「親の介護をきっかけに介護の世界に興味を持った」「地元に貢献しながら、長く続けられる仕事がしたい」——そんな理由でデイサービスのフランチャイズを調べ始める方が増えています。
ただ、資料請求をすると最初に出てくるのは「地域に必要とされる事業です」という言葉と、初期費用の総額だけ。肝心の「で、自分の手元に毎月いくら残るのか」は、ほとんど書かれていません。
この記事では、実際にフランチャイズ本部が公表している数字を使って、そこを最後まで逆算します。
結論:デイサービスのフランチャイズで手元に残るのは月4万〜80万円(返済後・税前)
先に結論から出します。リハビリ型デイサービスのフランチャイズ「リハプライド」が公表しているモデル数値をもとに、借入の返済まで引いた金額がこちらです。
| 項目 | 下振れケース | 上振れケース |
|---|---|---|
| 月商(売上) | 300万円 | 400万円 |
| ①返済前・税前に残る額(本部公表の月間利益) | 30万円 | 100万円 |
| ②返済後に残る額(借入1,500万円・7年・年2%想定) | 約10.8万円 | 約80.8万円 |
| 参考:借入2,000万円だった場合の②ance | 約4.5万円 | 約74.5万円 |
| ③自分(オーナー)の人件費の扱い | 本部未公表(含まれていない前提で読むこと) | 本部未公表(同左) |
※①はリハプライド本部の公表値(月間利益 月30〜100万円)。②の返済額は編集部逆算(元利均等・年利2%・7年で試算)。③のとおり、この金額からオーナー自身の生活費を取ることになります。金額は本部公表値であり、時期によって変動します。最新の条件は必ず公式サイトと加盟説明会で確認してください。
読み方のポイントは3つです。
- **「月間利益30〜100万円」という幅は、そのまま「稼働率の幅」**です。上と下で3倍以上ちがう。この幅のどこに着地するかが事業の成否そのものです。
- 下振れケースでは、返済を引くと月10万円台。ここからオーナーの生活費を出すのは現実的ではありません。つまり下振れ=赤字に近い、と考えるべきです。
- 3,000万円という初期費用の中身を見ないと、返済額が決まりません(次章)。
月商400万円の内訳を分解する(リハプライドの公表データ)
リハプライドは「リハビリ型」と呼ばれるタイプのデイサービスです。お風呂や食事の提供を中心にする一般的なデイサービスとちがい、機能訓練(体を動かすトレーニング)に絞って、1回1〜2時間程度の短時間で利用者さんに来てもらう形態を取ります。
公表されている加盟条件は次のとおりです。
| 項目 | 金額 | 補足 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 3,000万円 | うち運転資金1,500万円を含む |
| 加盟金 | 610万円 | 上記3,000万円に含まれるかは本部に要確認 |
| ロイヤリティ | 月額固定17万円(税抜) | 売上に連動しない定額方式 |
| モデル月商 | 300〜400万円 | — |
| モデル月間利益 | 月30〜100万円 | 返済前・税前・オーナー人件費の扱いは本部未公表 |
→ ブランド詳細: リハプライド
ここで最も重要なのは、**初期費用3,000万円のうち半分の1,500万円が「運転資金」**だという点です。
運転資金とは、開業してから売上が立つまでの間、家賃やスタッフの給料を払い続けるためのお金のこと。これが1,500万円も必要だと本部が明記しているということは、裏を返せば**「開業してすぐには黒字にならない業態です」と本部自身が言っている**のと同じです。
なぜか。介護保険の仕組み上、利用者さんを受け入れてから、その分の売上(介護報酬)が実際に振り込まれるまで、およそ2か月かかるからです。4月に提供したサービスの請求を5月に出し、入金は6月——という流れになります。飲食店のように「今日売れたら今日現金が入る」商売ではありません。
月商400万円は、1日に何人来れば届くのか(編集部逆算)
月商400万円を、月26日営業で割ると1日あたり約15.4万円。月商300万円なら1日あたり約11.5万円です。
