開業の基礎

古着屋は儲かるのか|売上から手元に残るまでの内訳を数字で分解する

2026/8/17 更新

古着屋は儲かるのか|売上から手元に残るまでの内訳を数字で分解する

「好きな服に囲まれて働けて、しかも儲かるなら最高だ」——古着屋の開業相談で、最初に出てくる言葉はだいたいこれです。

ただ、実際に相談を進めていくと、多くの方が同じところでつまずきます。「月商いくらか」は考えているのに、「そこから何がいくら引かれて、最後に手元に何が残るのか」を計算していないのです。

この記事では、古着屋の売上が手取りになるまでを1行ずつ分解します。数字はすべて、あとで自分の条件に置き換えられるように「どういう前提で計算したか」を明示しました。

なお、この記事に出てくる古着屋の収支は編集部が一般的な小型店の条件をもとに組み立てたモデルであり、実在の特定店舗の決算ではありません。逆算した数字にはすべて「(編集部逆算)」と付けています。記事の後半では、開業ジャパン掲載ブランドの**リユース事業の実データ(本部公表値)**も載せますので、モデルと実データの両方を見比べてください。

結論:古着屋が儲かるかは「手取り月19万〜37万円」のレンジで考える

先に結論から出します。地方の15〜20坪、店主1人(+繁忙時アルバイト)で回す古着屋を想定した場合、手元に残るお金は月19万〜37万円あたりが現実的なレンジです(編集部逆算)。

項目Aケース:月商60万円Bケース:月商100万円Cケース:月商150万円
月商60万円100万円150万円
粗利(粗利率65%想定・編集部逆算)39万円65万円97.5万円
家賃10万円12万円15万円
水道光熱・通信3万円4万円5万円
キャッシュレス決済手数料(3.5%想定)2.1万円3.5万円5.3万円
消耗品・タグ・EC送料2万円4万円6万円
広告・SNS運用費1万円3万円5万円
アルバイト人件費0円8万円20万円
保険・雑費・その他2万円3万円4万円
差引=手元に残る金額(編集部逆算)約18.9万円約27.5万円約37.2万円
※この行の条件借入返済前/税金・社会保険料を引く前/自分の人件費は含まず同左同左

この表で一番見てほしいのは、月商が60万円から150万円へ2.5倍になっても、手元に残る金額は約1.97倍にしかならないという点です。

理由は単純で、売上が増えるとアルバイト・広告・送料・決済手数料も一緒に増えるからです。売上を伸ばすこと自体は正しいのですが、「月商が倍になれば生活が倍楽になる」わけではない、というのが古着屋の収益構造です。

そして表の一番下の行が重要です。この金額は借入の返済をする前、税金と国民健康保険料・国民年金を払う前、そして自分の給料を引く前の数字です。つまり、この18.9万円や27.5万円の中から、返済も税金も生活費も出していくことになります。

たとえばBケース(月商100万円)で、開業時に500万円を7年返済で借りていたとすると、月の返済は元金だけでおよそ6万円。残りは約21.5万円です。ここから所得税・住民税・国民健康保険料・国民年金を払うと、生活に回せるのは月15万円前後という計算になります(編集部逆算)。

内訳分解:月商100万円の古着屋から、お金が消えていく順番

Bケース(月商100万円)を、お金が出ていく順番に並べ直します。

1番目:仕入れ原価(月35万円/編集部逆算)

古着屋の粗利率を65%と置いたので、原価は35%です。古着の仕入れには大きく3つのルートがあります。

  • 海外からのベール仕入れ:ベールとは、古着を圧縮して大きな塊にした梱包単位のこと。1つ数十kg単位で、中身を全部は選べません。単価は安いが「当たり外れ」が出ます
  • 国内の業者市場・オークション:中身を見て買えるぶん単価は上がります
  • 一般のお客さんからの買取:一番安く仕入れられますが、店の知名度と買取のノウハウが要ります

原価率が35%で済むかどうかは、この3ルートの比率でほぼ決まります。ベール中心なら原価は下がりますが、売れない服(廃棄になる服)の比率が上がるので、実質の原価率は表示価格より高くなる点に注意してください。

2番目:家賃(月12万円)

古着屋は「安く仕入れて、時間をかけて売る」商売です。家賃は売れても売れなくても毎月同額出ていくので、固定費の中で最も危険な項目になります。月商100万円に対して家賃12万円は、家賃比率12%。小売業では家賃比率10%以下が一つの目安とされますが、古着屋は坪あたりの陳列点数が多く取れるので、立地と広さのバランス次第です。

3番目:人件費(月8万円)

店主1人だと定休日以外は基本的に休めません。週1日休みを入れるだけでもアルバイトが必要になり、時給1,100円×6時間×週2日で月約5.3万円。ここに繁忙期を足して8万円と置いています(編集部逆算)。

