コインランドリーは儲かるのか|結論は「返済を引いたあとの手取りレンジ」で見る
コインランドリーの話は、たいてい「月商◯◯万円」から始まります。ですが開業を検討している人が本当に知りたいのは、その月商から全部引いたあとに、自分の口座にいくら残るのかのはずです。「コインランドリーの月収は?」「オーナーの年収は?」という疑問も、結局は同じことを聞いています——月商ではなく、返済まで引いたあとに手元へ残る額の話です。
先に結論を出します。下の表は、地方のロードサイドに15坪・機械10台の店を1つ持ち、初期投資2,500万円のうち2,000万円を10年で借りた場合の逆算です。数字はすべて編集部が前提を置いて計算したもので、実在の1店舗の決算ではありません。
手元に残る額のレンジ(月・編集部逆算)
| 苦戦ケース | 標準ケース | 好調ケース | |
|---|---|---|---|
| 月商 | 35万円 | 59万円 | 95万円 |
| 経費の合計 | 32.5万円 | 37.0万円 | 47.5万円 |
| 返済前・税前に残る額 | 2.5万円 | 22.0万円 | 47.5万円 |
| 借入の返済(月) | 18.4万円 | 18.4万円 | 18.4万円 |
| 返済後・税前に残る額 | −15.9万円 | 3.6万円 | 29.1万円 |
| 自分の人件費 | 含まず | 含まず | 含まず |
| 税金(所得税・住民税など) | 含まず | 含まず | 含まず |
読み方の注意を3つだけ。
- 「返済前・税前に残る額」は手取りではありません。 ここから毎月18.4万円の返済が出ていきます。事業計画書や本部の資料でよく目立つのは、この返済前の行です。
- 自分の人件費が入っていません。 巡回清掃を自分でやるなら、その時間はタダ働きです。外注に置き換えた金額(この試算では月5万円)を、自分の労働の値段だと思ってください。
- 税金も引かれていません。 黒字なら、ここからさらに所得税・住民税・事業税が出ていきます。
コインランドリーの月収・年収は、返済後の行がすべて
「コインランドリーの月収はいくらか」「オーナーの年収はどのくらいか」という質問の答えは、上の表の返済後・税前に残る額の行にあります。ここを月額と年額に並べ直すと、こうなります。
オーナーの取り分を月・年に直すと(編集部逆算)
| 苦戦ケース | 標準ケース | 好調ケース | |
|---|---|---|---|
| 返済後・税前に残る額(月) | −15.9万円 | 3.6万円 | 29.1万円 |
| 同(年・月額×12) | −190.8万円 | 43.2万円 | 349.2万円 |
| 自分の人件費 | 含まず | 含まず | 含まず |
| 税金(所得税・住民税など) | 含まず | 含まず | 含まず |
年額に直しても、大事な注意は月の表とまったく同じで、次の3つです。
- この年額は税前です。 黒字なら、ここから所得税・住民税・事業税が引かれ、実際の年収はさらに小さくなります。
- 自分の人件費が入っていません。 清掃や補充を自分でやるなら、外注に置き換えた年60万円(月5万円×12)ぶんは、実質あなたの給料の先取りです。標準ケースの年43万円は、ほぼ「自分の労働の対価」で消える計算になります。1店舗だけで会社員なみの年収を、というのは標準ケースでは届きません。
- 「コインランドリーの年収は◯百万円」という数字を見たら、まず正体を確認する。 それが返済前なのか、返済後なのか、自分の人件費と税を引いた後なのか。表現を1つずらすだけで、同じ店でも年収の見え方は数百万円も変わります。
つまりコインランドリーは、うまくいって月30万円弱・年350万円弱、標準では月数万円・年数十万円、外すと毎月赤字という商売です。「無人で自動的に入ってくる」というイメージや、「月収◯十万円ラクラク」といった見出しとは、少し違う見え方になるはずです。年収を会社員なみに積み上げたい場合は、1店舗ではなく複数店舗を前提にする必要がある、という点も先に知っておいてください。
なぜこの3つのケースに分かれるのか。ここから、売上と経費を一行ずつ分解していきます。
売上の作られ方|「1台が1日に何回まわるか」でほぼ決まる
コインランドリーの売上は、驚くほど単純な式でできています。
月商 = 1回の料金 × 1台が1日にまわる回数 × 台数 × 30日
飲食店のように「単価を上げる」「メニューを増やす」といった打ち手がほとんどありません。料金を上げれば客は隣の店に行き、台数を増やせば投資が増えます。動かせるのは実質回転数(1台が1日に何回使われるか)だけで、その回転数は立地でほぼ決まってしまいます。
