カフェは儲かるのか|見るべきは月商ではなく「手元に残る額」
「カフェは儲かるのか」と検索する人が本当に知りたいのは、たぶん売上の大きさではありません。毎月、自分の口座にいくら残るのかです。
ここを混同すると判断を間違えます。よくある3つの数字は、それぞれまったく別物です。
| 言葉 | 意味 | 家計でいうと |
|---|---|---|
| 月商(売上) | お店に入ってきたお金の総額 | 額面の給料 |
| 営業利益 | 売上から仕入れ・人件費・家賃などを引いた残り | 手取り給料 |
| 手元に残る額 | 営業利益からさらに借入返済・税金を引いた残り | 手取りから住宅ローンと税金を引いた残り |
月商400万円でも手元に残るのが月10万円ということはあり得ますし、月商100万円で20万円残ることもあります。「月商が大きい=儲かる」ではない。まずこの前提だけ持って、以下を読んでください。
飲食店は全国49万事業所|まず競争環境を数字で知る
カフェは、統計上は「飲食店」という業種に含まれます。その飲食店の全国の事業所数は、499,193事業所です。
- 全97産業のうち、事業所数で第1位
- 全事業所5,287,701のうち、**9.4%**が飲食店
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和3年経済センサス-活動調査」を加工して作成
これは「日本で一番よくある商売」ということです。開業のハードルが低い=始めやすいのは事実ですが、裏を返すと始めやすい商売は競合も多いということでもあります。
「事業所」とは、お店や事務所など、実際に営業している場所の単位のことです。会社の数ではなく、店舗の数に近いと考えてください。
つまりカフェで儲けるということは、この約50万の飲食店のなかで「あなたの店に行く理由」を作るということです。コーヒーが美味しいだけでは理由になりません。この点は後半のモデルケース②で、実データを使って具体的に見ていきます。
売上から手元に残るまで、5つの関門
売上100万円が入金されたとして、そこから何が引かれていくのか。順番に並べると5つの関門があります。
関門1|原価(材料費) コーヒー豆、牛乳、パン、食材など。飲食業では、原価は売上の3割前後を目安に管理することが多いとされます(業態によって大きく違います)。
関門2|人件費 自分以外にスタッフを雇う場合の給与。ここが読み違いの最大ポイントです。「自分が毎日12時間入る」前提の計画は、体調を崩した瞬間に破綻します。
関門3|家賃・水道光熱費 飲食店は電気とガスを大量に使います。家賃は一度契約すると、売上が半分になっても半分にはなりません。**固定費とは「売れなくても出ていくお金」**のことです。
関門4|ロイヤリティ・本部費用(フランチャイズの場合) 本部に払うお金です。この「決め方」が利益を大きく左右します。詳しくは後述します。
関門5|借入返済と税金 ここが初心者が一番落とす穴です。借りたお金の元金返済は、経費になりません。 帳簿の上では利益が出ているのに、返済で口座が空になる、ということが普通に起こります。税金も、利益に対してあとから請求が来ます。
利益が出ているのにお金がない状態を「黒字倒産」と呼びます。カフェで潰れる店の一定数は、味ではなくこの計算で潰れています。
モデルケース①:月商108万円のカフェを分解する
ここからは実在するブランドの公表値を使います。まずは体験型カフェの「ジェリーの謎解きカフェ」のモデルです。
| 項目 | 公表値 |
|---|---|
| 初期費用 | 610万円(0次募集は加盟金0円) |
| 加盟金 | 0円(0次募集時)※通常時は要確認 |
| ロイヤリティ | 席数×1,500円 + システム費3.3万円 + 謎解きキット770円/キット |
| モデル売上 | 月商108万円(44席想定) |
| 期間利益 | 月30万円〜 |
まず、月商108万円を作るには1日いくら売る必要があるのか。月30日営業なら、1日あたり36,000円です。これを客単価別に割り戻すと、必要な客数はこうなります。
| 客単価 | 1日に必要な客数 | 44席に対する回転数の目安 |
