ゴールドジムは加盟条件の金額を一般公開していない。だからこの記事では推定額を書きません。数字が出てくるまでは判断できない、というのが編集部の立場です
まず「小さいジム」と「設備の大きいジム」で手取りがどう違うかを、実在ブランドが公表している収支モデルで見てみます。
| 項目 | パーソナルミット(小型・パーソナル型) | マイゴル(設備型・無人運営) |
|---|---|---|
| 業態 | キックボクシングのマンツーマン指導 | インドアゴルフ(打席+シミュレーター) |
| 初期費用 | 436万円〜(物件による) | 3,270万円 |
| 加盟金 | 300万円 | 350万円 |
| ロイヤリティ | 月10万円(固定) | 月25万円(4打席の場合・打席数で固定) |
| 本部モデルの月商 | 月商100〜150万円 | 月商200〜300万円 |
| ①返済前・税前に残る額 | 月60〜105万円 | 月74〜165万円 |
| ②借入返済後(編集部逆算) | 約52〜97万円 | 約56〜147万円 |
| ③自分の人件費の扱い | 本部モデルに明記なし(要確認) | 無人運営前提。オーナー報酬の扱いは要確認 |
※①は本部公表値。②の返済額は編集部が仮に置いた条件による逆算です。パーソナルミットは436万円全額を5年・年利2%で借りた場合の月約7.6万円、マイゴルは3,270万円のうち2,000万円を10年・年利2%で借りた場合の月約18.4万円で計算しました。実際の借入額・金利・期間で数字は変わります。 ※ゴールドジムはこの表に入れていません。加盟金・ロイヤリティが一般公開されておらず、入れても全行が「本部未公表」になってしまうためです。数字のない行を並べた表は、読む人の判断材料になりません。
出典: パーソナルミット / マイゴル(いずれも本部公表のモデル数値。時期により変動する場合があります)
手取りの内訳を分解する——ジムの利益は「会費×会員数 −(ほぼ動かない費用)」
ここからが本題です。上の2つのブランドは、公表されている数字が複数の会員数について出ているので、費用の中身を逆算できます。
設備型ジム(マイゴル)の場合
本部が公表しているのは次の3つのモデルです。
| 会員数 | 月商 | 営業利益 | 差引=月のコスト |
|---|---|---|---|
| 150名 | 197万円 | 74万円 | 123万円 |
| 190名 | 249万円 | 126万円 | 123万円 |
| 220名 | 288万円 | 165万円 | 123万円 |
コストの列を見てください。会員が150名でも220名でも、月のコストは123万円で変わりません(編集部逆算)。会員が70人増えても、かかるお金は1円も増えていない。これが設備型ジムの構造です。
ここから損益分岐会員数を出せます。
- 会員1人あたりの月会費 = 197万円 ÷ 150名 = 約1.3万円
- 損益分岐会員数 = 123万円 ÷ 1.3万円 = 約94名(編集部逆算)
つまり94人までは、集めても集めても利益はゼロ。95人目から先が、まるごと利益になります。逆に言えば、94人を割った瞬間から、減った人数分がまるごと赤字です。
パーソナル型ジム(パーソナルミット)の場合
こちらは会員が増えるとトレーナーの人件費が増えるので、構造が違います。
| 会員数 | 月商 | 営業利益 | 差引=月のコスト |
|---|---|---|---|
| 20名 | 80万円 | 43万円 | 37万円 |
| 37名 | 148万円 | 92万円 | 56万円 |
会員が17人増えると、コストが19万円増えています。ここから編集部で逆算すると、
- 会員1人増えるごとの追加コスト = 19万円 ÷ 17名 = 約1.1万円
- 会員1人あたり手元に残る額 = 客単価4万円 − 1.1万円 = 約2.9万円
- 会員数に関係なくかかる費用 = 37万円 −(20名 × 1.1万円)= 約15万円
- 損益分岐会員数 = 15万円 ÷ 2.9万円 = 約5名(編集部逆算)
設備型が約94名、パーソナル型が約5名。 同じ「ジム」でも、赤字を脱するまでに集めなければいけない人数が20倍近く違います。
ゴールドジムのような大型総合ジムは、マシン、フリーウェイト、スタジオ、シャワー、ロッカーを一通りそろえる業態です。構造としては、マイゴル型(費用がほぼ一定)のさらに極端な側にあります。しかも大型店は有人運営が前提なので、スタッフの人件費という大きな固定費が乗ります。