仮に利用者1人1回あたりの介護報酬を4,000円前後とすると、1日あたり延べ29〜38人の利用が必要になる計算です(編集部逆算)。
リハビリ型デイサービスは午前の部・午後の部の2部制で回すのが一般的なので、定員20名なら1日で延べ40名が上限。つまり、
- 月商300万円 = 定員に対して7割強が毎日埋まっている状態
- 月商400万円 = 9割以上が毎日埋まっている状態
ということになります。「満員に近い日が続いて、ようやく上振れケース」というのが実態です。
※1回あたりの単価は、お住まいの地域区分・利用者さんの要介護度・算定できる加算によって大きく変わります。上の数字はあくまで構造を理解するための逆算なので、実際の単価は本部資料と自治体の窓口で必ず確認してください。

下振れ条件:数字はどこで折れるか
上のシミュレーションが崩れるとしたら、原因はだいたい次の4つに絞られます。
| 折れる場所 | 何が起きるか | 月商への影響(目安) |
|---|---|---|
| ケアマネジャーからの紹介が来ない | 新規利用者が入らず、定員が埋まらない | 最も大きい |
| 利用者さんの体調不良・入院 | 1人が抜けると週2〜3回分の売上が消える | 1人あたり月3〜5万円規模 |
| スタッフの退職 | 人員基準を満たせず、受け入れ人数を減らすしかない | 定員の縮小に直結 |
| 介護報酬の改定 | 単価そのものが下がる/加算が取れなくなる | 全体に効く |
このうち、開業初年度でいちばん効いてくるのが1番目です。
デイサービスは、一般消費者が看板を見て飛び込みで来る商売ではありません。利用者さんの担当ケアマネジャー(利用者さんの介護サービス計画を作る専門職)が「ここに通ってみませんか」と勧めてくれてはじめて、利用が始まります。
つまり実質的な営業先は、地域の居宅介護支援事業所にいるケアマネジャーさんです。ここに顔を覚えてもらえるかどうかが、そのまま稼働率になります。地方で「地元に知り合いが多い」という方は、この一点において都市部より有利です。逆に、まったく縁のない土地で開業する場合は、運転資金1,500万円が本当に必要になる期間が長引くと考えてください。
加盟を検討する段階で、本部には必ずこう聞いてください。
「直営店・既存加盟店では、開業から定員の8割が埋まるまで平均何か月かかっていますか。いちばん遅かった店舗は何か月ですか」
平均値だけでなく、最悪値を聞くのがコツです。
落とし穴①:法人がないと1日も営業できない
ここからは、デイサービスという業態にしかない話です。飲食やコンビニの感覚で進めると必ずつまずきます。
介護保険を使うサービスを提供するには、法人であることが必須です。 個人事業主のままでは指定を受けられません。株式会社でも合同会社でもNPO法人でも構いませんが、とにかく法人を作るところからのスタートになります。
そして、法人を作っただけでも開業できません。都道府県または市区町村に指定申請を出し、「通所介護事業所として認めます」という指定を受ける必要があります。
| ステップ | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 法人設立(定款の事業目的に介護事業を入れる) | 2週間〜1か月 |
| 2 | 物件の確保・改修(基準を満たす広さ・設備) | 数か月 |
| 3 | 人員の確保(後述の職種を揃える) | 数か月 |
| 4 | 指定申請の提出 → 指定 | 自治体により異なる |
| 5 | 開所 | — |
特に注意したいのが、定款(会社のルールを定めた書類)の事業目的です。ここに介護保険法にもとづく事業であることを書いておかないと、後から定款変更のやり直しになります。法人を作る時点で、本部か行政書士に文言を確認してもらってください。
また、指定申請は締切が月単位で決まっている自治体が多く、1日遅れると指定が1か月まるごと後ろにずれます。 家賃とスタッフの給料は発生しているのに売上ゼロの月が1か月増える、ということです。ここは絶対に自治体の窓口で直接スケジュールを確認してください(手続きの詳細は自治体ごとに異なります。必ずお住まいの地域の公式サイト・窓口で最新情報をご確認ください)。
