開業の基礎

カフェオーナーの年収は本当に儲かるのか|売上から手元に残るまでの内訳

2026/8/15 更新

カフェオーナーの年収は本当に儲かるのか|売上から手元に残るまでの内訳

「いつか自分のカフェを持ちたい」——独立を考えるとき、いちばん人気のある夢のひとつだと思います。

静かな店内、好きな音楽、こだわりの豆。想像するだけで気持ちのいい光景です。でも、そこで必ずぶつかるのが「で、カフェオーナーの年収っていくらなの?」という現実的な問いです。

この記事では、カフェの売上が手元に残るまでに何がどれだけ引かれるのかを、順番に追いかけます。専門用語は使うたびに説明を添えるので、飲食の経験がなくても読めるようにしています。

カフェオーナーの年収は「売上」ではなく「引き算のあと」で決まる

まず大前提です。カフェの売上は、そのままオーナーの収入にはなりません。

お客さんが払った1杯500円のコーヒーは、店に入ったあと次のような順番で出ていきます。

  • 原価……コーヒー豆、牛乳、パン、ケーキの材料。飲食では「F(Food)」と呼ばれます
  • 人件費……アルバイトや社員の給料。飲食では「L(Labor)」と呼ばれます
  • 家賃……テナント代。売上がゼロの月でも同じ額が出ていきます
  • 水道光熱費……エスプレッソマシン、冷蔵庫、空調。想像より高くつく項目です
  • 集客費……SNS広告、グルメサイトの掲載料、チラシ
  • 借入の返済……開業資金を借りた場合の元本と利息
  • 税金・社会保険……所得税・住民税・国民健康保険など

これを全部引いて、最後に残ったものがオーナーの取り分です。つまりカフェオーナーの年収とは、「売上がいくらか」ではなく「引き算のあとに何が残るか」で決まります。

ここを勘違いすると、「毎日満席なのに、なぜかお金が貯まらない」という状態が起こります。カフェが厳しいと言われる理由は、売上が立たないからではありません。客単価(お客さん1人あたりの支払額)が低いわりに、席と時間を長く使われるという構造にあります。1杯500円のコーヒーで2時間ねばられると、その席は2時間で500円しか生みません。

売上から手元に残るまでの内訳を、表で見る

言葉だけではつかみにくいので、**仕組みを理解するための仮の試算(モデルケース)**を2つ作ってみます。

※これは実在する特定の店舗の数字ではありません。実際は立地・坪数・メニュー構成で大きく変わります。「どこにお金が出ていくか」を掴むための例として見てください。

ケースA:夫婦2人で回す15坪の郊外カフェ(月商135万円)

項目金額の例補足
売上135万円客単価900円 × 1日60人 × 月25日
原価(F)−41万円豆・牛乳・食材。売上の約30%
人件費(L)−27万円アルバイト1名分。オーナー夫婦の給料は含まない
家賃−18万円郊外ロードサイド15坪を想定
水道光熱費−9万円空調・冷蔵・マシン
集客費・通信−5万円SNS広告・回線
借入返済−10万円開業資金を借りた場合
その他経費−10万円保険・消耗品・税理士費用など
残り(税金を引く前)約15万円ここから所得税・住民税・国保を払う

夫婦2人で毎日働いて、税金を引く前で15万円。これが「カフェは儲からない」と言われるときの、いちばんリアルな姿です。

ケースB:席数を増やしてスタッフを雇う店(月商250万円)

項目金額の例補足
売上250万円席数と回転を増やした想定
原価(F)−75万円売上の30%
人件費(L)−72万円社員1名+アルバイト複数
家賃−30万円駅近・広めの物件
水道光熱費−14万円
集客費−8万円
借入返済−18万円内装が大きいほど重くなる
その他経費−13万円
残り(税金を引く前)約20万円

売上は1.85倍になったのに、手元に残る額は15万円→20万円で1.3倍にしかなりません。一方で、借入も家賃も雇用の責任も増えています。「規模を大きくすれば儲かる」とは限らない、というのがカフェの難しいところです。

お金と資金のイメージ

手元を削る2大コスト「FL比率」を最初に決める

上の2つの表を見比べると、犯人ははっきりしています。**原価(F)と人件費(L)**です。

飲食業では、この2つを足した金額が売上の何%かを「FL比率」と呼び、60%以内に収めるのがひとつの目安とされています。ここを超えると、家賃や返済を払ったあとに何も残りません。

ケースAケースB
原価(F)41万円75万円
人件費(L)27万円72万円
合計68万円147万円
売上に対する比率(FL比率)約50%約59%

ケースBは目安の60%ギリギリです。ここでアルバイトを1人増やすか、豆の仕入れ値が上がるだけで、手元の20万円は簡単に消えます。

これに家賃が加わります。家賃は「月商の10%以内」に収めると資金繰りが安定すると言われます。逆算すると、家賃20万円の物件を借りるなら月商200万円が必要ということです。物件を見て「ここでカフェをやりたい」と思ったら、まず家賃×10倍の売上が本当に立つのかを数字で確かめてください。この一手間で、開業後の数年が変わります。

「飲食店は日本でいちばん店が多い」というデータ

もうひとつ、開業前に知っておきたい現実があります。競争相手の数です。

政府の統計によると、飲食店の全国の事業所数は499,193事業所。これは全97産業のなかで1位で、全事業所5,287,701のうち**9.4%**を占めます。

項目数値
飲食店の事業所数499,193事業所
全産業97分類の中での順位1位(最多)
全事業所に占める割合9.4%

出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和3年経済センサス-活動調査」を加工して作成

日本でいちばん店の数が多いジャンル、それが飲食店です。しかもカフェには、大手チェーンもコンビニのカウンターコーヒーも競合として存在します。

これは「やめておけ」という話ではありません。それだけ需要が大きいということでもあります。ただし、何もしなければ埋もれるのは確かです。「近所の何軒と、何で差をつけるのか」を言葉にできないまま内装にお金をかけると、残るのは借入だけになります。

