「道具と軽自動車があれば始められる」「加盟金0円のところもある」。ハウスクリーニングのフランチャイズ(以下FC)は、地方在住で初めて独立する人が最初に候補に挙げる業種のひとつです。共働き世帯の家事外注や、夏のエアコン洗浄需要が毎年ニュースになる分、検索する人も増えています。
ただ、相談を受けていて一番危ないのは「加盟金が安いから低リスク」という読み方です。この記事では、本部が実際に公表している数字を起点に、手元にいくら残るのかを先に出します。市場規模や用語の話は後半に回します。
ハウスクリーニングのフランチャイズは儲かる?まず手取りのレンジを見る
結論から言います。同じ建物清掃系(ビルメンテナンス=建物の清掃・設備管理を請け負う仕事)のFCとして数字を公表している FTビルパー のモデルは、次のとおりです。
- 初期費用:500万円
- 加盟金:0円
- モデル売上:月商60万円〜80万円
- 月間利益:月3.4万円〜
出典:本部公表値(→ /brands/ft-builpar/)。金額は時期により変動するため、最新情報は公式サイトで確認してください。
注目してほしいのは、月間利益が「3.4万円から」という下限値で示されている点です。上限は本部が公表していません。つまりこの数字だけでは「儲かる」とも「儲からない」とも言えず、あなたが月商をどこまで積めるかで結果が変わります。
その前提で、手元に残る額を整理したのが次の表です。
| 項目 | 下振れケース(編集部逆算) | 本部モデル下限 | 本部モデル上限 |
|---|---|---|---|
| 月商 | 40万円 | 60万円 | 80万円 |
| 返済前・税前に残る額 | ほぼ0〜マイナス(編集部逆算) | 3.4万円(本部公表) | 本部未公表 |
| 返済後に残る額 | マイナス(編集部逆算) | ▲0.2万円(編集部逆算) | 本部未公表 |
| 自分の人件費の扱い | 含まず | 含まず(本部未公表・要確認) | 含まず |
※「返済後」は、初期費用500万円のうち6割(300万円)を7年=84回で借り、元金だけを均等返済した場合の編集部逆算です。300万円÷84回=月約3.6万円。利息は別途かかります。全額を自己資金でそろえた場合、返済は0円なので3.4万円がそのまま残ります。 ※「税前」です。個人事業として開業する場合、この後に所得税・住民税・国民健康保険料が引かれます。 ※オーナー自身の給料(=自分の人件費)が本部の利益計算に含まれているかは公表されていません。多くのFCモデルは「オーナーが自分で現場に出る前提」で人件費を計上しないため、必ず本部に確認すべき項目です。
読み取り方はシンプルです。本部モデルの下限値のままだと、借入を使った場合は手元がほぼ残らない。 だから、この業種で成り立たせるには「本部モデルの上のほうに行けるかどうか」がすべてになります。
手取りの内訳を分解する — なぜ売上が減ると利益が同じだけ減るのか
ハウスクリーニングの収支は、飲食店とは形が違います。飲食は売上の3〜4割が食材費という「変動費(売上に比例して増える費用)」ですが、ハウスクリーニングの主な原価は自分の労働時間です。
費用をざっくり2つに分けると、こうなります。
| 費用の種類 | 中身の例 | 売上が減ったときの動き |
|---|---|---|
| 変動費(売上に連動) | 洗剤・資材、駐車場代、ガソリン代 | 少し減る |
| 固定費(売上と無関係) | ロイヤリティ、車両のリース・維持費、保険、広告費、通信費、機材の減価償却 | 減らない |
ハウスクリーニングは変動費の割合が小さく、固定費の割合が大きい商売です。ということは、売上が20万円落ちたら、利益もほぼ20万円落ちる。これが「月商60万円で利益3.4万円」というモデルの怖さです。余白が3.4万円しかないので、月商が1割(6万円)下がるだけで赤字に落ちます。
逆に言えば、月商が伸びたぶんはほぼそのまま利益になる構造でもあります。固定費が増えないからです。だから相談のときに聞くべき質問は「いくら儲かりますか」ではなく、次の2つです。
- その3.4万円は、月商いくらのときの数字ですか
- モデル上限の月商80万円のとき、利益はいくらになりますか
この2つに数字で答えてもらえない本部は、判断材料を出していないのと同じです。
下振れするのはどこか — 起きやすい3つの条件
「儲かる話」より先に、崩れ方を知っておくほうが役に立ちます。ハウスクリーニングで月商が読みどおりに立たないのは、だいたい次の3つです。
1. 移動時間で1日の件数が伸びない(地方でとくに起きる) 売上は「単価 × 件数」でしか増えません。件数は「1日の作業枠 × 稼働日数」で天井が決まります。地方は1件あたりの移動距離が長く、都市部と同じ件数をこなせないことがあります。移動1時間は、売上0円の1時間です。エリアを決める段階で、半径何kmまで受けるかを先に決めておく必要があります。
2. 単価が値引きで削られる 一般家庭向けの仕事は、相見積もり(複数業者から見積もりを取って比べること)になりやすいです。1件2万円の仕事を1.5万円に下げると、売上は25%減。前の章のとおり、その減り分はほぼ全額が利益から消えます。値引きで件数を取る戦い方は、この費用構造とかみ合いません。
