「田舎だからフランチャイズ(以下FC)は難しい」——そう思っている方にこそ読んでいただきたい回です。
運営者のYouTubeチャンネル「オグモーのフランチャイズを学ぼう」で、スポーツジムFC「コレジウム」に4店舗加盟しているオーナーへの1日密着が公開されました。畑が広がる、人口およそ5万人のエリア。それでも各店に数百人の会員が通い、会社としての年商は1億2000万円ほどと語られています。
今回は、その中身を「これから開業を考えている人が使える情報」に整理してご紹介します。
元は整骨院の院長。ジムは「まったくの素人」から
オーナーはもともと整骨院(骨や関節の痛みを手技で施術する治療院)の院長として、10年ほど現場に立ち続けてきた方です。5年前に1店舗目のジムをFC加盟でオープンし、現在は4店舗。整骨院も今も続けています。
動画のなかで印象的なのは、「自分でジムをやろうとは思わなかったのか」という問いへの答えです。
「ぶっちゃけ思った。でも調べるとマシンが高いし、セキュリティ会社もどこを選べばいいか分からない。お客さんへの提案の仕方も分からない。そっちは本当に素人だった」
だから、すでにうまくいっている形をそのまま借りる=FCを選んだ、と語られています。治療のプロでも、ジム経営については初心者。その自覚が出発点になっています。
動画で公開された店舗の数字
密着では、各店舗の状況が具体的に語られました。整理すると次のような内容です。
| 1店舗目 | 3店舗目 | 4店舗目(開業3ヶ月) | |
|---|---|---|---|
| 月商 | 約230万円 | — | 約130万円 |
| 月の利益 | 約90万円 | — | まだ黒字化前 |
| 会員数 | 約500人 | 約450人 | 約200人 |
会費は平均で月3500円ほど。4店舗目は家賃が約70万円と高めで、立ち上げのために社員を多く配置しているため固定費が月200万円ほどかかっており、現時点では黒字に達していないと説明されています。ただし立ち上げ担当のスタッフが抜ければ固定費は下がるため、「このまま行けば半年後には乗ってくる」という見通しが語られました。
損益分岐点(売上と費用がちょうど釣り合う地点)は、会員数で400〜600人あたり。 これが、この業態を考えるときの一番分かりやすい目安になります。
開業3ヶ月で200人。人口5万人の街での数字として、取材側も驚いていました。しかも広告費はほとんどかけておらず、「半分以上は口コミ」だそうです。
なぜ大手24時間ジムではなく、後発ブランドを選んだのか
理由は2つ語られています。
1つは初期投資の規模。動画では、大手の24時間ジムなら1億円規模になるのではないか、という話が交わされます。「最初のスタートで大きくお金がかかると、怖い」。だからスモールスタートできるブランドを選んだ、と。実際、マシンも内装も含めた初期費用は大手と比べてかなり抑えられたと説明されていますが、その代わりマシンの組み立てや内装業者との打ち合わせは自分たちで動く必要があるとのことです。
もう1つは客層と理念。大手にはトレーニング上級者が多く集まる一方、このオーナーが向き合いたかったのは「運動したことがない地域の人に、どう始めてもらい、どう続けてもらうか」。本部の考え方が自分と一致していたことが決め手だったと語られています。
「思いが一緒じゃないと、本部とFCという関係を続けるのは難しい」
加盟したのは本部の直営がまだ2店舗しかない時期で、FCとしても15店舗目あたり。「早い時期のFC加盟はリスクではないか」と問われると、「仕組みは今より薄かったけれど、一緒に夜な夜な考えてくれた」と振り返っています。仕組みの完成度ではなく、伴走してくれるかどうかを見たわけです。
整骨院とジムを隣に置く、という組み合わせ
4店舗のうち1つは、同じ建物の一角に整骨院を構えています。これが独自の強みになっていると語られます。
- 腰が痛くて来た人 → まず治療、その後に運動へ
- 運動しに来た人 → 「このままだと痛みが出るかも」と伝えて治療へ
どちらの方向にも流れがつくれる。前職の資産をそのままFCに接続した形です。すでに何かの専門職として働いている方には、特に参考になる発想だと思います。