|---|---|---|
| 700円 | 約51人 | 約1.2回転 |
| 1,000円 | 36人 | 約0.8回転 |
| 1,500円 | 24人 | 約0.5回転 |
| 2,000円 | 18人 | 約0.4回転 |
「回転数」とは、1つの席が1日に何回お客さんに使われるかです。この表で分かるのは、客単価が上がるほど、必要な客数がはっきり減るということ。カフェの収益で一番効くのは「たくさん来てもらうこと」より「単価を上げる理由を作ること」です。謎解きという体験を売るモデルは、まさに客単価と滞在価値を上げにいく設計になっています。

次に、このモデルのロイヤリティを実際に計算してみます。44席なら、
- 席数分:44席 × 1,500円 = 66,000円
- システム費:33,000円
- 合計:月99,000円(謎解きキット代は使った分だけ別途)
月商108万円に対して約9.2%です。ここで大事なのは、この99,000円は売上が落ちても減らないという点。席数で決まるので、月商が50万円になっても99,000円のままです。つまり席数課金型のロイヤリティは、実質的に固定費に近い性質を持ちます。
そして初期費用610万円と月利益30万円から、投資回収の単純計算をしてみます。
610万円 ÷ 30万円 = 約20.3か月
ただしこれは、税金・借入返済・自分の生活費を一切引かない机上の計算です。実際にはここから関門5が待っています。仮に610万円のうち500万円を借入で、7年返済にしたなら、元金だけで月約6万円が利益から出ていきます。投資回収期間は「早い・遅い」ではなく「何を引いた後の数字か」で見てください。
モデルケース②:月商400万円台のカフェは何が違うのか
同じカフェでも、桁が変わるモデルがあります。保護犬猫カフェ×就労支援の「ANELLA CAFE」です。
| 項目 | 公表値 |
|---|---|
| 初期費用 | 1,100万円 |
| 加盟金 | 400万円 |
| ロイヤリティ | 売上の8% |
| モデル売上 | 月商400万円〜500万円 |
| 期間利益 | 月100万円〜 |
モデル①と比べると、月商はおよそ4倍。この差はコーヒーの味では説明できません。収益の柱が飲み物以外にもあるからです。保護犬猫との触れ合いという体験、そして就労支援という福祉事業の側面。飲食の売上だけに頼らない構造になっているため、単価と収益源の数が違います。
ここから分かる、カフェの儲けに関する一番重要な結論はこれです。
「カフェが儲かるか」ではなく「そのカフェが何を売っているか」で決まる。
飲み物だけを売るカフェは、席数×回転数×客単価という上限がはっきりある商売です。約50万の飲食店のなかで価格勝負に巻き込まれやすい。一方、体験・滞在・別事業を組み合わせたカフェは、その上限を外側に押し広げています。
なお、初期費用1,100万円は自己資金だけで用意する人のほうが少ない金額です。融資を使う場合、月100万円の利益からどれだけ返済に回るかを必ず先に計算してください。
ロイヤリティの「決め方」で儲かり方が変わる(他業種との比較つき)
フランチャイズを比べるとき、「ロイヤリティ◯%」という数字だけを横並びにしても意味がありません。決め方の型が違うからです。参考として、カフェ以外のブランドも並べて比較します。
| ブランド | ロイヤリティの決め方 | 型 | 売上が落ちたとき |
|---|---|---|---|
| ジェリーの謎解きカフェ | 席数×1,500円+システム費3.3万円 | 定額型 | 減らない(負担が重くなる) |
| ANELLA CAFE | 売上の8% | 変動型 | 一緒に減る |
| おそうじのえる | 売上の25% | 変動型(高率) | 一緒に減る |
- 定額型は、売上が伸びたときに本部への支払い比率が下がるので有利。逆に売上が落ちると重くのしかかります。
- 変動型は、悪い月に助かる代わりに、売上が伸びても比率は変わりません。
参考までに、カフェ以外の数字も見ておきます。ハウスクリーニングの「おそうじのえる」は、初期費用105万円〜、加盟金30万円〜(キャンペーン適用時。通常200万円)、モデル売上は月商132万円で手取り約82万円(利益率62%・オーナー1名稼働モデル)と公表されています。