落とし穴②:人が採れないと、定員は埋められない
デイサービスには人員基準という決まりがあります。「この職種の人を、最低何人置かなければいけない」というルールです。基準を満たせなくなった瞬間、受け入れ人数を減らすか、最悪は休止するしかありません。
主に必要になるのは次の職種です。
| 職種 | 役割 | 地方での採用難易度 |
|---|---|---|
| 管理者 | 事業所全体の責任者 | オーナー自身が担うことが多い |
| 生活相談員 | 利用者・家族・ケアマネとの窓口 | 中 |
| 看護職員 | 利用者さんの健康チェック | 高い(取り合いになりやすい) |
| 介護職員 | 現場のサービス提供 | 中〜高 |
| 機能訓練指導員 | 運動メニューの指導 | 高い(リハビリ型では要) |
リハビリ型デイサービスでは、機能訓練指導員(理学療法士・作業療法士・柔道整復師などの資格を持つ人)が事業の中心になります。ところがこの職種は、病院・整形外科・他の介護事業所と完全に取り合いです。
地方で開業する場合、この1人が採れるかどうかで開業時期そのものが決まります。 物件を借りてから探し始めると、家賃だけが出ていく期間が延びます。加盟を決める前に、自分の商圏のハローワーク求人や求人サイトで「その職種の募集が何件出ていて、提示給与はいくらか」を見ておいてください。募集が多いということは、それだけ採れていないということです。
もうひとつ、地味に効いてくるのが送迎です。デイサービスは原則として利用者さんの送り迎えをします。つまり車と、運転する人が要ります。朝と夕方に送迎の山が来るため、その時間帯だけ人手が足りなくなるという構造的な問題を全事業所が抱えています。「送迎を誰がやるか」「送迎範囲を何kmにするか」は、加盟前に本部と具体的に詰めるべき項目です。
落とし穴③:売上の単価を、自分で決められない
これがデイサービス最大の特徴です。
普通の商売なら、儲からなければ値上げができます。ラーメンを950円から1,050円にする、という判断は店主の自由です。
しかしデイサービスの売上のほとんどは介護報酬、つまり公定価格です。 自分で単価を決めることはできません。そして介護報酬は3年に1度改定されます(直近は2024年度の改定。次回は2027年度が予定されています)。
改定で単価や加算の条件が変われば、自分は何ひとつ変えていないのに、翌月から売上が変わります。 これは良い方向にも悪い方向にも動きます。
対策は2つしかありません。
- 加算を確実に取りにいく。 加算とは、一定の体制や取り組みをしている事業所が上乗せで受け取れる報酬のことです。どの加算を取る設計になっているかは、本部ごとに差が出るポイントです。
- 改定の中身を本部が噛み砕いて指導してくれるかを、加盟前に確認する。制度の読み解きこそフランチャイズ本部に払う対価の本体です。
加盟説明会では、ぜひこう聞いてみてください。
「前回の介護報酬改定のとき、加盟店に対して具体的にどんな支援をしましたか。売上への影響は平均何%でしたか」
ここに即答できる本部は、制度対応の体力があります。曖昧な答えしか返ってこない本部は、次の改定でも助けてくれない可能性が高い。制度の最新内容は厚生労働省の公式サイトでも必ず確認してください。
定額ロイヤリティは、売上が小さいほど重い
リハプライドのロイヤリティは月額固定17万円です。売上に連動しません。この「定額方式」は、他業種のフランチャイズと並べると性格がよく分かります。
| 項目 | リハプライド(リハビリ型デイサービス) | Dr.Reset(リラクゼーション) | ブランドインパクト(ブランド品販売・EC) |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 3,000万円(運転資金1,500万円含む) | 約300万円 | 30万円 |
| 加盟金 | 610万円 | 120万円(+保証金50万円) | 30万円 |
| ロイヤリティ | 月17万円(定額) | 月20万円(定額) | 月5万円(定額) |