4番目:見落とされがちな細かい費用

  • キャッシュレス決済手数料:売上の3〜3.6%程度。月100万円なら3.5万円前後
  • EC(オンライン販売)を併用する場合の販売手数料と送料
  • ハンガー、タグ、値札、袋、什器の補充
  • 商品のクリーニング・消臭・リペア代
  • 火災保険、店舗賠償責任保険

古着屋の売上が手元に残るまでの内訳

そして表に出てこない最大の支出があります。それが「在庫」です。

損益計算上、仕入れた服のうち「売れた分」だけが原価になります。売れ残った服は帳簿上「資産」です。ところが現実には、お金は仕入れた瞬間に全部出ていっています。

つまり「今月は利益が出た」と帳簿に書いてあっても、財布の中身は増えていない、ということが古着屋では普通に起きます。決算で黒字なのに資金がショートする、いわゆる黒字倒産の典型的な入り口がここです。

下振れ条件:この4つが重なると手取りはゼロに近づく

上のレンジは、あくまで「順調に回っている場合」です。手取りが下振れする条件を、影響の大きい順に並べます。

下振れ条件何が起きるか手取りへの影響(Bケース基準・編集部逆算)
①仕入れ原価率が35%→45%に上がる円安・海外の古着相場上昇・買取の競合激化粗利が10万円減 → 手取り約17.5万円
②在庫回転が落ちる(売れ残り比率上昇)現金が服に変わったまま戻らず、次の仕入れができない帳簿の利益は残るが現金が回らない
③客数が2割落ちる天候不順、近隣の大型店出店、SNSの反応低下月商80万円 → 手取り約20万円
④家賃の高い物件を選んだ駅前・大通り沿いで家賃20万円固定費8万円増 → 手取り約19.5万円

①と③が同時に起きるケースが一番多いというのが、相談を受けていての実感です。仕入れ値が上がったので売価を上げる → 客数が落ちる、という連鎖です。

古着は「同じ商品がもう1枚ない」一点物が中心なので、価格を上げても在庫を積み増して補うことができません。ここが新品アパレルとの決定的な違いです。

季節の谷も無視できません。古着屋は衣替え直前(3月・9月)に売上が立ち、真夏(8月)と真冬明け(2月)に落ちる波があります。年間の資金繰り表を作るときは、この2つの谷月を最初から赤字前提で組んでおくと安全です。

古着屋だけにある落とし穴:許可・ベール・値付け

ここからは、他の小売業にはない古着屋固有の論点です。

(1)古物商許可がないと1着も仕入れられない

中古品を買って売る商売には、古物商許可(都道府県公安委員会の許可)が必要です。これは「開業してから取ればいい」ものではなく、許可が下りる前に買取をすると法律違反になります。

申請は営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課が窓口で、審査には一般に1か月以上かかります。必要書類・手数料・審査期間は都道府県ごとに扱いが異なるため、最新情報は必ず所轄警察署または各都道府県警察の公式サイトで確認してください。

物件を借りてから許可を待つと、その間の家賃がまるまる持ち出しになります。物件契約と許可申請のスケジュールを重ねておくのが実務上のコツです。

(2)ベール仕入れは「賭け」ではなく「歩留まり計算」で見る

ベール1つ(仮に80kg・15万円)から、実際に店頭に出せる服が何着で、そのうち何着が3か月以内に売れるか。これを歩留まりと呼びます。

歩留まりが7割なら原価率は計算通りですが、5割なら実質原価は1.4倍になります。初回は必ず小ロットで試し、歩留まりを自分で測ってから量を増やす。この順番を逆にして、いきなり大量仕入れをして在庫の山を抱える——というのが、古着屋の資金繰り失敗で最も多いパターンです。

(3)値付けと回転のジレンマ

古着は「安くすればすぐ売れる」商品です。しかし安売りすれば粗利率65%は維持できません。かといって高値で置き続ければ、在庫は現金に戻りません。

実務では、入荷から60日・90日で値下げする社内ルールを最初に決めておくのが定石です。ルールがないと、店主が「この服は良いものだから」と値下げを先送りし、在庫だけが増えていきます。

(4)EC併売は「利益率が下がる」前提で

メルカリやネットショップの併売は在庫回転を上げる有効な手段ですが、販売手数料(おおむね10%前後)と送料・梱包・撮影の手間が乗ります。店頭より粗利率が10ポイント以上下がる前提で、あくまで「在庫を現金に戻す出口」として使うのが現実的です。

実データで見る:「売る側」ではなく「買う側」に立つという選択肢

ここまで古着屋の数字は編集部の逆算モデルでした。参考として、同じリユース(中古品売買)分野で、本部が数字を公表しているブランドの実データを載せます。古着屋の店売りとはビジネスモデルが異なりますが、「在庫と店舗をどう扱うか」で収益構造がどれだけ変わるかがよく分かる比較材料です。

