開業の基礎

飲食店オーナーの年収はいくら?売上から手元に残るまでの内訳を実データで解説

2026/8/14 更新

飲食店オーナーの年収はいくら?売上から手元に残るまでの内訳を実データで解説

「飲食店オーナーの年収って、実際いくらなんだろう」

開業を考え始めた方から、いちばん多く届く質問です。ネットを見れば「月商300万円」「年商4,000万円」といった景気のいい数字が並びます。ただ、その数字はあくまで売上であって、オーナーの財布に入るお金ではありません。

この記事では、実際にフランチャイズ本部が公表しているモデル店の数字を使って、「売上 → 経費 → 利益 → 税金・返済 → 手元に残る額」という流れを、1段ずつ分解していきます。夢を煽る話も、脅かす話もしません。数字の構造そのものをお見せします。


「飲食店オーナーの年収」は売上ではなく“手元に残った額”

まず、混同されやすい4つの言葉を整理します。ここを分けて考えられるかどうかで、開業の判断精度がまったく変わります。

言葉意味ざっくり言うと
売上(月商・年商)お客様が払ってくれた総額レジを通ったお金の合計
経費材料費・人件費・家賃など、店を動かすための支出出ていくお金
利益売上 − 経費帳簿の上で残ったお金
手取り利益 − 税金・社会保険料 − 借入の元金返済本当に自由に使えるお金

「飲食店オーナーの年収」として語られるべきなのは、いちばん下の手取りです。ところが世の中に出回っている数字の多くは、いちばん上の売上か、よくても3段目の利益で止まっています。

この差は小さくありません。後半で具体的に計算しますが、利益と手取りの間には数百万円単位の開きが出ることもあります。


飲食店は全国49万9,193事業所|いちばん店が多い業種

年収の話に入る前に、市場の全体像を押さえておきます。

飲食店の全国事業所数は 499,193事業所。 これは全97産業のなかで最も多く、日本の全事業所5,287,701のうち 9.4% を占めます。

出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和3年経済センサス-活動調査」を加工して作成

この「1位」という数字は、2つのことを同時に意味します。

良い面:それだけ需要があり、誰もが利用する日常インフラだということ。地方でも都市でも成り立つ商売である証拠です。金融機関にとっても実績データが豊富な業種なので、事業計画さえきちんと作れば融資の相談はしやすい部類に入ります。

厳しい面:約50万の同業者がいるということ。あなたのお店の隣にも、駅前にも、ロードサイドにも競合がいます。「おいしいものを出せばお客様が来る」という前提が最も通用しにくい業種でもあります。

つまり飲食店の年収は、「飲食店だからいくら」ではなく、「どう設計した飲食店か」で決まるということです。ここからは、その設計の中身を数字で見ていきます。


モデル店の実数字|月商330万円の焼鳥店で利益66万円

実際に本部が公表しているモデル数値を見てみましょう。焼鳥店ブランド「鳥みや」のデータです。

項目公表値
初期費用380万円
加盟金200万円
ロイヤリティ売上の3%相当分
モデル売上月商330万円(前橋本店 28坪28席・安定推移期)
月間利益月66万円

※金額は本部公表値です。時期や条件により変動する場合があるため、最新情報は必ず公式サイトおよび本部への直接確認をお願いします。

売上330万円は、どこへ消えるのか

月商330万円に対して、月間利益は66万円。差額の約264万円が、店を動かすための経費です。ここを可視化します。

段階金額内容
モデル月商330万円お客様が支払った総額
うちロイヤリティ約9.9万円売上の3%相当分
経費合計(ロイヤリティ含む)約264万円月商330万円 − 利益66万円で逆算
月間利益66万円本部公表値
利益率約20%66万円 ÷ 330万円