| モデル月商 | 300〜400万円 | 140万円 | 100万円 / 200万円 |
| 実質ロイヤリティ率(編集部逆算) | 4.3〜5.7% | 約14.3% | 約5.0% / 約2.5% |
| ①返済前・税前に残る額 | 月30〜100万円 | 月30.5万円(営業利益モデル) | 月29.5万円(月商100万円時)/ 月124.5万円(月商200万円時) |
| ②返済後に残る額 | 約10.8〜80.8万円(借入1,500万円想定・編集部逆算) | 約25.2万円(借入300万円・5年・年2%想定・編集部逆算) | 借入前提なし(自己資金30万円) |
| ③自分の人件費の扱い | 本部未公表 | 本部未公表 | 含まず(オーナー1人運営前提) |
※各社の本部公表値。ブランドインパクトのモデルは仕入原価約25%・ロイヤリティ・EC出店費を控除した本部モデルで、オーナー運営により人件費0を前提としています。時期により条件は変動するため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
この表から読み取れることは、はっきりしています。
定額ロイヤリティは、売上が大きいほど有利で、小さいほど不利。 Dr.Resetの実質14.3%という数字がそれを示しています。月商が低い業態で定額を払うと、率に直したときの負担が跳ね上がるのです。
逆にリハプライドの月17万円は、月商400万円まで伸びれば実質4.3%。介護業界では相対的に軽い水準です。ただしそれは「売上が伸びれば」の話で、下振れケースの月商300万円だと5.7%になります。稼働率が伸びない状態でも17万円は毎月必ず引かれる——ここが定額方式の怖さです。
自分の事業計画を作るときは、**「月商が本部モデルの7割しか出なかったら、ロイヤリティは実質何%になるか」**を必ず計算してください。
最後に:市場の背景と、明日からやること
デイサービスが属する「社会保険・社会福祉・介護事業」の事業所数は、全国で229,768事業所です(全97産業中7位、全事業所5,287,701の4.3%)。出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和3年経済センサス-活動調査」を加工して作成。
産業として見れば、すでに巨大で成熟しています。「これから伸びる新市場」ではなく、すでに競合が周りにいる市場に、あとから入っていくという認識が正しい。ならばこそ、商圏に既にあるデイサービスの数と種類を数えることが、どんな市場レポートより意味を持ちます。
なお、この検索が今増えている理由ははっきりしています。団塊の世代が全員75歳以上に入り、要介護認定を受ける人が実数として増えている一方で、担い手側の事業所は人手不足で新規受け入れを絞っている——需要と供給のズレが、異業種からの参入検討を押し上げているためです。
資料請求の前に、この4つだけ確認してください
- 初期費用3,000万円の内訳明細を1円単位でもらう(何にいくらか。加盟金610万円が含まれるのかも)
- 既存加盟店が定員8割に届くまでの期間、その平均値と最悪値
- 前回の介護報酬改定での、加盟店への具体的な支援内容
- 自分の商圏の機能訓練指導員の求人件数と給与相場(自分で調べる)
この4つに具体的な数字で答えられない本部とは、3,000万円の契約を結ぶべきではありません。デイサービスは、始めてしまえば利用者さんの生活を預かる事業です。途中でやめる判断が、他の業態よりずっと重くなります。だからこそ、入り口の検証は他のどの業種より慎重にやる価値があります。
まずは他の業種も含めて条件を並べて見比べたい方は、フランチャイズ一覧から初期費用・ロイヤリティを横並びでチェックしてみてください。「自分の自己資金でこの返済表が成り立つのか一緒に見てほしい」という段階なら、無料のLINE相談でも気軽にご質問いただけます(相談は無料・しつこい勧誘はありません)。
急ぎでなければ、まずはご自身の商圏にあるデイサービスの数をGoogleマップで数えてみるところからで十分です。
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