「加盟すれば本部が助けてくれる」——フランチャイズ(FC)を検討する人の多くが、そう期待して契約書にサインします。
YouTubeチャンネル「オグモーのフランチャイズを学ぼう」では、視聴者からの相談をきっかけに、ペット関連のフランチャイズ店舗で店長を務めていたAさんへの取材動画が公開されています。動画の中で銘柄(ブランド名)は明かされていません。あくまで「ある一店舗で起きたこと」として、開業を考える人が何を確認すべきかを考える材料にしてください。
「大きなお店なら技術も上がる」と思って入った
Aさんは以前からトリミング(犬の毛のカットやシャンプー)やペットの世話を経験していた人です。ペットサロンはホームセンターの一角や個人店が多い中、「大きなお店で働けば自分のスキルも上がるのではないか」と考えて、そのFC店舗を選んだと動画では語られています。
入る前に違和感はほとんどなかったそうです。「何かあってもマニュアルがあるから、そこを見れば全部出てくる」と説明を受けていたといいます。
本部の説明と、現場の数字のズレ
動画の中でAさんが挙げたのが、売上に関する説明と実際の差です。
| 項目 | 本部からの説明 | Aさんが語る実際 |
|---|---|---|
| 売上 | 3ヶ月で250万円、3ヶ月で元が取れる | 100万円には届かなかった |
| 研修 | お金を払えばスタッフ研修をする | 紙に箇条書きされた内容を話す程度 |
| 集客 | 本部がサポート | 予約媒体への掲載が中心 |
| 求人 | — | 最初の1ヶ月だけ無料媒体に掲載 |
「3ヶ月で250万円稼いだ店のデータを見せてくれたら、こちらも分かったんですけどね」——実際に達成している店舗の数字や、その稼ぎ方の共有はなかったと動画では語られています。
研修は受けた。でも現場では使えなかった
オーナーは「スタッフ研修をしてもらえる」と聞いていたそうです。ところが働き始めたスタッフが「ここが分からない」と質問すると、オーナー自身が「あれ、研修しなかったの?」と不思議そうな顔をしていた、という食い違いが起きていました。
Aさんによれば、実店舗での研修で教わったのは電話対応と顧客データの管理方法。肝心の技術面は「何もせずほったらかしにされていたのが一番しんどかった」と振り返られています。
集客も採用も、結局は加盟店まかせ
集客については、予約サイト(人間でいうホットペッパービューティーのようなもの)に掲載料を払い、そこからお客さんが予約してくる形が中心だったといいます。チラシはデザインデータは送られてくるものの、印刷や配布は加盟店の自腹。「固定費を考えるとひどいことになる」というのが現場の実感でした。
求人も同じで、最初の1ヶ月だけ本部が無料媒体に出し、その後は「自分でやってください」。トリミングは立ちっぱなしで体力的にきつく、給料が上がりにくいため人が定着しにくい仕事だとAさんは説明します。だからこそ「明らかに給料が高い」と目に見えないと応募が来ない。それを加盟店が一人で背負う構図でした。
1年半で、本部からの電話は1回だけ
印象的なのが本部とのやりとりです。Aさんが勤めた1年半のあいだ、本部からかかってきた電話は1回。内容は「今、何人が店で働いていますか」という人数の集計だったといいます。
逆にAさんから相談した回数は何度もありました。預かっている犬の体調が悪くなったときに電話をしても、すぐにはつながらず、時間差でかかってくる。待っていられないので自分たちで判断して動くしかなかった、と動画では語られています。
売上が伸びないことを相談したときには「売上が立たないのはあなたのせい」という趣旨の反応が返ってきたとも。店舗数を増やすことと既存店を支えることの比率を聞かれたAさんは、「店舗を増やすほうが10」と答えています。
店長だから見えてしまったこと
Aさんが最も強く語っていたのは、売上以前の話でした。
- 1人で1日3〜5頭をカットするよう求められた(業界でいう「スピードトリミング」)
- 急ぐほど犬にケガをさせるリスクが上がり、飼い主の要望にも十分応えきれない
- 本部にカットができる人が見当たらず、指導に来る人も技術を持っていないように感じた
- 預かっている犬が暴れないよう、部屋の中でリードにつながれていた場面に遭遇した
最後の点について、Aさんは「自分が知っている範囲では初めて見た」と話しています。「売上が立たないとかそれ以前に、自分の家の犬はとても預けられない」という言葉が、この取材の重さを表しています。
半年間は休みなく朝から晩まで店にいて、給料は20万円に届かなかった。退職を決めた理由は「人間らしい生活がしたかったから」でした。
「FCがすべて悪い」という話ではない
動画の最後で、運営者のオグモーさんは明確に補足しています。ペット業界のすべてが問題なのではなく、献身的に働く人もいるし、FC加盟店にも良い店舗・良いオーナーはたくさんいる、と。
オグモーさん自身は住宅系FC本部で加盟開発や研修講師、SV(スーパーバイザー)を経験しており、そこでは「2:6:2くらい」——上位2割が好調、6割が普通、下位2割が苦戦、という肌感覚だったと語られています。本部側の事情が分からなくもない一方で、今回のケースは「かなりひどい」という受け止めでした。
加盟する前に、自分の足で確かめる
Aさんが最も伝えたいこととして挙げたのは、とてもシンプルでした。
加盟したいと思っているなら、本当にそこがいい会社なのか、自分の目で見たり調べたりしてから決めてほしい。
説明会の資料や本部の話だけで判断しない。実際の店舗に客として行ってみる。可能なら既存加盟店のオーナーや現場スタッフに話を聞く。「達成している店の数字を見せてほしい」と頼んでみて、その反応を見る。動画で語られた失敗は、どれも契約前の一手間で気づける可能性があったことばかりです。
どの業種が自分の経験や生活スタイルに合うのか、まずは方向性から整理したい方は、開業診断で条件を入力するところから始めてみてください。
この記事のもとになった動画
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