先ほどの標準ケースの中身は、こうなっています。
標準ケースの1日(編集部逆算)
| 機械 | 台数 | 1回の料金 | 1日の回転数 | 1日の売上 |
|---|---|---|---|---|
| 洗濯乾燥機(洗いから乾燥まで1台で完結) | 6台 | 1,000円 | 2.7回 | 16,200円 |
| 乾燥機(乾燥だけ・10分100円×30分想定) | 4台 | 300円 | 3.0回 | 3,600円 |
| 合計 | 10台 | — | — | 19,800円 |
1日19,800円 × 30日 = 月商59.4万円。
3ケースの違いは、回転数だけです。
| 洗濯乾燥機の回転数 | 乾燥機の回転数 | 月商 | |
|---|---|---|---|
| 苦戦ケース | 1.6回 | 1.8回 | 約35万円 |
| 標準ケース | 2.7回 | 3.0回 | 約59万円 |
| 好調ケース | 4.3回 | 4.8回 | 約95万円 |
1台が1日に1回多くまわるかどうかで、月商は20万円以上動きます。 そして月商が20万円動けば、返済後に残る額——つまりあなたの月収・年収も、そのぶんまるごと動きます。回転数を決めるのは、店の前を通る車の量、半径1km以内の世帯数、単身者・ファミリーの割合、駐車場の停めやすさ、近くに競合があるかどうか——つまり契約する前にほぼ決まっている条件です。
だから物件を見るときは、内装や機械の型番より先に、**「この立地で、1台が1日に何回まわると本部は見ているのか。その根拠は何か」**を聞いてください。ここに数字で答えられない相手とは、契約を急がないほうがいいです。
内訳分解|月商59万円が、手元3.6万円になるまで
ここが本題です。標準ケースの月商59万円から、実際に何がいくら引かれて、最後にオーナーの月収3.6万円(税前・人件費含まず)になるのかを1行ずつ並べます。

月商59万円のときの経費内訳(編集部逆算)
| 費目 | 金額 | 中身 |
|---|---|---|
| 水道光熱費 | 13.0万円 | ガス・電気・水道。乾燥機を回すほど増える |
| 家賃 | 12.0万円 | 地方ロードサイド15坪・駐車場込みの想定 |
| 巡回清掃・管理委託 | 5.0万円 | 週3回の清掃と補充。自分でやるなら0円だが、その分は自分の労働 |
| 洗剤・消耗品・両替金の補充 | 2.0万円 | 洗剤、ゴミ袋、トイレ用品など |
| キャッシュレス手数料・通信費 | 1.0万円 | カード・QR決済の手数料と、遠隔監視の回線代 |
| 損害保険・雑費 | 1.0万円 | 火災・水漏れ・賠償の保険 |
| 修繕積立 | 3.0万円 | 故障・部品交換に備えて自分で積む分 |
| 経費合計 | 37.0万円 | |
| 返済前・税前に残る額 | 22.0万円 | ここが「儲かる」と紹介されやすい行 |
| 借入返済(2,000万円・10年・年利2%想定) | 18.4万円 | |
| 返済後・税前に残る額 | 3.6万円 | これがオーナーの実質的な月収の出発点 |
この表で、開業前の人がいちばん見落とすのは次の3つです。
① 水道光熱費は、売上に比例して増える コインランドリーの水道光熱費は、月商のおおむね2割前後を占めます(この試算では22%で置いています)。売上が伸びれば水光熱費も伸びるので、「あと10万円売れれば、まるまる10万円残る」わけではありません。逆に売上が落ちても、基本料金があるのでゼロにはならず、苦戦ケースでは月商比25%超まで比率が悪化します。
なお、ガス代・電気代は世の中の情勢で動きます。数年前の見積書の水光熱費をそのまま信じないでください。必ず「直近12か月の実績」で聞くのが鉄則です。
② 修繕積立を経費に入れていない計画書が多い 機械は必ず壊れます。ドアパッキンの交換、基板の故障、乾燥機のダクト詰まり。1回で数万円〜数十万円が飛びます。毎月3万円を積んでも、5年で180万円。大型機1台の入れ替えには足りないくらいです。この行が入っていない収支計画は、良く見えて当たり前だと思ってください。この行を抜いた計画書は、見かけの月収・年収だけが実態より高く出ます。
③ 返済は経費ではない これがいちばん誤解されます。借入の返済のうち、経費(費用)になるのは利息だけで、元金の返済は経費になりません。つまり帳簿の上では利益が出ているのに、口座からは元金分の現金が消えていく、ということが起きます。次のセクションで詳しく書きます。
コインランドリーの数字が「思ったより残らない」と感じるとしたら、その正体はほぼこの3つです。月収・年収の話が本部の説明と食い違うときも、たいていこの3行のどれかを見ていません。
