開業前の準備

民泊経営で失敗する人の共通点|月商48万円で手残り13万円という現実と、契約前に見抜く方法

2026/8/28 更新

民泊経営で失敗する人の共通点|月商48万円で手残り13万円という現実と、契約前に見抜く方法

「インバウンドが伸びているから、民泊は今がチャンス」——そう聞いて調べ始めた方は多いと思います。実際、外国人旅行者は増えていますし、家を1室借りて貸すだけならリスクも小さそうに見えます。

ただ、開業相談の現場で見ていると、民泊の経営で失敗する人には、驚くほどはっきりした共通点があります。しかもそれは「立地が悪かった」「運が悪かった」といった話ではありません。契約書にサインする前の、数字の見方の段階で決まっています。

この記事では、実際のフランチャイズ本部が公表している月別収支データをそのまま分解しながら、どこで失敗が起きるのか、そして契約前に何を確認すれば見抜けるのかを整理します。


民泊の経営で失敗する人は、ほぼ全員「売上」で判断している

先に結論から書きます。民泊は、売上の7〜8割が手元を通り過ぎていく商売です。

実在する民泊ブランド2社が公表している数字を、同じ形で並べてみます。

虎宿(民泊事業・マレーシア)LEON RESORT(民泊ホテル・国内)
月間売上48万3,375円(平均的な月)90万円(1年後・単価4.5万円×20件)
返済前・税前に残る額13万2,756円20万円
借入の返済後本部未公表本部未公表
自分の人件費の扱い運営を本部に完全委託。オーナーの実働は物件を借りることが中心(本部公表)キーボックス+リモート対応の無人運営。清掃管理はロイヤリティに含む(本部公表)
手残り率約27.5%(編集部逆算)約22.2%(編集部逆算)
初期費用350万円〜(備品・運営準備金270万円+敷金80万円)400〜800万円前後(うち加盟金150万円)
投資回収の目安約2年(本部公表)おおよそ3〜4年(本部公表)

※金額は本部公表値。時期や物件条件により変動します。最新情報は各公式ページでご確認ください。

数字を見て、どう感じたでしょうか。

月商90万円と聞くと大きく感じます。でも、オーナーの手元に残るのは20万円です。月商の数字だけを見て「これならいける」と判断した人が、あとで「聞いていた話と違う」と言う——これが失敗パターンのほぼすべての入口です。

しかも上の表の「返済前・税前」という但し書きが重要です。ここから借入の返済も、税金も、まだ引かれていません。


月商48万円が手残り13万円になるまで、実際の内訳

なぜ7割以上が消えるのか。虎宿が公表している「平均的な月」の収支を、そのまま並べます。

項目金額売上に対する比率(編集部逆算)
月間売上48万3,375円100%
手数料(予約サイト掲載料等)▲11万5,176円23.8%
固定費(家賃・通信費等)▲21万7,745円45.0%
その他(水道光熱費・消耗品費等)▲1万7,698円3.7%
手残り13万2,756円27.5%
年間の最終手残り161万761円—

ここで注目してほしいのは、上から2つの費目だけで売上の約7割が消えていることです。

予約サイト手数料は「必ず」かかる

Airbnb や Booking.com といった予約サイトを使うと、掲載手数料が発生します。上の例では売上の約24%。LEON RESORT のシミュレーションでも、予約サイト手数料は15%で計算されています。

これは値切れる費用ではありません。「自分のサイトで直接集客すれば手数料ゼロ」と考える人もいますが、初年度から個人が海外の旅行者を直接集められるケースはまれです。手数料は最初から固定でかかるものと考えて計算してください。

家賃は、泊まる人がゼロでも出ていく

固定費の中心は家賃です。売上の45%を占めています。

民泊は「借りた部屋を旅行者に貸す」ビジネスなので、当然、自分が大家さんに払う家賃があります。そして家賃は、その月の予約が1件でもゼロ件でも、同じ額が出ていきます。ここが、失敗が生まれる本当の場所です。

民泊の売上と手残りの内訳イメージ

ロイヤリティが乗るケースもある

フランチャイズに加盟する場合は、ここにロイヤリティ(本部に払う継続的な手数料)が加わります。LEON RESORT の場合は総売上の20%(予約管理・価格調整・清掃管理を含む)。

つまり LEON RESORT のモデルでは、予約サイト手数料15%+ロイヤリティ20%=売上の35%が、売上に比例して自動的に出ていく構造です。

このロイヤリティを「高い」と見るか「妥当」と見るかは、中身次第です。同社の場合は価格調整や清掃管理まで含まれているので、自分でやる手間と外注費が消えているとも言えます。ここは金額だけでなく、何が含まれていて、何が別料金なのかを必ず確認してください。