会員が減った原因は「スタッフの男女比」だった
もっともリアルなエピソードがここです。1店舗目の会員数が一時、430人〜420人ほどまで落ちた時期があったそうです。
原因は、スタッフが男性だけだったこと。店の雰囲気がトレーニング上級者寄りになり、女性が入りにくくなっていた——そう語られています。そこで午前中に女性のパートスタッフを入れたところ、朝の雰囲気が変わり、会員数も戻ったとのこと。午前の来店者は年齢層が高めだったり女性が多かったりするため、そこに合わせる必要があった、という説明です。
「これに気づいたのは本部ですか?」と聞かれて、返ってきた答えは「自分たちです」。本部が全部気づいてくれる、という期待はしていない姿勢がよく分かる場面でした。
固定費を下げる工夫も、本部のノウハウではなく自分で考えたものが多いそうです。たとえばエアコンのタイマー設定を、年間を通して細かく組んでいるといった話が出てきます。
2店舗目以降は「近すぎる場所」にあえて出した
次に出す店舗は、既存店から車で約7分。FCでは商圏(1店舗が客を集める範囲)が重なるため普通は避ける距離です。それでも出す理由が語られました。
既存店でマシンの待ち時間ができ、駐車場に停められないというクレームが出始めたから。放置すれば顧客満足が下がる。そこで契約上の商圏ギリギリの位置に大きめの店を構え、混雑を分散させたのです。結果、既存店はちょうどよくなり、新店も会員が増えたとのことでした。
マシンの入れ方も同じ考え方です。最初から詰め込まず、4台からスタートして会員の増え方を見て5台に増やす。過剰投資を避ける進め方が徹底されています。
現場で起きる、生々しいトラブル
会費が手頃な業態ほどトラブルは起きやすくなる、という話も正直に語られました。
- 女性会員から「男性にじろじろ見られるのをどうにかしてほしい」という相談
- 体臭が気になる会員への対応
- 「インスタをフォローしたのにメンション返しが遅い」といった指摘
体臭の件は、個人を呼び出すのではなく、登録済みのLINEで全体へのお知らせとして対処法まで含めて発信する方法を試した、とのこと。「一個ずつクリアしていくしかない」という言葉が、そのまま現場の答えになっています。
採用については、整骨院にケガで通っていた野球部の学生が、専門学校に通いながらアルバイトとして働く流れができているそうです。自分のケガの経験が動機になる人が出てくる、と。治療とジムを併せ持つ体制が、採用面でも効いている形です。
本部に任せているのは「マシン」より「マネジメント」
4店舗までやったなら自分でできるのでは——という問いに、オーナーはこう答えます。
「やろうと思えばできるかもしれない。でも、やらないですね」
理由は人のマネジメント。店の作り方は覚えられるが、経営や組織づくり、スタッフの教育・育成の部分に本部が介入してくれることが大きい、と語られます。経営セミナーも開かれており、そこがいちばんの魅力だという説明でした。
FCを「看板を借りる仕組み」ではなく「経営を学び続ける仕組み」として使っている、ということです。
向いている人の条件は、ひとつだけ
最後に、どんな人がFCに向いているかを聞かれ、返ってきたのは短い答えでした。
「自責思考です」
失敗を本部のせいにする人は、本部ともうまくやれず、経営もうまくいかないだろう——そう語られています。あわせて、こんな言葉もありました。
「脱サラ感覚では無理。FCというつもりでやるのは、ちょっと覚悟が足りない。起業するつもりでやることですよね」
そして迷っている同業の治療家へのメッセージが、こう締めくくられます。「一人で迷っていても変化は起きない。少しでも取り入れたいと思うなら、見学でも問い合わせでもした方がいい」。
売上と利益、損益分岐点の会員数、会員が減った原因とその直し方まで開示された、情報量の多い一本でした。地方だから無理、初心者だから無理、という前提を一度置いてみる材料になると思います。
あなたの経験・資金・地域に合うFCがどれなのかを整理したい方は、まずは開業診断から始めてみてください。3分ほどの質問で、方向性の当たりをつけられます。
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