開業の基礎

駐車場は本当に儲かるのか|10台の月極で手元に残る額を、売上から全部たどる

2026/8/25 更新

駐車場は本当に儲かるのか|10台の月極で手元に残る額を、売上から全部たどる

「空いている土地があるから、駐車場にすれば毎月お金が入ってくるのでは」——編集部にはこの相談が毎月届きます。結論から言うと、駐車場は手間が少ない代わりに、手元に残る額も小さいビジネスです。そして「売上」と「手取り」の差が、思っているより大きい。

この記事では、駐車場の売上が手元に残るまでを1円ずつ分解します。数字は編集部が仮定を置いて計算した逆算値で、あなたの土地でそのまま当てはまるものではありません。ただ、どこで削られるかの「順番」は、どの土地でも同じです。

結論:駐車場経営の年収レンジは「返済前・税前で月1.5万〜5万円」から(10台規模・編集部逆算)

まず前提を先に出します。ここを隠して数字だけ見せる記事は信用しないでください。

編集部が置いた前提

  • 土地は自己所有(相続などですでに持っている)。土地を買うローンはない
  • そのため表は「返済前」の数字。ローンを組む場合は、ここからさらに返済額が引かれる
  • 「税前」=所得税・住民税を引く前
  • 「自分の人件費」は含まない。=自分が見回り・草刈り・集金をする分の給料は計算に入っていない
  • 固定資産税の税率は標準税率(固定資産税1.4%+都市計画税0.3%=合計1.7%)で計算。税率も評価額も自治体で違うため、必ずお住まいの市区町村の公式サイトと納税通知書で確認してください
月極・地方(10台)月極・都市寄り(10台)コインパーキング(5台・自主経営)一括借り上げ(5台)
想定の売上(月)4.0万円10.8万円12.0万円4.5万円(業者が払う賃料)
返済前・税前に残る額約2.1万円約5.5万円約4.8万円約3.1万円
返済後に残る額土地ローンなし前提のため同額。ローンを組む場合は返済額を差し引く同左機器を購入した場合はリース料の代わりに返済が乗る同左
自分の人件費の扱い含まず(草刈り・集金・滞納督促は自分)含まず(管理会社委託でも巡回は発生)含まず(巡回・トラブル対応 月10時間想定)含まず(ほぼ手間なし)
税引後のイメージ約1.7万円約4.4万円約3.8万円約2.5万円

※すべて編集部逆算。税引後は所得税+住民税を合わせて20%と仮置きした概算で、実際の税率は他の所得と合算して決まります。 ※「必ずこの額になる」ものではありません。収益を保証するものではありません。

年に直すと、地方の月極10台で約25万円、都市寄りでも約66万円(いずれも返済前・税前)。「駐車場経営で年収を作る」と考えていた方には、たぶん想像より小さい数字です。

売上から手元に残るまでを、1円ずつ分解する

なぜここまで減るのか。地方の月極10台のケースで、削られる順番を追います。

段階金額(月)何が起きているか
① 満車のときの売上50,000円1台5,000円×10台
② 稼働率80%を反映40,000円2台空き。1台空くと10%減るのが小規模の怖さ
③ 管理委託料(売上の5%)−2,000円契約・集金・滞納督促を管理会社に任せる費用
④ 固定資産税+都市計画税−14,167円更地評価1,000万円×1.7%=年17万円
⑤ 保険・草刈り・ライン引きの積立−3,000円白線は数年で薄くなる。舗装の打ち替えも将来必要
⑥ 返済前・税前に残る額20,833円ここが「手取りのもと」
⑦ 所得税・住民税(20%と仮置き)−4,167円不動産所得として給与などと合算して課税
⑧ 手元に残る額約16,666円

(編集部逆算)

注目してほしいのは④の固定資産税です。売上4万円のうち、税金だけで1.4万円。売上の35%が税金に消えています。飲食店なら家賃や材料費が主役ですが、駐車場の最大のコストは税金になりやすい。ここが他業種と決定的に違うところです。

お金の内訳を分解するのイメージ

コインパーキング(自主経営・5区画)も同じように分解しておきます。

段階金額(月)
売上(1区画あたり1日800円×5区画×30日)120,000円
精算機・ロック板・看板のリース料−50,000円
電気代・通信費−8,000円
固定資産税+都市計画税−14,167円
返済前・税前に残る額47,833円

(編集部逆算。機器のリース料は台数・機種・契約年数で大きく変わるため、必ず複数社から見積もりを取ってください)

