資金調達

資金繰り表の作り方|黒字なのに現金が尽きる事故を防ぐ5ステップ

2026/8/20 更新

資金繰り表の作り方|黒字なのに現金が尽きる事故を防ぐ5ステップ

「利益は出ているのに、月末の支払いができない」——開業して半年から1年のあいだに、いちばん多い相談です。

原因はたいてい経営の腕ではなく、現金がいつ入って、いつ出ていくかを紙に書いていなかったこと。それを1枚にまとめたものが資金繰り表です。この記事では、資金繰り表の作り方を5つのステップに分けて説明します。

資金繰り表の作り方の前に|黒字なのに現金が尽きる仕組み

多くの人が見ているのは「損益計算書(P/L)」です。1年でいくらもうかったかを見る表で、税金の計算に使います。資金繰り表はまったく別物で、手元の現金の残高だけを追いかけます。

損益計算書(P/L)資金繰り表
見るものもうけ(利益)手元の現金
書くタイミング売上・費用が確定した月現金が実際に動いた月
借入金の元本返済費用にならない(載らない)全額が出ていく
設備の購入減価償却で数年に分けて費用化買った月に全額出ていく
使いみち1年の成績表来月払えるかの確認

※減価償却=高い機械や車を、使う年数で分けて少しずつ費用にする会計のルール。

注目してほしいのは借入金の元本返済の行です。毎月10万円返していても、損益計算書には利息しか載りません。つまり「帳簿は黒字なのに現金だけが減る」状態が、ふつうに起きます。これが黒字倒産の正体です。

資金繰り表の作り方【5ステップ】

ステップ1|縦に並べる項目を決める

エクセルでもノートでも構いません。縦に次の5ブロックを並べます。

  1. 前月からの繰越現金(先月末に残っていたお金)
  2. 収入:現金売上/売掛金の回収(あとで振り込まれる売上)/借入金/補助金など
  3. 支出:仕入・外注費/家賃/人件費/ロイヤリティ/広告費/税金・社会保険料
  4. 借入金の元本返済(※支出とは別行にする。忘れやすいため)
  5. 翌月への繰越現金

ステップ2|計算式は1本だけ

前月繰越 + 収入合計 − 支出合計 = 翌月繰越

これだけです。翌月繰越がそのまま次の月の「前月繰越」になります。横に12ヶ月分並べれば完成です。

ステップ3|入金・出金の「日付」をずらして書く

ここが資金繰り表の心臓部です。売上が立った月と、お金が入る月は違います。

取引売上・費用が発生する月現金が動く月
個人のお客様・現金払い当月当月
クレジットカード決済当月翌月〜翌々月
法人・元請け経由の仕事当月翌月末・翌々月末が多い
材料の仕入れ、外注費当月翌月払いが多い
ロイヤリティ(FCの場合)当月翌月引き落としが多い
補助金経費を使った月報告・審査のあと数ヶ月後

発生した月にそろえて書いてしまうと、表はきれいに見えるのに現実と合いません。取引先ごとに「何日締めの何日払いか」を契約前に必ず確認し、その月の欄に書いてください。

ステップ4|最悪のケースも1本作る

売上を「想定の7割」に落とした表をもう1本作ります。ここで繰越現金がマイナスになる月が出たら、その月が資金ショートの予定日です。開業前なら、借入額を増やすか開業時期をずらすか、まだ選べます。

ステップ5|月1回、実績で上書きする

作りっぱなしでは意味がありません。月初に先月の実績を入れ直し、先の3ヶ月を引き直す。この5分の作業が、事故のほとんどを未然に防ぎます。

資金の流れを月ごとに整理する

実例|FCのモデル数字を資金繰り表に落とすと

数字がないとイメージしづらいので、当サイト掲載の「お掃除のえる」(株式会社ノエル)の本部公表モデルを使ってみます。

  • 初期費用:105万円〜(うち加盟金30万円〜/キャンペーン適用時。通常は加盟金200万円)
  • ロイヤリティ:売上の25%
  • モデル月商:132万円/オーナー手取り約82万円(利益率62%・オーナー1名稼働モデル)

