開業前の準備

収支シミュレーション表の使い方|月次12ヶ月で黒字化の月を見つける

2026/8/18 更新

収支シミュレーション表の使い方|月次12ヶ月で黒字化の月を見つける

収支シミュレーション表とは?まずは「6行だけ」で作る

収支シミュレーション表とは、開業後にお金がどう出入りするかを月ごとに並べた表のことです。事業計画書に付けたり、日本政策金融公庫などに融資を申し込むときに提出したりします。

難しく考える必要はありません。最低限、次の6行があれば表として成立します。

行中身書き方のコツ
①売上その月に入るお金1ヶ月目から満額にしない
②変動費売上に比例して増える費用(材料・燃料・処分費など)売上の◯%で置く
③ロイヤリティフランチャイズ本部に払う費用契約書の計算方法どおりに
④固定費売上に関係なく毎月出るお金(家賃・車両・保険・通信・広告)一番先に確定できる
⑤営業利益①−②−③−④ここが「単月の黒字」
⑥累計⑤を1ヶ月目から足していった額開業資金をマイナスで置いてスタート

ポイントは⑥です。多くの人が⑤だけを見て「3ヶ月目から黒字」と判断しますが、開業に使ったお金はまだ戻っていません。⑥をマイナススタートにするだけで、表の意味が変わります。

実例で作る:お掃除のえるの数字を12ヶ月に並べる

数字が空欄のままでは練習になりません。ここでは実在ブランドの公表値を使います。

お掃除のえる(お掃除・お庭サービス/株式会社ノエル)の本部公表値は次のとおりです。

項目金額
初期費用105万円〜
加盟金30万円〜(キャンペーン適用時/通常200万円)
ロイヤリティ売上の25%
モデル売上月商132万円/手取り約82万円(利益率62%・オーナー1名稼働モデル)

※本部公表値。時期により変動します。最新情報は公式サイトおよびブランドページで確認してください。 ※この手取り額は返済前・税引き前・自分の人件費を含まない数字です。ここを勘違いすると表全体がずれます。

月商132万円で手取り82万円ということは、費用の合計は約50万円。うちロイヤリティが25%=33万円なので、残る費用は約17万円です。**(編集部逆算)**として、変動費を売上の5%、固定費(車両・保険・通信・広告など)を月10万円と置くと、

営業利益 = 売上 ×(100% − 25% − 5%)− 10万円 = 売上 × 0.7 − 10万円

という一本の式になります。132万円を入れると 92.4 − 10 = 約82万円。本部のモデルとほぼ一致します。この式を12ヶ月に並べます。

事業計画と収支表を作るイメージ

売上は1ヶ月目から満額にせず、少しずつ増える形にします(以下すべて編集部の作例であり、この売上が上がることを保証するものではありません)。

月売上営業利益累計(初期費用105万円を差し引いた残高)
115万+0.5万−104.5万
225万+7.5万−97.0万
330万+11.0万−78.0万
440万+18.0万−60.0万
545万+21.5万−38.5万
655万+28.5万−10.0万
765万+35.5万+25.5万
875万+42.5万+68.0万
985万+49.5万+117.5万
10100万+60.0万+177.5万
11115万+70.5万+248.0万
12132万+82.4万+330.4万

黒字には3種類ある — どれを「黒字化の月」と呼ぶか

同じ表から、3つの違う「黒字化の月」が読み取れます。

  1. 単月黒字…その月だけで見て利益がプラスになる月。上の式では 売上 × 0.7 = 10万円、つまり月商約14万円を超えた時点。表では1ヶ月目からすでに達成しています。
  2. 累積黒字(投資回収)…開業に使ったお金を取り戻した月。表では7ヶ月目。
  3. 生活できる黒字…オーナー自身の生活費を払ってなお残る月。ここが本題です。

3つ目を無視した表は、必ず後で破綻します。手取り82万円は「オーナーの取り分」であって給料ではありません。生活費を月30万円と置いて引き直すと、景色が変わります。