参考までに、家賃150万円・人件費200万円・水道光熱費80万円・マシンリースなど70万円と仮に置くと、月の固定費は500万円。会費を月1万円とすると、損益分岐会員数は500名です。これはあくまで数字の置き方の練習であって、ゴールドジムの実際の数字ではありません。ただ、「大型ジムでは必要会員数が数百人規模になる」という桁感はつかめると思います。

下振れ条件——ジムが赤字に落ちる3パターン
「儲かるか」を判断するときは、うまくいった数字ではなく、崩れるときの数字を見てください。ジムが赤字に落ちるのは、だいたい次の3つです。
パターン1:退会率(解約率)を甘く見ている
ジムは会員制のストックビジネス(毎月自動でお金が入る商売)ですが、裏を返せば毎月一定数が辞めます。仮に会員500名で月の退会率が5%なら、毎月25人が辞める。現状維持のためだけに、毎月25人を新規で入れ続ける必要があります。年間なら300人です。これを広告費なしで達成できるかを、開業前に必ず考えてください。本部に聞くべきは「平均在籍月数」または「月次退会率」です。
パターン2:近所に安いジムができる
24時間営業のセルフ型ジムや、月数千円のコンビニ型ジムが同じ商圏に出てくると、価格を理由に会員が抜けます。ここで怖いのが、前の章で見た構造です。費用は一定なので、会員が20%減れば利益はそれ以上の割合で消えます。 マイゴルのモデルで言えば、150名が120名に減っただけで、月74万円の利益が約33万円まで落ちる計算になります(編集部逆算)。
パターン3:立ち上がりが遅れて、開業資金が尽きる
会員は初日から満員にはなりません。損益分岐に到達するまでの数か月は毎月赤字が出ます。設備型の初期費用が3,270万円というスケールになると、この赤字を吸収する運転資金を別に用意しておく必要があります。マイゴルの本部モデルでは黒字化まで半年、投資回収2〜3年とされています。開業資金とは別に、最低6か月分の固定費を現金で持てるかが現実的なラインです。
大型総合ジム特有の落とし穴:マシンとスタジオは「買って終わり」ではない
ここからは、大型総合ジムを検討する人だけに関係する話です。
大型ジムの設備は、購入や設置で終わりません。あとから継続的にお金が出ていきます。
| 費目 | どういうお金か | 見落とされやすい理由 |
|---|---|---|
| マシンの保守・修理 | ベルト、ケーブル、ベアリングなどの消耗部品交換 | 初期見積もりには入っていないことが多い |
| マシンの入れ替え | 数年〜十数年で更新が必要。台数が多いほど総額が膨らむ | 開業時は新品なので実感がない |
| 水道光熱費 | シャワー・空調・24時間営業なら特に大きい | 燃料費の相場変動を受ける |
| 内装の原状回復 | 退去時に元に戻す費用。重量物を置いた床の補修を含む場合がある | 契約終了時まで請求が来ない |
| スタジオプログラムの権利料 | 外部プログラムを導入する場合の使用料 | ブランド側の指定で発生することがある |
「本格的な設備がそろっている」ことはゴールドジムの強みですが、加盟側から見ると強みの裏側は、そのまま維持コストです。検討するなら、初期費用の見積もりと一緒に「開業5年目の月次コスト表」を出してもらってください。1年目の数字だけを見て判断すると、マシン更新の山が来たときに資金が足りません。
地方でゴールドジムの看板はどこまで効くか
「ブランド名があれば集客が楽になる」——これは半分正しくて、半分は条件つきです。
ゴールドジムは、本格的なウェイトトレーニングをする層に非常に強い認知があります。この認知は、すでにトレーニングを習慣にしている人に対しては圧倒的に効きます。「ちゃんとした設備で鍛えたい」と考えている人は、名前を見ただけで候補に入れてくれるからです。
一方で、地方で会員数を数百人集めるには、この層だけでは足りません。実際の会員の多くは「運動不足を解消したい」「健康診断で言われたから」という、トレーニング未経験に近い層になります。この層にとっては、本格的な設備は魅力ではなく、むしろ入りにくさになることがあります。
つまり地方出店では、次の2つを両立させる必要があります。
- ブランドが強く効く層(本格志向)を、商圏内に何人見込めるか
- ブランドの印象で身構えてしまう層を、どうやって入会まで運ぶか
これは看板だけでは解決しません。商圏内の人口、競合ジムの数と価格帯、駐車場の台数(地方では車で来るため、駐車場の台数がそのまま会員数の上限になります)といった、立地の条件で決まります。本部に「この商圏でその会員数が集まる根拠」を聞き、既存店の実績で答えてもらうことが唯一の確認方法です。