下振れするのはどこか|数字が崩れる3つの条件
苦戦ケース(月商35万円・毎月15.9万円の赤字=年約191万円の赤字)は、特別に不運な想定ではありません。次のどれか1つが起きるだけで、標準ケースはそこへ近づきます。
条件1|半径1km以内に競合が1店できる コインランドリーの客は、基本的に家から近い店を選びます。味やサービスで選ばれる商売ではないので、より近い店ができれば、そちらに流れます。しかも自分の店の機械は減らせません。売上だけ落ちて、経費と返済はそのままという、装置型の商売でいちばんきつい形になります。月収が黒字から一気に赤字へ振れるのは、この形が多いです。
契約前に、「この商圏に他社が出る計画はないか」「本部は自社の店をどのくらいの距離まで出さない約束をしてくれるのか(テリトリー制があるか)」を、必ず契約書の条文で確認してください。口頭の約束は残りません。
条件2|天気と季節で、月ごとに2〜3割ぶれる 梅雨と冬は乾燥機がよく回り、晴れた春秋は売上が落ちます。年間で均せば計画どおりでも、悪い月が2〜3か月続くと運転資金が持たないことがあります。「年収でならプラス」でも、その途中に赤字の月が挟まれば資金は先に尽きます。だから開業時は、**運転資金として最低6か月分の固定費(この試算なら家賃・管理・保険で約110万円、返済も入れれば約220万円)**を別枠で確保しておきたいところです。
条件3|想定より「乾燥だけ」の客が多い 乾燥機だけを使う客は、単価が洗濯乾燥機の3分の1以下です。客数は計画どおりなのに月商が届かない店は、たいていここが原因です。売上を「客数」ではなく**「機械別の回転数」**で見積もっているかを確認してください。
もう少し詳しい撤退理由や、契約前に本部へ投げる質問の文例は、コインランドリー経営で失敗する人の共通点|撤退理由と、契約前に見抜く方法にまとめてあります。この記事は「儲かるときの内訳」、あちらは「崩れるときの理由」で対になっています。
コインランドリー固有の落とし穴|「償却が終わってからの2年」がいちばん苦しい
ここはコインランドリー特有の話なので、少し丁寧に書きます。専門用語が出ますが、意味は簡単です。
**減価償却(げんかしょうきゃく)**とは、高い機械の代金を、買った年に全額まとめて経費にするのではなく、使う年数で分けて少しずつ経費にする仕組みのことです。
ここで、2つのズレが起きます。
| 現金の動き | 帳簿(利益計算)の扱い | |
|---|---|---|
| 借入の元金返済 | 毎月出ていく | 経費にならない |
| 減価償却 | 現金は出ていかない | 経費になる |
機械代2,000万円を7年で償却すると仮定すると、経費になるのは年約286万円=月約24万円。一方、返済は月18.4万円ですが、経費になるのは利息分だけです。
その結果、こうなります。
- 1〜7年目:償却が経費として乗るので、帳簿の利益は小さく見え、税金は軽い。現金は返済で出ていくが、償却分は出ていかないので、なんとか回る。
- 8〜10年目:償却は終わったのに、返済はまだ残っている。 経費が月24万円ぶん消えるので帳簿の利益が急に増え、税金も増える。なのに現金の返済は続く。
この**「償却切れ+返済残り」の期間が、コインランドリーでいちばん資金繰りが苦しくなる局面**です。開業から数年間の月収・年収が計画どおりでも、この時期に手取りがぐっと目減りする、という点は先に頭へ入れておいてください。しかもこの頃には機械が7〜10年落ちになり、故障や入れ替えの話が出てきます。
対策は難しくありません。借入期間を、機械を使える年数より短くしすぎない/長くしすぎないように設計し、8年目以降の資金繰り表まで作っておくことです。ここまで作ってある事業計画書は、金融機関からの見え方も変わります。
なお、洗濯機・乾燥機の法定耐用年数は資産の区分によって変わります。この記事の7年はあくまで試算の前提なので、実際の年数と税額は国税庁の公式情報を確認するか、税理士に必ず相談してください。
もうひとつ、コインランドリー固有の注意点を並べておきます。
- 無人であること自体がリスク:いたずら、器物損壊、洗剤の持ち去り、ゴミの不法投棄。防犯カメラと遠隔監視の費用は、最初から経費に入れておく
- 土地オーナーとの契約形態:土地を借りて建てる場合、契約が切れたときに建物を壊して返す義務(原状回復)が発生することがある。解体費が数百万円かかる前提で契約書を読む
- 機械のリース残債:リースで導入した場合、途中でやめても残りの支払い義務は消えないことが多い。撤退時のコストを先に確認する
「無人だから楽」は、人が動く商売とどう違うのか