月生活費30万円を引いた月次累計残高
1−29.5万−134.5万
2−22.5万−157.0万
3−19.0万−176.0万
4−12.0万−188.0万
5−8.5万−196.5万
6−1.5万−198.0万
7+5.5万−192.5万
8+12.5万−180.0万
9+19.5万−160.5万
10+30.0万−130.5万
11+40.5万−90.0万
12+52.4万−37.6万

生活費まで賄えるようになるのは7ヶ月目。そして12ヶ月経ってもまだ累計はマイナスです。

表の本当の使い道は「一番深く沈む月」を見つけること

上の表で注目すべきは、累計残高が 6ヶ月目に−198万円で底を打つことです。

この谷底の金額が、開業までに用意しておくべき現金です。この作例なら初期費用105万円だけでは足りず、運転資金(開業後、売上が育つまでの生活費と経費)としてさらに約95万円、合計200万円前後が必要になります。

「黒字化は何ヶ月目か」より、「一番深く沈むのはいつ、いくらか」。収支シミュレーション表は本来、この1点を出すための道具です。

悲観シナリオをもう1本作る(売上2割減)

表は1本では使えません。売上だけを0.8倍にした2本目を必ず作ります。同じ式で計算すると、

  • 谷底は 7ヶ月目・−231万円(約33万円深くなる)
  • 底を打つ月が1ヶ月後ろにずれる
  • 生活費を賄えるようになるのは8ヶ月目

売上が2割落ちるだけで、必要な現金は30万円以上増え、我慢する期間も1ヶ月延びます。用意する資金は、楽観シナリオではなく悲観シナリオの谷底に合わせるのが原則です。

よくある3つの間違い

間違いどうなるか直し方
1ヶ月目からモデル売上を入れる谷が見えず、資金不足に気づけない1ヶ月目はモデル売上の1〜2割から始める
自分の給料を費用に入れていない「黒字なのに生活が回らない」状態になる生活費の行を必ず1行足す
借入の返済を書いていない返済が始まった月に急に現金が減る元金+利息を毎月の固定費に入れる

とくに3つ目は融資を受ける人ほど要注意です。営業利益は返済を引く前の数字なので、返済額を入れると黒字化の月が数ヶ月後ろへずれます。

今日30分でできる作り方(手順)

  1. 表計算ソフト(ExcelやGoogleスプレッドシート)を開き、横に1〜12ヶ月の列を作る
  2. 縦に前述の6行+「生活費」「借入返済」の8行を置く
  3. 固定費から埋める。家賃・車両・保険・通信・広告など、金額が決まっているものが一番簡単
  4. 変動費とロイヤリティは「売上×◯%」の計算式で入れる(手打ちしない)
  5. 売上の行だけを、1ヶ月目から12ヶ月目にかけて少しずつ増える形で入力する
  6. 累計の行の1ヶ月目に、開業資金をマイナスで入れて足していく
  7. 売上の行を丸ごと0.8倍にしたシートを複製し、谷底の金額を比べる

売上の行以外はすべて計算式にしておくと、売上を変えるだけで全体が動きます。これで「いくら足りないか」が数字で出ます。

まとめ

  • 収支シミュレーション表は、6行+生活費+返済の8行で足りる
  • 黒字には単月・累積・生活費込みの3種類があり、判断すべきは3つ目
  • 表の一番の成果は「累計が一番深く沈む月と金額」=用意すべき現金
  • 売上を2割落とした悲観シナリオを必ずもう1本作る

作例で使った数字は、あくまで公表値をもとにした一例です。業種・立地・稼働時間が変われば、谷の深さも位置も変わります。

自分の想定で表を作ってみて「この谷底の金額で足りるのか自信がない」というときは、無料LINE相談で作った表をそのまま見せていただければ、抜けている行がないか一緒に確認します。もちろん、まずは自分に合う業種の当たりをつけたい段階でも構いません。

どの業種で表を作るか決まっていない方は、開業診断から向いている開業タイプを絞り込んでから、その業種の数字で表を組んでみてください。

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