失敗は「良い月」ではなく「悪い月」で決まる

民泊は季節や為替で稼働が大きく揺れます。虎宿の本部資料には、売上の良い月・平均的な月・悪い月の3パターンが載っています。ここが今回いちばん重要な数字です。

悪い月平均的な月良い月
売上40.3万円48.3万円56.3万円
返済前・税前に残る額7.1万円13.3万円19.4万円
借入の返済後本部未公表本部未公表本部未公表
自分の人件費の扱い運営完全委託のため実働なし(本部公表)同左同左
手残り率(編集部逆算)約17.6%約27.5%約34.5%

売上を見比べると、悪い月と良い月の差は 16万円(約1.4倍) です。

ところが手残りは、7.1万円と19.4万円で 約2.7倍 の差がつきます。

これが民泊という商売の一番怖い性質です。売上のブレは1.4倍でも、手残りのブレは2.7倍になる。 家賃という固定費が、下振れしたときに手残りを一気に押しつぶすからです。

損益分岐点を自分で出してみる

上の内訳から、赤字に転落する売上ラインを逆算してみます。

  • 虎宿(編集部逆算):変動費率を約23.8%、固定費+その他を約23.5万円とすると、月商およそ31万円を割ると赤字圏
  • LEON RESORT(編集部逆算):変動費率35%(予約サイト15%+ロイヤリティ20%)、固定費を約35万円とすると、月商およそ54万円を割ると赤字圏

言い換えるとこうなります。

平均的な月から売上が3〜4割落ちたら、その部屋は赤字になる。

インバウンドの端境期、近隣に新しい宿ができたとき、為替が動いたとき、口コミが1件荒れたとき。3〜4割の下振れは、決して珍しい話ではありません。

契約前に確認すべきは「いくら儲かるか」ではなく、「いくらまで落ちても耐えられるか」です。


撤退理由で多いのは「儲からない」より「続けられない」

編集部に届く民泊の相談で、撤退の理由として挙がりやすいものを整理すると、金額の問題より「そもそも続けられなくなった」タイプが目立ちます。

撤退の引き金何が起きるか契約前に防げるか
転貸(又貸し)の許可がなかった大家さんから契約違反を指摘され、退去せざるを得ない◎ 防げる
マンションの管理規約で民泊が禁止だった管理組合から中止を求められる◎ 防げる
営業日数の上限に引っかかった年の途中で貸し出せなくなり売上が止まる◎ 防げる
近隣からの苦情(騒音・ゴミ・出入り)行政への通報、営業自粛、大家さんとの関係悪化○ 減らせる
清掃とゲスト対応が本業を圧迫本業の収入まで落ちて続けられなくなる○ 設計次第
稼働が落ちても家賃が固定で出続ける手残りが消え、貯金を取り崩す状態に○ 分岐点を知っていれば予測できる

注目してほしいのは、上の3つが**すべて「契約書と規約を読めば、開業前に100%わかること」**だという点です。

つまり民泊の失敗の多くは、運や実力ではなく、確認漏れで起きています。

特に多いのが「転貸の許可」

民泊のいちばん手軽な始め方は、部屋を借りて旅行者に又貸しする方式です。LEON RESORT が「賃貸→転貸方式なら家賃10万円台から小さく始められる」としているのもこの形で、購入しないぶん、うまくいかなかったときに撤退しやすいという利点があります。

ただし、又貸しには大家さんの承諾が必要です。普通の賃貸借契約書には、たいてい「転貸禁止」と書かれています。

ここを口約束で進めてしまい、あとから「そんな話は聞いていない」となるケースが後を絶ちません。承諾は必ず書面で。これだけで撤退理由の1つを丸ごと消せます。


日本で民泊をやるなら、避けて通れない3つのルール

海外物件を扱う虎宿が「マレーシアは許認可が不要で、約2週間で運営を開始できる」と強調しているのは裏を返せば、日本の民泊は法律の縛りが強いということです。国内でやるなら、ここは必ず押さえてください。

1. 住宅宿泊事業法(民泊新法)——年間180日まで

2018年に施行された、住宅を宿泊に使うための法律です。自治体への届出をすれば始められますが、1年間に泊められる日数は180日が上限です。

これは「半分の期間は売上がゼロになる」という意味です。年間の収支を計算するときに180日を前提にしていないと、絵に描いた餅になります。自治体によっては、条例でさらに厳しい制限(平日は営業不可など)がかかることもあります。

2. 旅館業法の簡易宿所——日数制限はないが、要件が重い

年間の日数制限なしで営業したい場合は、旅館業法の「簡易宿所」の許可を取る道があります。ただし用途地域(その土地に建てていい建物の種類の決まり)、消防設備、フロント機能の代替など、求められる条件が上がり、内装工事の費用も膨らみます。