不用品買取119番(リサイクル・買取/無店舗・訪問買取型)

項目金額(本部公表値)
初期費用の合計750万円
├ 加盟金100万円
├ 研修費100万円
├ 仕入金200万円
└ 備品(車両代含む)120万円
ロイヤリティ粗利の10%
モデル月商500万円
モデル営業利益月215万円
黒字化まで初月
投資回収4か月

出典:開業ジャパン掲載ブランド情報(不用品買取119番、2026年8月14日時点)。金額は本部の公表値であり、時期や条件により変動します。また、モデル数値は収益を保証するものではありません。

古着屋のモデルと並べると、違いがはっきりします。

  • 家賃がない:店舗を持たない訪問買取型なので、固定費の中で一番重い家賃が構造的にゼロになります
  • ロイヤリティが「粗利の10%」:売上ではなく粗利にかかる方式です。売上比のロイヤリティだと、原価が上がったときに本部への支払いだけが残りますが、粗利比なら仕入れが高くついた月は支払いも下がります。契約書のこの1行の違いが、悪い月の手残りを大きく変えます
  • 初期費用は逆に重い:750万円は、地方の小型古着屋(物件取得+内装+初期在庫で300万〜500万円程度が一つの目安・編集部逆算)より大きい。「無店舗=安い」とは限りません

なお、この事業も古物商許可が必要な点は古着屋とまったく同じです。ブランド側の確認事項にも「古物商許可の取得サポート」が挙げられています。中古品を扱う以上、許可は避けて通れません。

背景:古着屋が属する市場の大きさ

最後に、市場の規模だけ簡潔に確認しておきます。

古着屋が含まれる**「繊維・衣服等の身の回り品小売業」の全国の事業所数は113,470事業所**。全97産業中14位で、全事業所5,287,701のうち2.1%を占めます(出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和3年経済センサス-活動調査」を加工して作成)。

11万を超える事業所があるということは、すでに競合が多く、かつ廃業と新規開業が常に起きている市場だということです。市場が小さすぎて成立しない業種ではありませんが、「空いている市場を見つけた」タイプの参入でもありません。

なお、家賃と人件費の固定費比率をどう見るか、原価率と人件費を合算して管理する考え方(FL比率)といった小売・サービス業に共通する収支の読み方は、開業ジャパンのブログ一覧にある収益系の記事で共通解説としてまとめています。この記事では古着屋固有の論点に字数を割きました。

開業前に、自分で埋めるべき5つの数字

この記事のモデルは、あくまで「他人の条件」です。判断に使えるようにするには、次の5つを自分の条件で埋めてください。

  1. 候補物件の家賃と、想定月商に対する比率(10〜12%を超えるなら、月商をその分上げられる根拠があるか)
  2. 仕入れルート別の原価率(ベール/業者市場/店頭買取の比率を決め、初回は小ロットで歩留まりを実測する)
  3. 在庫に寝かせられる現金の上限(これを超えたら値下げしてでも現金化する、というラインを先に決める)
  4. 借入額と毎月の返済額(手取りレンジからこれを引いて、生活費が残るか)
  5. 売上がゼロでも耐えられる月数(固定費の6か月分を運転資金として確保できているか)

この5つのうち3つ以上を数字で答えられないうちは、物件の契約を急がないほうがいい、というのが正直なところです。

まとめ

  • 地方の小型古着屋で手元に残るのは月19万〜37万円のレンジ(編集部逆算・返済前/税前/自分の人件費含まず)
  • 月商が2.5倍になっても手取りは約2倍まで。売上増に伴って人件費・広告・手数料も増えるため
  • 一番の下振れ要因は仕入れ原価率の上昇と在庫の滞留。帳簿が黒字でも現金が回らない事態が起きやすい
  • 古物商許可は仕入れ前に必要。物件契約と申請のスケジュールを重ねること(最新の要件は所轄警察署・都道府県警察の公式サイトで確認)
  • 同じリユース分野でも、店舗を持たない買取型は収益構造がまったく違う(初期費用750万円・投資回収4か月・ロイヤリティは粗利の10%/本部公表値)

数字の前提を変えたときに手取りがどう動くかを一緒に確認したい方は、無料LINE相談もあります。「この家賃で成り立ちますか」「この原価率は現実的ですか」といった1点だけの確認でも構いません。急いで決める必要はないので、判断材料が足りないと感じたときにだけ使ってください。

自分に合うのは自分で仕入れる古着屋なのか、それとも本部のノウハウを使うリユース系フランチャイズなのか——両方の収支を並べて比べたい方は、フランチャイズ一覧から実際の初期費用とロイヤリティを見比べてみてください。

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