3. 自分が倒れたら売上がゼロになる 一人開業は、体調を崩した日の売上が丸ごと消えます。腰・肩・膝を使う仕事なので、これは精神論では防げません。所得補償の保険や、繁忙期だけ手伝ってもらえる人のあてを、開業前に用意しておくかどうかで差が出ます。

ハウスクリーニング特有の落とし穴 — 売上が6〜8月に偏る
この業種にだけある、いちばん大きな構造上の特徴がこれです。年間の売上が1年を通して平らにならない。
一般家庭向けのハウスクリーニングは、需要の山がはっきりしています。
| 時期 | 主に売れるもの | 売上の傾向 |
|---|---|---|
| 3〜4月 | 引っ越し前後の空室清掃、水回り | 山 |
| 6〜8月 | エアコン分解洗浄 | 最大の山 |
| 9〜11月 | レンジフード、浴室 | 中 |
| 12月 | 年末大掃除 | 山 |
| 1〜2月 | — | 谷 |
ここで多くの人が計算を間違えます。「繁忙期の月商」を12倍して年商を出してしまうのです。エアコン洗浄が集中する7月の月商が80万円だったとしても、1〜2月が30万円なら、年間の平均は80万円にはなりません。
正しい考え方は、年間の売上を12で割ってから、固定費と返済を引くことです。固定費とローン返済は、仕事が無い2月にも同じ額を請求されます。繁忙期の利益を谷の月に食われる、という前提で資金を持っておかないと、初年度の冬に詰みます。
やるべき対策は2つしかありません。
- 繁忙期に受けきる体制をつくる(この時期の取りこぼしが年間利益を直接削る)
- 谷の月を埋める別の仕事を持つ(次の章)
賃貸管理会社の原状回復案件 — 冬を埋める相手であり、最大の競合でもある
谷を埋める答えとしてよく挙がるのが、BtoB(会社を相手にした仕事)です。ハウスクリーニングの場合、相手の筆頭が賃貸管理会社・不動産会社の原状回復(入居者が退去したあと、部屋を次の人に貸せる状態に戻す作業)です。
BtoB案件の性質は、一般家庭向けとまったく違います。
| 一般家庭(BtoC) | 賃貸管理会社(BtoB) | |
|---|---|---|
| 1件の単価 | 高め | 低め(単価は抑えられる) |
| 件数の安定 | 季節で大きく動く | 継続して発生しやすい |
| 集客コスト | 広告費が毎月かかる | 1社取れれば広告費が減る |
| 入金 | 作業時にその場 | 翌月末など後払いが多い |
| リスク | 集客が止まると売上ゼロ | 1社への依存。切られると一気に失う |
入金が後払いになる点は、初心者が見落としがちな落とし穴です。仕事が増えているのに、洗剤代・ガソリン代・返済が先に出ていって手元の現金が減る。これを運転資金不足といいます。BtoB比率を上げるなら、入金までの2〜3か月をしのぐ現金を別に持っておく必要があります。
そしてもう一点、今の市況として知っておくべきことがあります。賃貸管理会社の側が、原状回復やハウスクリーニングを自社で内製化する動きがあるということです。外注していた清掃を自社の社員でやる会社が増えれば、そのぶん外部の職人に回る仕事は減ります。管理会社は「冬を埋めてくれる取引先」であると同時に、「仕事を引き上げる可能性のある相手」でもある。だから、1社に全部を預けない構え方が要ります。
FC本部を選ぶときの実質的な評価軸は、ここに直結します。
- 本部がBtoBの元請け案件を配分してくれるのか、それとも自分で営業するのか
- 配分がある場合、その単価と、月にどれくらいの件数か
- エリア内に他の加盟店が何店あるか(同じ本部の加盟店同士で同じ管理会社を取り合うことがある)
「集客支援あり」の一言で終わらせず、件数と単価を数字で出してもらってください。
加盟金0円をどう読むか — 初期費用500万円の中身を必ず聞く
ここが今回いちばん伝えたい部分です。
FTビルパーは加盟金0円です。加盟金とは、そのブランドの看板とノウハウを使う権利に対して、契約時に一度だけ払うお金のこと。これが0円なのは、加盟のハードルとしては明確な利点です。
一方で、初期費用は500万円です。つまり0円になっているのは「本部に払う権利料」であって、開業に必要なお金そのものではありません。500万円の中身の内訳は公表されていないため、確認が必要です。聞くべきはこの5点です。
- 500万円のうち、車両・機材・洗剤などの現物はいくらか(手元に資産として残るもの)
- 研修費・保証金はいくらか。保証金は解約時に返ってくるのか(保証金=契約の担保として預けるお金)
- 運転資金(開業後しばらく食べるための現金)が500万円に含まれているのか、別途必要なのか
- ロイヤリティ(毎月本部に払う費用)は、定額か売上に対する割合か。金額はいくらか ※本部は公表していません
- 広告費・システム利用料など、ロイヤリティとは別に毎月かかるものがあるか
とくに3番は要注意です。500万円が全部機材と車に消えていたら、開業直後の生活費が残りません。初期費用と運転資金は別の財布で考えるのが原則です。