カフェで手元を残している店は「コーヒー以外」を持っている

では、実際に利益を出しているカフェは何が違うのか。当サイトに掲載しているカフェ系フランチャイズ(本部の看板とやり方を借りて開業する仕組み)の本部公表データを並べると、共通点が見えてきます。

項目ジェリーの謎解きカフェANELLA CAFE
業態謎解き×ボードゲームのエンタメカフェ保護犬猫カフェ×就労支援B型
初期費用610万円(0次募集は加盟金0円)1,100万円
加盟金0円(0次募集時)※通常時は要確認400万円
ロイヤリティ席数×1,500円+システム費3.3万円+謎解きキット770円/キット売上の8%
モデル売上月商108万円(44席想定)月商400万〜500万円
月間利益の目安月30万円〜月100万円〜

詳細は各ページで確認できます → ジェリーの謎解きカフェ / ANELLA CAFE

客単価を上げる:謎解きカフェの内訳

ジェリーの謎解きカフェについて、本部が公表しているモデル試算の内訳です。

項目数値
月間客数(通常時期)387人
客単価2,800円
売上108.4万円
謎解きキット原価10.8万円
家賃20万円
人件費27.3万円
水光熱・通信・消耗品9.7万円
ロイヤリティ・システム費9.9万円
その他10万円
加盟店オーナー利益30.7万円(繁忙期は66万円)

注目すべきは客単価2,800円です。先ほどのケースAが900円だったのに対し、3倍以上あります。しかも月間客数は387人——ケースAの1日60人に対し、こちらは1日あたり十数人です。お客さんの数ではなく、単価で売上をつくっているのが分かります。

理由は「コーヒーを売っていない」からです。売っているのは謎解きという体験で、飲み物はその一部にすぎません。だから原価も売上の1割程度に収まっています。

収益の柱を2本にする:ANELLA CAFEの内訳

項目数値
月間客数(平均的な店舗)500人
客単価1,200円
売上(給付金含む)414.7万円
原価16.6万円
家賃40万円
人件費112万円
広告宣伝費・消耗品27万円
ロイヤリティ(8%)33.2万円
その他(食費・送迎車両・システム等)45万円
加盟店オーナー利益134.9万円

こちらは客単価1,200円 × 500人=60万円。カフェとしての売上は60万円しかありません。それなのに売上欄は414.7万円です。差額は**障がい者就労支援B型の行政報酬(給付金)**です。つまり、カフェの飲食売上とは別に、もう1本の収益の柱がある構造になっています。

2つの実例が示していることは同じです。カフェ単体で手元を残すのは難しい。だから、単価を上げるか、収益の柱をもう1本持つか——利益が出ている店は、どちらかをやっています。

なお、上の金額はいずれも本部が公表しているモデルの数字であり、同じ結果が保証されるものではありません。また各項目は概算表記のため、費用を足し引きした額と利益額がぴったり一致しない場合があります。こういうときこそ、内訳の根拠を本部に直接聞くのが正しい進め方です。

契約・資金で、開業前に必ず確認しておくこと

フランチャイズを検討するなら、契約書にサインする前に、最低でも次の5点は確認しておきましょう。

  1. ロイヤリティの計算方法……定額か、売上歩合か。歩合だと売れるほど本部への支払いも増えます
  2. 契約期間と中途解約の違約金……何年縛りで、途中でやめるといくらかかるのか
  3. 加盟金以外に必要な費用……研修費・広告分担金・機材リース料・保証金など
  4. モデル数値の根拠……実店舗の実績なのか、あくまで机上の試算なのか
  5. 既存の加盟店に直接話を聞けるか……断られる場合は、その理由も含めて判断材料になります

資金面では、個人の開業でも使える補助金・助成金の制度があります。ただし公募の時期・要件・金額は毎年のように変わり、原則として「使ったあとにお金が戻る(後払い)」仕組みです。開業資金の当てにするのではなく、通ればラッキーくらいの位置づけで考えておくのが安全です。制度の最新情報は、必ず各自治体や公式サイトで確認してください。

まとめ:カフェオーナーの年収は、開業前の計算でほぼ決まる

  • カフェオーナーの年収は売上ではなく、原価・人件費・家賃・返済を引いて残った額で決まる
  • 売上が1.85倍になっても、手元は1.3倍にしかならないことがある。規模拡大は答えではない
  • FL比率(原価+人件費)は売上の60%以内、家賃は月商の10%以内が最初の目安
  • 飲食店の事業所数は全国499,193(全産業1位)。差別化の軸を決めてから物件を探す
  • 手元を残している実例は、客単価を上げるか、収益の柱をもう1本持つかをしている

金額・ロイヤリティ・補助金の条件は変わります。必ず各本部・各自治体の公式サイトで最新情報を確認してください。

そして相談のタイミングですが、いちばん多い後悔は「物件を契約したあとに相談に来ること」です。家賃が決まった時点で、必要な月商も、FL比率の余裕も、ほぼ決まってしまいます。「まだ何も決まっていない」段階こそが、いちばん相談の価値がある時期です。無料のLINE相談では、「この家賃なら月商いくら必要か」といった一次的な計算からお手伝いできます。もちろん、無理な勧誘はしません。

自分に合う開業スタイルから整理したい方は、開業診断から始めてみてください。

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