264万円という数字にギョッとするかもしれませんが、飲食店ではこれが普通です。この264万円のなかには、次のようなものが入っています。

  • 原価(食材費):肉・野菜・ドリンクなどの仕入れ
  • 人件費:アルバイト・社員の給料
  • 家賃:物件の賃料と共益費
  • 水道光熱費:飲食店は特に電気・ガスの使用量が大きい業種です
  • ロイヤリティ:本部に払う対価(約9.9万円)
  • その他:消耗品、販促費、通信費、保険料など

なお、それぞれの金額の内訳は本部の公表値ではないため、この記事では具体的な配分を推測して書くことはしません。ただし業界には昔から使われる目安があります。

**FL比率(エフエルひりつ)**とは Food(食材費)と Labor(人件費)を足した金額が、売上の何%かを示す数字です。飲食業では「合計60%以内に収めたい」という目安がよく使われます。60%を大きく超えると、家賃や光熱費を払った後にほとんど残らない、という状態になりやすいためです。

売上330万円のうち、FL比率60%なら食材費と人件費だけで198万円。ここに家賃や光熱費が乗って、残りが利益66万円。実感として「そういうものだ」と掴んでいただければ十分です。

年間に直すと、66万円 × 12ヶ月 = 792万円。 これが「飲食店オーナーの年収は800万円くらい」と語られるときの数字の正体です。ただし、この792万円はまだ税金も借入返済も引かれていない金額です。ここが最大のポイントで、後ほど詳しく扱います。

お金の内訳を確認するのイメージ


焼肉店モデルと比べる|同じ飲食でも残り方が違う

同じ飲食業でも、業態が変われば構造が変わります。焼肉ブランド「焼肉 タン革命」の公表値と並べてみます。

項目鳥みや(焼鳥)焼肉 タン革命(焼肉)
初期費用380万円500万円
加盟金200万円100万円
ロイヤリティ売上の3%相当分売上の5%
モデル売上月商330万円月商300万〜400万円
月間利益月66万円月70万円
年換算の利益約792万円約840万円

※いずれも本部公表値。時期により変動する旨は各公式ページをご確認ください。

この表から読み取れることを、3つに整理します。

1. 初期費用と加盟金は「セットで」見る 鳥みやは初期費用380万円・加盟金200万円、タン革命は初期費用500万円・加盟金100万円。加盟金だけを比べると鳥みやが高く見えますが、初期費用ではタン革命が上回ります。どちらか一方だけを比べても意味がありません。 さらに、物件取得費や内装工事費が別途必要かどうかは本部ごとに扱いが違うため、「この380万円に何が含まれていて、何が含まれていないのか」を必ず書面で確認してください。

2. ロイヤリティ率の差は、毎月ずっと効き続ける 3%と5%。たった2ポイントの差ですが、月商330万円で計算すると、3%なら約9.9万円、5%なら約16.5万円。差は月6.6万円、年間で約79万円です。10年続ければ790万円。初期費用の差より、こちらのほうが長期的な影響は大きくなります。

3. 利益額が近くても、投資額が違えば回収スピードが違う 月70万円の利益で初期費用500万円なら、単純計算で回収まで約7.1ヶ月。月66万円で380万円なら約5.8ヶ月。ただしこれは初期費用のみを分母にした計算で、物件取得費・運転資金・生活費は含んでいません。実際の回収期間はもっと長く見るのが現実的です。


利益が出ても年収にならない3つの落とし穴

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。「年間利益792万円」は、そのままオーナーの年収にはなりません。ここから3つのものが引かれます。

落とし穴①:借入の元金返済は、経費にならない

開業資金を借りた場合、毎月返済が発生します。ところが会計上、返済のうち利息は経費になりますが、元金は経費になりません。 つまり利益として計上された後のお金から支払うことになります。

例:初期費用380万円を5年(60回)で借りた場合 → 元金だけで 月約6.3万円(380万円 ÷ 60回)。これに利息が加わります。

例:初期費用500万円を5年(60回)で借りた場合 → 元金だけで 月約8.3万円(500万円 ÷ 60回)。同じく利息が別途。

実際には物件取得費や運転資金も借りるケースが多いため、借入総額はさらに大きくなるのが一般的です。「利益は出ているのに通帳が増えない」という相談の原因は、たいていこれです。