なお、資金の一部は日本政策金融公庫の融資や、小規模事業者向けの補助金を検討する人もいます。制度の条件や金額は年度で変わるため、最新情報は必ず公式サイトで確認してください。
他業種FCと並べると見えてくる「ロイヤリティの型」
ハウスクリーニング単体の数字だけでは判断しづらいので、別業種のFCの公表値も並べます。業種が違うので売上や利益の水準を比べる意味はありませんが、ロイヤリティの型と初期費用に対する利益の出方は参考になります。
| 項目 | FTビルパー(建物清掃系) | Dr.Reset(リラクゼーション) | ブランドインパクト(ブランド品物販・EC) |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 500万円 | 約300万円 | 30万円〜 |
| 加盟金 | 0円 | 120万円(+保証金60万円) | 30万円 |
| ロイヤリティ | 本部未公表 | 月10万円(定額) | 月額固定5万円 |
| モデル月商 | 60万〜80万円 | 140万円 | 100万円 |
| 返済前・税前に残る額 | 3.4万円〜 | 20.5万円(営業利益) | 9.5万円(純利益) |
| 返済後に残る額(編集部逆算) | ▲0.2万円 | 18.4万円 | 9.3万円 |
| 自分の人件費の扱い | 本部未公表 | 本部未公表 | 含まず(オーナー運営・人件費0の前提) |
※「返済後」は全ブランド共通で、初期費用の6割を7年84回で借り元金のみ均等返済した場合の編集部逆算(利息は別)。各社→ /brands/dr-reset/ / /brands/brandimpact/。金額は本部公表値で、時期により変動します。最新情報は公式サイトで確認してください。
この表から読めることは2つです。
1つ目。ロイヤリティが「定額」だと、売上が少ない月ほど重くのしかかる。 Dr.Resetは月10万円、ブランドインパクトは月5万円の定額です。定額型は売上が伸びたときに負担率が下がって有利になりますが、売上が落ちた月も満額です。ハウスクリーニングのように売上が季節で半分近くまで落ちる業態では、定額か歩合かで谷の月の耐久力が変わります。だからFTビルパーのロイヤリティ形式が未公表であることは、契約前に埋めるべき最重要の空欄です。
2つ目。初期費用の大きさと利益は比例しない。 初期費用30万円のブランドインパクトが月9.5万円、500万円のFTビルパーが月3.4万円から。投資額が大きいほど儲かる、という関係にはなっていません。初期費用は「回収しなければならない借金」であって、利益を保証するものではないからです。
参考として業種の広さも押さえておくと、ハウスクリーニングやビルメンテナンスが含まれる「その他の事業サービス業」の全国の事業所数は90,625事業所(全事業所5,287,701の1.7%、97産業中18位)。出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「経済センサス-活動調査」を加工して作成(最新の年次・数値はe-Statで確認)。参入している事業者が相当数いる=競合は既にいる、という前提で価格と得意分野を決めることになります。
加盟前に本部へ聞く質問と、次の一歩
最後に、この記事の内容を「聞くべきこと」に変換しておきます。この7つに数字で答えが返ってくるかどうかが、本部を見極める実質的なテストです。
- モデル利益の下限値(例:月3.4万円)は、月商いくらのときの数字ですか。上限はいくらですか
- その利益に、オーナー自身の給料は含まれていますか
- ロイヤリティは定額ですか歩合ですか。金額と、それ以外に毎月かかる費用は
- 初期費用の内訳と、運転資金は別途いくら必要ですか
- 加盟店の年間売上の月別推移(繁忙期と閑散期の実額)を見せてもらえますか
- BtoB案件の配分はありますか。単価と月の件数は
- 自分のエリアに他の加盟店は何店ありますか。テリトリー(営業エリアの保護)はありますか
ハウスクリーニングのFCは、「加盟金が安い=低リスク」という業種ではありません。初期費用500万円、本部モデルの利益は月3.4万円から、売上は夏に偏る。この3つを同時に見て、それでも繁忙期に受けきる体力と冬を埋める仕事を用意できる人にとっては、固定費が軽く売上増がそのまま利益になる、筋の通った選択肢になり得ます。判断を誤るのは、モデル売上の上限だけを覚えて帰る人です。
数字を自分の条件に当てはめてみて、どうしても埋まらない空欄が残ったときは、無料のLINE相談でそのまま聞いてもらって構いません。「この本部にこの質問をしたら、こう返ってきた」という段階のご相談がいちばん役に立ちます。
自分がどのタイプの開業に向いているかから整理したい方は、開業診断から始めてみてください。
LINE友だち限定特典
非公開のビジネスプランと
未公開物件情報をお届け
サイトには載せられない非公開FC案件・優良物件・最新補助金情報を、LINE友だち限定で先行配信。登録は10秒、いつでも解除できます。