※本部公表値であり、時期や条件により変動します。最新の条件は必ず本部の公式資料でご確認ください。

このモデル月商にいきなり届くわけではありません。立ち上がりを月商の3割→5割→8割、売上の半分が翌月入金、ロイヤリティは翌月払い、生活費を月25万円、開業時の手元資金を150万円と置いて表にすると、こうなります(立ち上がり率・入金条件・生活費は編集部が置いた仮定です)。

項目(万円)開業月2ヶ月目3ヶ月目
前月繰越1502324
売上(発生ベース)4066106
現金入金205386
初期費用▲105−−
ロイヤリティ(翌月払い)0▲10▲17
広告分担金▲10▲10▲10
その他経費▲7▲7▲7
生活費▲25▲25▲25
翌月繰越232451

※借入返済前・税金支払い前の数字です。

開業月を見てください。損益で計算すれば売上40万円に対して費用が27万円で黒字です。それでも手元の現金は23万円まで落ちます。初期費用105万円が同じ月にまとめて出ていき、売上の半分は翌月にしか入らないからです。

ここに借入の返済が月5万円乗るだけで、繰越はさらに薄くなります。この表を開業前に作れたかどうかが、分かれ目になります。

つまずきやすい4つの落とし穴

  1. 借入金の元本返済を書き忘れる——損益計算書に載らないので、いちばん抜けます。必ず独立した行にしてください。
  2. 税金・社会保険料はまとめて来る——所得税・住民税・国民健康保険は、忙しい月にも容赦なく来ます。毎月「積立」の行を作り、支払月にドンと落とすのが安全です。
  3. 売上が伸びるほど先に出ていくお金も増える——ロイヤリティが売上の25%なら、売上が伸びれば出金も比例して増えます。材料費や外注費も先払いです。「売れているのに苦しい」はここで起きます。
  4. 売掛金の回収サイトを確認していない——法人相手の仕事は「月末締め翌々月末払い」も珍しくありません。契約前に確認してください。

補助金・保証料は「あと払い」で考える

補助金は資金繰り表の中でいちばん誤解されています。多くの制度は経費を先に自腹で払い、報告と審査を経てから振り込まれる精算払いです。「補助金が出るから大丈夫」と収入の欄に早い月で書くと、その月から表が丸ごと崩れます。

たとえば愛知県東海市の「【東海市】小規模企業等振興資金等信用保証料補助金」は、市内で融資を受ける中小企業者の信用保証料を補助する制度で、補助率は通常資金60%・小口資金80%・セーフティネットと創業等支援資金100%、上限12万円、募集終了は2027年3月31日とされています(2026年8月時点)。保証料はまず自分で払い、あとから補助されるという順番です。

資金繰り表では、補助金の入金は確実に振り込まれる月まで書かないか、別行に薄く分けて書くこと。制度の詳細・最新の募集状況は、必ず各実施機関の公式サイトで確認してください。

出典:Jグランツ/このコンテンツは政府公式の補助金申請システムjGrantsのWeb-API機能を利用して取得した情報をもとに株式会社ウィズモーにて作成されたものです。コンテンツの内容は日本国政府及び自治体によって保証されたものではありません。

資金が危ないときのチェックリスト

次のうち2つ以上当てはまったら、表を引き直してください。

  • 3ヶ月先の繰越現金の金額を、いま言えない
  • 借入の元本返済が資金繰り表に書かれていない
  • 売掛金の入金日を取引先ごとに把握していない
  • 税金・社会保険料の積立行がない
  • 生活費(自分の給料)が表に入っていない
  • 補助金の入金を、交付決定前の月に書いている

まとめ

資金繰り表は難しい会計知識ではなく、「入る月」と「出る月」を正直に書く作業です。作るのに必要なのは表計算ソフトと、取引先の支払条件を確認する電話1本。それだけで、開業後にいちばん多い事故を先回りできます。

まずは自分がどんな業態に向いているかを確かめたい方は、開業診断で3分ほどのチェックから始めてみてください。「うちの数字でこの表を作るとどうなるか一緒に見てほしい」という段階なら、無料のLINE相談でも気軽にご質問いただけます(相談は無料・しつこい勧誘はありません)。

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