一方、同じ土地を業者に一括で借り上げてもらうと、賃料が月45,000円提示されたとすると、固都税を引いて残るのは約30,833円。自主経営との差は月17,000円です。自分の巡回・クレーム対応を月10時間と見ると、時給に直して約1,700円(編集部逆算)。

この時給を「やる価値がある」と見るか「深夜に呼び出される可能性を考えると割に合わない」と見るか。それが自主経営と一括借り上げの分かれ目で、賃料の高低ではありません。

手取りが下振れする4つの条件

上の表は、わりと平穏な状態の数字です。実際には次の4つで簡単に削られます。

  1. 近所に新しい駐車場ができる 駐車場は差別化がほとんどできません。同じ通りに1台500円安い月極ができたら、対抗手段は基本的に値下げだけ。10台で1台500円下げると、月5,000円=返済前利益の約4分の1が消えます。

  2. 稼働率が読みにくい 10台で2台空けば80%、4台空けば60%。小規模なほど1台の空きが致命的です。契約前に、半径500m以内の月極の空き看板を実際に歩いて数えてください。空き看板が多い地域は、すでに供給過剰です。

  3. 税額そのものが動く 固定資産税の評価額は原則3年ごとに見直されます。後述する住宅用地の特例が外れるケースも含め、税金は自分でコントロールできない固定費です。

  4. 設備の更新が数年おきに来る 白線の引き直し、ロープや車止めの交換、砂利の補充、アスファルトの打ち替え、コインパーキングなら機器のリース満了後の再契約や買い替え。毎月は出ないぶん忘れられがちですが、月2〜3千円の積立を最初から引いておくのが安全です。

落とし穴①:更地にした瞬間、固定資産税が数倍になることがある

駐車場の相談で、いちばん多い誤算がこれです。

住宅が建っている土地には住宅用地の特例という仕組みがあり、200㎡までの部分は固定資産税の課税標準が6分の1、都市計画税は3分の1に軽くなります。ところが、家を解体して駐車場にすると、この特例は外れます。つまり税額が最大でおよそ6倍になりうるということです。

「空き家を壊して駐車場にすれば収入になる」と考えて解体したら、駐車場の収入より税金の増加分のほうが大きかった——という順番の間違いは、実際に起きます。解体を検討する段階で、解体後の税額を市区町村の資産税課に問い合わせて確認してください。制度の内容や税率は自治体・年度で異なるため、最新情報は必ず自治体の公式サイトで確認しましょう。

もうひとつ、相続を見据えている方に関係するのが小規模宅地等の特例です。貸付事業に使っている土地は200㎡まで評価額を50%減らせる制度がありますが、構築物のない「青空駐車場」(ロープを張っただけ、地面が土のまま)は対象外と判断される可能性があります。アスファルト舗装や砂利敷きなど構築物の有無が論点になる領域なので、相続対策も兼ねて駐車場にするなら、着工前に税理士と国税庁の公式情報で確認してください。舗装工事をする・しないの判断が、あとで数百万円の差になることがあります。

落とし穴②:一括借り上げは「賃料改定」と「解約」の条項がすべて

一括借り上げ(サブリース)は、業者があなたの土地をまるごと借りて、コインパーキングとして運営し、あなたには毎月決まった賃料を払う方式です。手間がほぼゼロで、空車でも賃料が入る。魅力的に見えますし、実際「時間を売りたくない人」には合理的な選択肢です。

ただし、契約書で必ず確認してほしい項目があります。

確認項目見るポイント
賃料の改定条項何年ごとに、何を根拠に見直すか。「協議のうえ改定できる」だけの文言だと、事実上いつでも下げられる
免責期間開設後◯ヶ月は賃料が発生しない、という条項の有無
中途解約業者側から解約できるか。予告期間は何ヶ月か。違約金はどちら側にあるか
機器の撤去費用契約終了時に精算機やロック板を撤去する費用を、どちらが負担するか
原状回復アスファルトを剥がして更地に戻す義務があるか。ある場合、費用は誰持ちか
契約期間と更新自動更新か、更新時に条件を見直すか

賃料が「保証されている」ように見えても、改定条項と解約条項の書き方次第で、実質的な保証にはなりません。提示された賃料の高さではなく、この6項目で業者を比べてください。