ロイヤリティは25%と高率なのに、手元に残る比率はカフェより高い。理由は単純で、店舗を持たない商売だからです。家賃がなく、材料費が小さく、在庫を抱えない。カフェは逆に、家賃・内装・厨房設備・食材ロスという構造的なコストを最初から背負っています。
これは「カフェがダメ」という話ではありません。カフェは利益率で勝つ商売ではなく、場所と体験で勝つ商売だという話です。利益率だけを追うなら別の業種のほうが有利で、それでもカフェをやるなら、①単価を上げる理由 ②飲食以外の収益源、のどちらかは必ず要ります。
※金額はいずれも各本部の公表値です。時期やキャンペーンにより変動します。最新情報は必ず公式サイトおよび本部への確認でご判断ください。また、これらはモデルケースであり、収益を保証するものではありません。
契約前に確認したい5つの質問
数字を見比べたあと、実際に本部と話すときに聞くべきことを5つに絞りました。無料相談や説明会の場で、そのまま使ってください。
-
モデル売上は、何店舗の実績から作った数字ですか? 1店舗の好調例なのか、複数店舗の平均なのかで意味がまったく違います。
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モデル売上を下回っている店舗は、全体の何割ですか? 良い数字だけを出す本部か、悪い数字も見せる本部かがここで分かります。
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初期費用610万円/1,100万円に、何が含まれていませんか? 物件取得費、運転資金、生活費が別建てになっているケースは多いです。開業後3〜6か月分の運転資金を別に持っているかを必ず確認してください。
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ロイヤリティは、売上が半分になったときいくらですか? 定額型か変動型かを、金額で答えてもらいます。
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契約期間と、途中でやめる場合の条件は? 中途解約金、閉店時の原状回復費用(借りた状態に戻す工事の費用)まで聞いておきます。
このうち3と5は、聞かないまま契約して後から驚く人が多い項目です。答えを渋る本部があれば、それも判断材料になります。
なお、開業資金には日本政策金融公庫の融資や、自治体・国の補助金が使える場合があります。制度は年度ごとに内容が変わるため、必ず各制度の公式サイトで最新の要件を確認してください。
まとめ|カフェは儲かるのか、の答え
- カフェは全国約50万の飲食店という、最も競争の多い市場にある
- 月商だけ見ても判断できない。原価・人件費・家賃・ロイヤリティ・返済と税金の5つを引いた後が本当の数字
- 月商108万円のモデルでも、ロイヤリティは月99,000円と計算できる。席数課金型は売上が落ちても減らない
- 月商400万円台のカフェは、飲み物以外に収益の柱を持っている
- 利益率だけならカフェは有利な業種ではない。それでもやるなら「単価を上げる理由」か「飲食以外の柱」が要る
「儲かるカフェ」と「儲からないカフェ」を分けるのは、立地でも味でもなく、開業前にこの内訳をどこまで自分の手で計算したかだと思います。少なくとも、本部が出したモデル値をそのまま信じるのではなく、自分の想定家賃と想定人件費を入れて引き算し直すところまではやってください。
自分の条件だとどの業態が合うのか分からない、という段階なら、開業診断で3分ほど質問に答えると、資金規模と働き方から候補業種を絞れます。
数字の読み方で迷ったときは、無料のLINE相談も用意しています。「このモデル売上は現実的ですか」「この初期費用に運転資金は入っていますか」といった、契約前の素朴な確認だけでも構いません。急いで決める必要はないので、判断材料が足りないと感じたときにだけ使ってください。
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