コインランドリーの特徴を一言でいうと、先に大きなお金を払って、あとから小さく回収する商売です。比較として、同じ生活密着型でも「人が動いて稼ぐ」タイプのフランチャイズの実データを1件だけ挙げます。
おそうじのえる(お掃除・お庭サービス)の本部公表データ
| 項目 | 金額・条件 |
|---|---|
| 初期費用 | 105万円〜 |
| 加盟金 | 30万円〜(キャンペーン適用時/通常200万円) |
| ロイヤリティ | 売上の25% |
| モデル収支 | 月商132万円/手取り約82万円(利益率62%・オーナー1名稼働モデル) |
※金額は本部公表値で、時期により変動します。最新の条件は必ず公式サイト・本部資料で確認してください。→ /brands/osouji-noel/
月収・年収の「作られ方」がまったく違うことが分かると思います。
| コインランドリー(本記事の試算) | 人が動くサービス型(上記の例) | |
|---|---|---|
| 初期投資 | 2,500万円前後 | 105万円〜 |
| 稼ぐ主体 | 機械 | 自分の体と時間 |
| 売上が落ちたとき | 経費をほとんど削れない | 稼働を調整できる |
| やめるとき | 解体・残債・入れ替えの費用が出る | 撤退コストが小さい |
| 自分が働かないと | 売上は立つ(回転すれば) | 売上はゼロになる |
どちらが良い・悪いではありません。「まとまった資金や土地があり、自分の労働時間を売りたくない人」にはコインランドリーが向き、「手元資金が少なく、自分が動いて早く現金を作りたい人」には人が動く型が向く、という違いです。人が動く型は、この例のように1店舗でもオーナーの月収・年収を大きく取りにいける代わりに、自分が動き続けることが前提になります。
自己資金300万円で「無人で楽そうだから」とコインランドリーを選ぶと、借入比率が高くなり、先ほどの返済18.4万円が重くのしかかります。ここは相性の問題として、冷静に見てください。
背景データと、契約前に確認したい4項目
最後に、市場の広さと、実際に使えるチェック項目を置いておきます。
コインランドリーが含まれる洗濯・理容・美容・浴場業の全国の事業所数は、325,730事業所。全97産業のなかで3位、全事業所5,287,701のうち**6.2%**を占めます。生活に必要とされ続けている分野である一方、すでに数が多く、空白地は限られているという読み方もできます。空白地が少ないほど、前半で見た「競合が近くにできて回転数が落ちる」リスクが上がり、月収・年収の下振れにつながります。
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和3年経済センサス-活動調査」を加工して作成
なお、原価率や人件費比率の一般的な考え方(FL比率など)は、飲食店開業の完全ガイドに集約しています。コインランドリーは原材料も人件費もほとんどない代わりに、設備費と水光熱費に置き換わっている業態だと理解してください。
契約前に、数字で確認したい4項目
| 確認すること | なぜ必要か | 危ないサイン |
|---|---|---|
| 実店舗の直近12か月の水道光熱費 | 経費の最大項目で、情勢により変動するため | 「だいたい売上の◯%です」としか答えない |
| 想定回転数の根拠(商圏世帯数・交通量) | 売上のほぼ全部を決める数字だから | 「立地が良いので大丈夫です」で終わる |
| テリトリー(出店制限)の条文 | 近隣に1店できるだけで売上が落ちるため | 契約書に条文がなく、口頭の約束だけ |
| 撤退時の費用(解体・リース残債) | やめるときにも数百万円が動くため | 撤退の話を嫌がる、資料がない |
そして、この記事の表をそのまま使う必要はありません。自分の物件の家賃と、実際に借りる金額・年数を入れて、「返済後・税前に残る額」の行だけ計算し直し、それを12倍して自分の年収の当たりを付けてみてください。 そこがプラスにならない計画は、どれだけ月商が立派でも進めるべきではありません。
数字を入れ替えて計算してみたけれど、この前提で合っているのか不安、という段階が一番迷いやすいところです。無料のLINE相談では、見積書や収支計画の数字をそのまま見せていただければ、抜けている費目がないか、返済後の月収・年収がどのくらいになりそうかだけでも一緒に確認できます。急ぐ必要はないので、契約書にサインする前のタイミングでどうぞ。
自分にコインランドリーのような装置型が向くのか、人が動く型が向くのかを整理したい方は、まず開業診断で自己資金と働き方の希望から絞り込んでみてください。
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