落とし穴②:税金と社会保険料

個人事業主なら所得税・住民税・国民健康保険料・国民年金、法人にすれば法人税や社会保険料がかかります。利益=所得として課税されるため、利益が大きくなるほど負担も増えます。

税率や控除の仕組みは、所得額・家族構成・法人か個人か・使える控除によって大きく変わります。この記事で「◯割引かれます」と断定することはできません。必ず税理士または国税庁の公式サイトで最新の情報をご確認ください。 開業前の段階で一度だけでも税理士に相談しておくと、個人と法人どちらで始めるかの判断がぐっとラクになります。

落とし穴③:オーナー自身が倒れたときの穴

飲食店は、オーナーが現場に立つことで成り立っているケースが多い業種です。オーナーが体調を崩して2週間現場を離れたら、その分の人件費が追加で発生するか、営業日を減らすことになります。どちらにしても利益は削られます。

モデル数値には、この「自分が働けなくなったとき」のコストは基本的に入っていません。利益の一部は、必ず手元に残しておく。これは精神論ではなく、収支設計の一部です。

まとめると

売上 330万円
 − 経費 264万円
 = 利益  66万円
 − 借入元金返済 約6.3万円〜
 − 税金・社会保険料(金額は所得・形態により変動)
 = 手元に残るお金

「年収792万円の商売」ではなく、「そこから返済と税金を引いた額が年収になる商売」。この認識で計画を立てられれば、開業後の資金繰りで慌てる確率は大きく下がります。


儲からない店に共通する4つのパターン

同じ業態、同じ立地でも、残る店と残らない店があります。相談の現場でよく見かけるパターンを挙げます。

① 売上目標だけがあって、経費の目標がない 「月商300万円を目指す」という計画は多いのですが、「原価は何%以内」「人件費は月いくらまで」という上限を決めていないケースが目立ちます。売上は自分でコントロールできませんが、経費はコントロールできます。 先に決めるべきは経費のほうです。

② 運転資金を用意せずに開業する オープンから軌道に乗るまでには時間がかかります。開店初月から本部のモデル売上に届くことは、まずありません。開業資金とは別に、最低でも数ヶ月分の運転資金と生活費を確保しておく必要があります。ここが不足すると、判断が焦り、値下げや無理な営業時間延長に走りがちです。

③ 自分の人件費を計算に入れていない 「自分が働けば人件費ゼロ」という考え方は危険です。もし自分の代わりに人を雇ったらいくらかかるか——それが本来の人件費です。それを引いてなお利益が出るなら、その店は健全です。引いたら赤字なら、それは「儲かっている」のではなく「自分が安く働いている」だけです。

④ 契約内容を数字で把握していない ロイヤリティの計算方法、契約期間、更新料、中途解約時の違約金、食材の仕入先が本部指定かどうか。これらは全部、毎月の利益に直結します。契約書を読まずに判断するのは、値段を見ずに買い物をするのと同じです。


投資を小さく始める選択肢と、契約前に確認したい5項目

数百万円をかけずに始める道もある

「いきなり数百万円は怖い」という方には、既存のお店にメニューを足すタイプの選択肢もあります。「メニューFC」の公表値を見てみます。

項目公表値
初期費用20.5万円
加盟金20万円
ロイヤリティ月1万〜3万円(固定・1店舗につき + システム利用料)
モデル売上月間追加売上 15万〜30万円
月間利益月10万円

※本部公表値。最新条件は公式サイトでご確認ください。

注目すべきはロイヤリティが固定額であることです。売上に対する%ではないため、売上が伸びても本部への支払いは増えません。売上が伸びるほど手元の割合が良くなる構造です。