なお、ゴールドジムの加盟に関する問い合わせ窓口は公式サイトにありますが、加盟金・ロイヤリティ・必要自己資金といった条件は一般公開されていません(2026年9月時点)。条件は改定される可能性があるため、最新情報は必ず公式サイトと本部への直接確認でお願いします。
大型・小型・無人、3つの型で必要な自己資金と現場負担はこれだけ違う
「ジムをやりたい」という気持ちが同じでも、選ぶ型によって、必要なお金も生活も別物になります。
| 大型総合ジム(ゴールドジム型) | 小型パーソナル型 | 設備型・無人運営型 | |
|---|---|---|---|
| 初期費用の水準 | 本部未公表。設備規模から最も大きくなる型 | 436万円〜(パーソナルミットの例) | 3,270万円(マイゴルの例) |
| 損益分岐会員数 | 数百名規模になりやすい | 約5名(編集部逆算) | 約94名(編集部逆算) |
| 会員1人あたり単価 | 本部未公表 | 4万円 | 約1.3万円 |
| オーナーの現場負担 | 有人運営。スタッフ採用と管理が主業務 | 自分がトレーナーとして立てる | 無人運営。日常の常駐は不要 |
| 会員が減ったときの痛み | 大きい(費用が減らない) | 小さい(人件費が連動して減る) | 大きい(費用が減らない) |
| 向いている人 | 資金力があり、人の採用・育成ができる人 | 自分の体と技術を商品にしたい人 | 現場に立たず、投資として回したい人 |
この表で一番見てほしいのは、「会員が減ったときの痛み」の行です。地方で、しかも初めての開業なら、ここが小さい型から始めるほうが、現実的にはリスクが低くなります。パーソナルミットは8〜10畳のスペースで開業でき、高価な筋トレ器具も不要とされています。ジムをやりたいという目的に対して、必ずしも大型店である必要はありません。
なお、月数千円のセルフ型ジム(コンビニ型ジム)の収支構造については、チョコザップのフランチャイズを検証した記事で会員数からの逆算方法をまとめています。無人型を含めて比べたい方はあわせてどうぞ。
契約前に本部へ聞く8項目
どのブランドを選ぶにせよ、加盟契約書にサインする前に、次の8つは書面で受け取ってください。口頭の説明だけで進めないことが大切です。
- 損益分岐会員数——何人で赤字を脱するのか。数字で答えてもらう
- 月次のコスト内訳——家賃・人件費・水道光熱費・ロイヤリティ・広告費を1行ずつ
- 費用のうち、会員数が減っても減らない部分はいくらか——この記事の核心です
- 既存店の月次退会率(または平均在籍月数)——直営店ではなく、加盟店の実績で
- 開業から損益分岐到達までの平均月数——立ち上がり期間の赤字額の目安になる
- 収支モデルにオーナー自身の人件費が入っているか——入っていないモデルは、その分だけ手取りが減ります
- 開業5年目の設備更新費——マシンの入れ替え・保守の見込み額
- 中途解約の条件と違約金、契約終了時の原状回復費——出口の条件を先に見る
3番と6番は特に飛ばさないでください。3番が答えられない本部は、自社の収支構造を数字で把握していない可能性があります。6番が「入っていません」なら、提示された利益からご自身の給料分をさらに引いた額が、実際の手取りです。
まとめ:数字が出てきてから判断しても遅くない
ゴールドジムのフランチャイズが儲かるかどうかは、加盟金の額では判断できません。判断できるのは、損益分岐会員数と、その人数が自分の商圏で集まる根拠が出てきたときです。
- ジムの費用は会員数と関係なくかかる部分が大きい。設備が大きいほどその割合が上がる
- 実在ブランドの公表数字から逆算すると、設備型で約94名、パーソナル型で約5名(いずれも編集部逆算)
- ゴールドジムの加盟条件は一般公開されていないため、条件は本部に直接確認するしかない
- 確認すべきは、加盟金より先に「損益分岐会員数」と「会員が減っても減らない費用」
金額が公開されていないブランドは、それだけで悪いわけではありません。ただ、数字が出てくるまでは「検討中」のままにしておくのが安全です。焦って契約を急ぐ理由は、加盟する側には一つもありません。
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そのうえで「自分の住んでいる地域で、この会員数は現実的なのか」を誰かと一緒に考えたい場合は、開業ジャパンの無料LINE相談を使っていただいてもかまいません。売り込みはしませんので、本部からもらった収支モデルを一緒に読むだけ、という使い方でも大丈夫です。
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