3. 管理規約と用途地域

分譲マンションの場合、管理規約で民泊が明確に禁止されていることが多くあります。また土地の用途地域によっては、そもそも宿泊施設を営業できません。

※制度は改正されることがあります。日数や手続きの最新情報は、必ず観光庁および物件所在地の自治体の公式サイトでご確認ください。


契約前に見抜く方法:サインの前に必ず聞く7つの質問

ここまでの内容を、そのまま使えるチェックリストにします。この7つに書面で答えが返ってこないなら、契約は待ってください。

#質問確認する相手OKの基準
1転貸(民泊利用)の承諾を書面でもらえますか大家・管理会社契約書または承諾書に明記
2この建物の管理規約に民泊の禁止条項はありますか管理組合・管理会社規約の現物を確認
3届出は新法(180日)ですか、旅館業許可ですか自治体・本部年間の営業可能日数が確定する
4悪い月の売上はいくらで、そのとき手残りはいくらですか本部良い月ではなく悪い月の数字が出てくる
5ロイヤリティに何が含まれ、何が別料金ですか本部清掃・リネン・広告費の扱いが明確
6撤退するときの費用はいくらですか本部・大家原状回復・家具処分・違約金の合計
7実際に撤退した加盟店はありますか、理由は何ですか本部「ゼロです」と即答する本部は要注意

特に4番と7番が効きます

4番「悪い月の数字」を聞いたとき、良い月の話しか返ってこない本部は、判断材料としては不十分です。逆に虎宿のように、悪い月・平均・良い月の3パターンを最初から出してくる本部は、情報開示の姿勢としては誠実だと言えます。数字が良いかどうか以前に、悪い数字を出すかどうかを見てください。

7番も同じです。どんなビジネスにも撤退した人はいます。「一度もありません」より、「こういう理由で撤退した方がいます」と具体的に説明できる本部のほうが、あとで話が食い違いません。

6番の撤退費用は、見落とされがち

やめるときにもお金がかかります。原状回復、家具家電の処分、賃貸契約の違約金。LEON RESORT のシミュレーションでは家具家電に130万円が計上されていますが、これは撤退時にそのまま資産として回収できるものではありません。入るときの金額と同じ熱量で、出るときの金額を聞いてください。


数字の背景:宿泊業はそもそもどれくらいの規模か

最後に、市場の大きさも押さえておきます。

日本の宿泊業の事業所数は全国で45,327事業所です。全597産業のうち32位で、全事業所5,287,701のうち0.9%にあたります。

出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和3年経済センサス-活動調査」を加工して作成

0.9%という数字は、「巨大ではないが、確実に成立している業界」くらいの位置づけです。参入余地がないほど飽和しているわけでもなければ、誰でも儲かる空白市場でもありません。だからこそ、平均で勝つのではなく、自分の物件の損益分岐点で勝てるかどうかが問われます。


向いている人・向いていない人

ここまでの内容をふまえて、率直に整理します。

向いている可能性がある人

  • 実家の空き家、相続した物件、自社で持て余している遊休物件がすでにある(家賃という最大の固定費が最初から軽い)
  • 本業の収入があり、悪い月が数か月続いても生活が揺らがない
  • 「月13万円」「月20万円」という手残りの規模感に納得できる
  • 賃貸管理や不動産の実務経験があり、契約書と規約を自分で読める

慎重になったほうがいい人

  • 借入だけで初期費用を用意し、初月から返済が始まる
  • 手残りを本業の収入の代わりにする前提で計算している
  • 清掃やゲスト対応を「自分がやれば費用ゼロ」と考えている(自分の時間はタダではありません)
  • 良い月の数字だけで年間収支を組み立てている

とくに1つ目の「すでに物件がある」は決定的です。上の内訳表で売上の45%を占めていた家賃が軽くなるだけで、損益分岐点は大きく下がります。民泊を新しく始めるより、いま持っている資産を活かす形のほうが、失敗の確率は構造的に低くなります。


まとめ:見るべきは月商ではなく、分岐点

  • 民泊の手残りは売上の2〜3割。月商48万円で手残り13万円、月商90万円で手残り20万円が実データ
  • 売上のブレが1.4倍でも、手残りのブレは2.7倍になる。固定費(家賃)がある以上、下振れの打撃が大きい
  • 平均的な月から3〜4割の下振れで赤字圏に入る(編集部逆算)。ここが本当の判断ラインです
  • 撤退理由の上位は「転貸の無許可」「管理規約違反」「営業日数の上限」——すべて契約前に確認できること
  • 本部には「悪い月の手残り」と「撤退した加盟店の理由」を必ず聞く

民泊は、仕組みを理解して入れば、物件を借りるだけで収益源になり得るビジネスです。実際に虎宿は約2年、LEON RESORT は3〜4年という投資回収の目安を公表しています。危険なのは民泊そのものではなく、良い月の数字だけを見て契約してしまうことです。

今回取り上げた2ブランドの詳細な収支や条件は、それぞれのページで確認できます。

他の業種や条件と見比べたい方は、フランチャイズ一覧から初期費用やロイヤリティで絞り込んで比較できます。

なお、「この物件で損益分岐点はいくらになるか」「この契約書の転貸条項は大丈夫か」といった個別の話は、記事だけでは判断が難しい部分です。もし手元に具体的な物件や資料があるなら、開業ジャパンの無料LINE相談で数字の見方だけ確認していく、という使い方もできます。急いで決める必要はまったくないので、契約書にサインする前の確認先として頭の片隅に置いておいてください。

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