秋田銀行と能代市が共同で起業支援体制を強化。地域おこし協力隊の仕組みを活用した地方での創業支援の取り組み。地方での独立開業を検討する人にとって有用な支援制度の事例。
出典: 日本経済新聞

開業ジャパン編集長より
編集長の視点
地味に見えて、実は「今いちばんお得な開業ルート」の一つが隠れているニュースです。キーワードは地域おこし協力隊。都市部から地方に移住して地域の仕事に従事する総務省の制度で、隊員には自治体から給与に相当する報償費が支払われ、任期は最長3年。そして意外に知られていないのですが、任期終了後にその地域で起業する隊員には、起業支援の補助金が用意されています。つまりこの制度は「給料をもらいながら最長3年間、その土地の人脈と商圏を学び、卒業時に開業資金の補助まで受けられる」仕組みとして使えるのです。移住と開業を同時に考えている人にとって、これほど条件の揃った助走路はなかなかありません。
地銀が支援側に立つ意味は大きい
今回の秋田銀行と能代市の連携で注目したいのは、そこに地方銀行が正面から関わってきた点です。創業希望者にとって、地銀が支援側に立つ意味は想像以上に大きい。開業後の事業がうまく回るかどうかは、最初の融資条件と、困った時に相談できる金融機関との関係で大きく変わります。自治体の補助金は「もらって終わり」の関係になりがちですが、銀行は融資先が育たないと自分が困る立場なので、伴走が本気になりやすいのです。人口減少に悩む地方の銀行は、新しい融資先を自ら育てる必要に迫られています。「地方の創業者は、地銀にとって減っていく貴重なお客様候補」という力学を理解しておくと、地方開業の資金調達は都市部より交渉しやすい場面すらあります。
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冷静に見ておくべき3つの注意点
一方で、冷静に見ておくべき注意点も挙げておきます。第一に、地域おこし協力隊経由の起業は「その地域で暮らし続ける」ことが前提です。3年住んでみたら土地が合わなかった、という事態は現実に起こります。補助金の返還条件や定住要件は募集要項ごとに違うので、応募前に必ず確認してください。第二に、地方は支援が手厚い代わりに、市場そのものが小さい。補助金で初期費用を抑えられても、月々の売上を作るのは商圏の人口と自分の商売の力です。「支援の厚さ」で開業地を選ぶのは本末転倒で、順番はあくまで「そこで成立する商売があるか」が先、支援は後押しです。第三に、行政連携型の支援は書類と手続きが多く、スピード感は民間と比べられません。時間の余裕を持って動くことが前提になります。
地方開業の現実的な段取り
地方開業を検討する際の現実的な段取りも触れておきます。おすすめの順番は、①候補地の商圏と競合を数字で確認する、②その自治体の創業支援メニュー(補助金、制度融資、創業塾、空き店舗活用)を洗い出す、③商工会議所や自治体の創業相談窓口に一度顔を出す、④金融機関に事業計画を持ち込む、という流れです。特に③は費用ゼロのわりに効果が大きく、地方では「誰の紹介で来たか」が物件情報や融資の通りやすさに影響する場面が今も残っています。窓口で顔がつながれば、公開前の空き店舗情報や、地元金融機関の担当者を紹介してもらえることも珍しくありません。制度の情報だけでなく、人のネットワークごと使わせてもらうのが地方開業のコツです。
固定費は地方価格、売上は全国から
また、「地方は市場が小さい」という弱点は、商売の設計で一部相殺できます。店舗の売上は商圏に縛られますが、ECや出張型サービス、オンライン教室のような商圏の外から売上を取る柱を最初から一本仕込んでおくと、地方の固定費の安さが一転して武器になります。家賃と人件費が都市部の半分なら、同じ売上でも手元に残る額は大きく変わる。地方開業の成功例には、この「固定費は地方価格、売上は全国から」という型が実に多いのです。
似た制度はあなたの街にもある
それでも、この型の支援が全国に広がっている流れは、開業を考える人にとって間違いなく追い風です。能代市に限らず、多くの自治体が同様の連携を始めており、あなたが移住候補にしている街にも似た制度がある可能性は高い。探し方のコツは、自治体名と「創業支援」「特定創業支援等事業」で検索することです。国の認定を受けた創業支援事業を使うと、会社設立時の登録免許税の軽減や融資の優遇など、目に見える実利が付いてきます。
編集長の結論: 制度を知る人から得をする
編集長としての所感です。開業相談を受けていて感じるのは、「制度を知っている人と知らない人で、スタートラインが数百万円分違う」という現実です。制度は申請した人にしか適用されず、役所は基本的に教えに来てくれません。派手な成功譚より、こういう地味な連携ニュースをこまめに拾うことが、結局いちばん財布に効きます。都市部での開業しか頭になかった方も、一度「支援の厚い地方で、固定費を抑えて始める」という選択肢を並べて比較してみる価値はあります。比較した結果、都市部を選ぶならそれでいい。選択肢を知った上での決断と、知らないままの決断は、同じ結論でも強さが違います。開業ジャパンでは今後もこの種の支援制度のニュースを毎日拾っていくので、ぜひ定点観測に使ってください。まずは下の関連ガイドから、開業前にブックマークしておくべき公的サイトを押さえておくのがおすすめです。
※開業ジャパン編集部の見解です。加盟・投資のご判断はご自身の調査・専門家への相談とあわせて行ってください。
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