一方で、月間利益は月10万円(年換算120万円)。これ1本で生活するための数字ではなく、既にお店を持っている方が売上の柱をもう1本増やす、あるいは小さく試して感触を掴む、という位置づけの選択肢です。初期費用20.5万円という金額は、鳥みやの380万円と比べれば約18分の1。リスクの大きさがまったく違います。

大きく張るか、小さく試すか。 どちらが正解ということはなく、自己資金と生活状況によって答えが変わります。

契約前に必ず確認したい5項目

どのブランドを検討する場合でも、この5つは書面で確認してください。

#確認項目見るべきポイント
1初期費用に何が含まれるか物件取得費・内装工事費・厨房機器は別途か。「総額でいくら必要か」を出してもらう
2ロイヤリティの計算方法売上の何%か、固定額か。%なら「売上」の定義(税込か税抜か)も確認
3モデル収支の前提条件どの店舗の、いつの、何坪・何席の数字か。開店初月の数字か安定後の数字か
4契約期間・更新条件・解約条件更新料の有無、中途解約時の違約金、契約終了後の営業制限
5開業後のサポート体制誰が、どのくらいの頻度で、何をしてくれるのか。加盟後の相談窓口はあるか

特に3番は重要です。この記事で紹介した鳥みやの数字が「前橋本店 28坪28席・安定推移期」と明記されているように、前提条件が書かれているモデル収支は信頼できる情報です。逆に「月商300万円可能!」とだけ書かれていて前提が不明なものは、判断材料としては使えません。

なお、開業時には補助金や助成金が使える場合もあります。ただし制度は毎年変わり、公募期間も限られています。最新の公募状況は必ず各制度の公式サイトでご確認ください。


まとめ|飲食店オーナーの年収は「設計」で決まる

長くなったので、要点を整理します。

  • 飲食店は全国 499,193事業所(全97産業中1位・全体の9.4%/出典:e-Stat「令和3年経済センサス-活動調査」)。需要は大きく、競合も多い
  • 公表モデルでは、月商330万円の焼鳥店で月間利益66万円(利益率約20%)、月商300〜400万円の焼肉店で月間利益70万円
  • ただし利益はまだ年収ではない。ここから借入の元金返済(380万円を5年なら月約6.3万円〜)と税金・社会保険料が引かれる
  • ロイヤリティ3%と5%の差は、月商330万円なら年間約79万円。長期で効き続ける
  • 初期費用20.5万円で既存店に売上を足す(月間利益10万円)という、小さく始める選択肢もある
  • 契約前の確認5項目——特に「モデル収支の前提条件」は必ず聞く

飲食店オーナーの年収は、「飲食店だからいくら」では決まりません。どの業態を選び、いくら投資し、経費をどう抑え、いくら借りるか。 その設計の合計として、手元に残る額が決まります。逆に言えば、開業前の設計次第で結果は大きく変えられる、ということでもあります。

数字を並べてみて、「思ったより現実的だ」と感じた方も、「もう少し慎重に考えたい」と感じた方も、どちらの反応も正しいと思います。大事なのは、自分の自己資金と生活費に当てはめて計算してみることです。

計算してみて分からない点が出てきたら、そのタイミングが専門家に相談する頃合いです。開業ジャパンでは無料のLINE相談を用意していて、「この初期費用に内装は入っているのか」「自分の貯金額で無理なく始められる業態はどれか」といった具体的な質問にお答えしています。契約を迫ることはありませんので、疑問の整理だけに使っていただいてかまいません。

まずは、自分に合う開業の形を掴むところから。3分程度の質問に答えるだけで、あなたの資金・経験・希望に近い開業タイプが分かります。

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※本記事に掲載した各ブランドの金額は、いずれも本部公表値です。時期や条件により変動する場合があります。最新情報は各ブランドの公式サイトおよび本部への直接確認をお願いします。また、税制・補助金等の制度に関する内容は、必ず公式サイトまたは専門家にてご確認ください。本記事は特定の収益を保証するものではありません。

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