落とし穴③:駐車場の売上には消費税がかかることがある

意外と知られていませんが、土地の貸付は原則として消費税がかからないのに対し、区画を整備した駐車場の貸付は課税取引になります。アスファルト舗装、白線での区画、車止めやフェンスといった設備を伴う駐車場は、「施設の貸付」とみなされるためです。

10台×5,000円=年間60万円の月極なら、課税売上1,000万円以下なので当面は免税事業者のままでしょう。ただし、他に事業をやっている方は売上が合算されます。すでに個人事業をしていて売上が1,000万円に近い方、複数の駐車場を運営する予定の方は、駐車場を足したことで課税事業者になるケースがあります。舗装するかどうかは、税金の扱いを含めて判断する項目です。判断に迷う場合は税務署や税理士に確認し、最新の取り扱いは国税庁の公式情報で確認してください。

土地がない人はどうか|同じ100万円台で始める他業種と並べてみる

ここまでは「土地を持っている人」の話でした。では土地がない人が、他人の土地を借りて駐車場を始めたらどうなるか。

答えはシンプルで、上の表の返済前利益から、さらに地代が引かれます。地方の月極10台で返済前2.1万円だったところに月3万円の地代が乗れば、赤字です。土地を借りて駐車場をやるなら、コインパーキングのように回転数で稼げる立地でなければ成立しません。

参考までに、同じくらいの初期費用で始められる他業種と並べてみます。業種はまったく違いますが、「お金と時間の使い方」の対比としては意味があります。

月極10台(自己所有地・地方)コインパーキング5台(自主経営)お掃除のノエル(お掃除・お庭サービスFC)
初期費用舗装・区画整備の業者見積による(相見積り必須)機器はリースなら初期は小さい/購入なら数百万円規模105万円(加盟金30万円=キャンペーン適用時。通常200万円)
ロイヤリティなし(管理委託なら売上の数% )なし(リース料が固定費)売上の25%
返済前・税前に残る額(月)約2.1万円(編集部逆算)約4.8万円(編集部逆算)約82万円(月商132万円・利益率62%の本部公表モデル)
返済後に残る額ローンなし前提機器購入時は返済が乗る本部未公表
自分の人件費の扱い含まず(巡回・草刈り)含まず(月10時間程度の巡回)含まず(オーナー1名が実働する前提のモデル)

※お掃除のノエルの数値は本部公表値で、時期により変動します。→ ブランド詳細 ※駐車場側の数値は編集部が仮定を置いて計算した逆算値です。

この表で読み取ってほしいのは「掃除のほうが儲かる」ではありません。駐車場は自分の時間を売らない代わりに額が小さく、労働集約型のフランチャイズは額が大きい代わりに自分が現場に立ち続ける必要がある、という構造の違いです。オーナー1名稼働のモデルは、裏を返せばオーナーが動けなくなった月は売上も止まります。

どちらが正しいかではなく、あなたが「土地を持っているのか」「時間を出せるのか」で答えが変わります。

なお、駐車場が属する不動産賃貸業・管理業の事業所数は全国で278,156事業所(全事業所5,287,701の5.3%、97産業中4位)。プレイヤーが多く、参入障壁が低いぶん、立地以外で差がつきにくい市場だという裏づけでもあります。 ※出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和3年経済センサス-活動調査」を加工して作成

まとめ:契約・着工の前に確認する7項目

駐車場は「儲かる/儲からない」で割り切れる話ではなく、手間の少なさに見合ったリターンが返ってくる事業です。生活費をまるごと作る手段としては小さく、持っている土地の維持費を賄う手段としては現実的、というのが編集部の見方です。

判断の前に、この7つを必ず埋めてください。

  1. 更地にした場合の固定資産税・都市計画税の年額(市区町村の資産税課に確認)
  2. 半径500m以内の月極の相場と空き看板の数(自分の足で数える)
  3. 舗装・区画整備の見積もり(3社以上)
  4. 白線・車止め・舗装の更新費用を月いくら積み立てるか
  5. 一括借り上げなら賃料改定・中途解約・撤去費用の3条項
  6. 相続を見据えるなら小規模宅地等の特例が使えるか(税理士に確認)
  7. 他の事業と合算して消費税の課税事業者にならないか

制度や税率は変わります。金額に関わる部分は、必ず自治体・国税庁・業者の公式情報で最新を確認してください。

7項目のうち埋まらないところがあれば、開業ジャパンの無料LINE相談でそのまま送っていただければ、どこから確認すべきかだけお答えします。売り込みはしませんので、迷っている段階で構いません。

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