資金調達

借入返済シミュレーションのやり方|毎月いくら返すのかを先に決める

2026/9/4 更新

借入返済シミュレーションのやり方|毎月いくら返すのかを先に決める

「いくら借りられますか」——融資の相談で一番よく聞かれる質問です。でも、この順番で考えると失敗します。

正しいのは逆です。先に「毎月いくらなら返せるか」を決めて、そこから借入額を決める。この記事では、その計算を自分の手でやる手順を説明します。電卓かスマホの計算機、それと紙が1枚あれば十分です。

まず結論:借入額は「毎月の返済額」から逆算する

順番はこうです。

手順やること例
①毎月の利益(返済前)を見積もる月32万円
②そのうち返済に回せる上限を決める利益の50%=月16万円
③返済額から借りられる額を逆算する月16万円×7年=約1,250万円
④必要な開業資金と突き合わせる必要105万円なら余裕あり

多くの人は③から入ります。金融機関のシミュレーターも「借入額を入れると返済額が出る」形なので、つい借入額から考えてしまう。でも、返せるかどうかを決めるのは①の数字です。ここが小さければ、いくら借りられると言われても借りてはいけません。

毎月の返済額を計算する式

元利均等返済(毎月の返済額がずっと同じ方式。日本政策金融公庫や銀行の事業融資はほぼこれ)の場合、ざっくりの目安はこの計算で出せます。

毎月の返済額 ≒ 借入額 ÷ 返済回数 + 借入額 × 年利 ÷ 12 × 0.55

前半が元本、後半が利息のおおよその平均です(残高が減っていくので、単純計算の約55%が目安)。

実際の数字で見てみます。**借入500万円・年利2.5%・返済7年(84回)**の場合:

  • 元本部分:500万円 ÷ 84回 = 約59,500円
  • 利息部分:500万円 × 2.5% ÷ 12 × 0.55 = 約5,700円
  • 毎月の返済額 ≒ 約65,200円

厳密な計算はエクセルの PMT 関数(返済額を出す関数)や、日本政策金融公庫の公式サイトにある返済シミュレーターを使ってください。上の式は「頭の中で当たりをつける」ためのものです。

借入額ごとの目安表(年利2.5%の場合)

借入額5年返済7年返済10年返済
300万円約5.3万円/月約3.9万円/月約2.8万円/月
500万円約8.9万円/月約6.5万円/月約4.7万円/月
800万円約14.2万円/月約10.4万円/月約7.5万円/月
1,000万円約17.7万円/月約13.0万円/月約9.4万円/月

※編集部による概算です。金利・返済方式・据置期間によって変わります。実際の条件は借入先の公式サイトと窓口で必ず確認してください。

期間を延ばせば毎月は楽になりますが、払う利息の総額は増えます。10年返済にすれば毎月は減る、これは事実。ただし「毎月が楽になったから、もう少し借りよう」と考え始めると本末転倒です。

事業計画と返済計画の書類

返済に回していい金額の上限

ここが一番大事です。返済前の利益に対して、返済額は50%以内。これを超えると、少し売上が落ちただけで生活費が出なくなります。

具体例で見ます。掲載ブランドの「お掃除のえる」(お掃除・お庭サービス)が公表しているモデル数値です。

項目金額
初期費用105万円(加盟金30万円/キャンペーン適用時。通常は200万円)
モデル月商132万円
手取り(返済前・税前)22万円
ロイヤリティ売上の25%
前提利益率62%・オーナー1名稼働
自分の人件費上記「手取り」がオーナー本人の取り分

→ お掃除のえるの詳細

この場合、開業資金105万円を全額借りたとします。5年返済なら毎月約1.9万円。手取り22万円に対して返済比率は約9%です。これは安全圏です。

一方、もし1,000万円借りていたら、5年返済で毎月約17.7万円。手取り22万円のうち17.7万円が返済に消えて、残りは4.3万円。これでは暮らせません。

この差を作っているのは金利でも返済期間でもなく、借入額そのものです。

「手取り」の中身を必ず確認する

比較表や本部の説明で「手取り」「利益」と書かれている数字は、何を引いた後の金額なのか必ず確認してください。ここを取り違えると計算が全部ずれます。

チェック項目確認すること
返済前か返済後か返済前なら、そこから返済を引く
税前か税後か税前なら、さらに所得税・住民税が引かれる
自分の人件費は含むか含まないなら、その数字=あなたの給料

上のお掃除のえるの例なら「手取り22万円」は返済前・税前・オーナー本人の取り分です。ここから返済1.9万円を引いて約20万円、さらに税金と社会保険料を引いた額が実際に使えるお金になります。

本部の資料でこの3点が書かれていない場合は、面談で直接聞いてください。答えられない本部は、その時点で判断材料になります。

据置期間を使うかどうか

据置期間とは、最初の数か月だけ利息のみを払い、元本の返済を後回しにできる仕組みです。日本政策金融公庫の融資では設定できる場合があります(条件は制度・時期により異なるため公式サイトで確認してください)。

  • 使うべき場合:売上が立ち上がるまでに時間がかかる業態(店舗型、リピート前提のサービス業など)
  • 注意点:据置期間が終わった後の返済額は上がる。据置6か月なら、残り期間で同じ元本を返すことになる

据置は「返済が減る制度」ではなく「後ろにずらす制度」です。ずらした先で返せるかを、必ず先に計算しておいてください。

下振れしたときの試算も同時に作る

シミュレーションは1本では足りません。最低2本作ります。

ケース想定判断
標準ケース本部モデル通り返済比率50%以内か
下振れケース売上が本部モデルの70%返済できるか・生活費が残るか

お掃除のえるの例で、月商132万円が70%の約92万円になったとします。利益率62%のままなら利益は約57万円、ここからロイヤリティ25%(約23万円)を引くと、手元は大きく減ります。この状態で毎月の返済ができるかどうか。ここまで計算して初めて、シミュレーションは判断に使えます。

下振れケースで返済が回らないなら、借入額を減らすか、開業時期をずらして自己資金を厚くするか、そもそもその業態を選び直すか。選択肢は3つしかありません。

今日やること(チェックリスト)

  • 検討している業態の「返済前・税前の月間利益」を数字で書き出す
  • その50%を計算し、毎月返せる上限額を決める
  • 上の目安表で、その返済額から借りられる額を逆算する
  • 必要な開業資金と比べて、足りているか確認する
  • 売上70%の下振れケースで、同じ計算をもう一度やる
  • 本部資料の「手取り」が返済前か税前か、自分の人件費を含むかを確認する

この6つが埋まれば、金融機関との面談で話せる状態になります。逆にここが埋まっていないまま「いくら借りられますか」と聞きに行くと、相手のペースで金額が決まってしまいます。

まとめ

  • 借入額から考えず、毎月返せる額から逆算する
  • 返済比率は返済前利益の50%以内を目安にする
  • 「手取り」は返済前か・税前か・自分の人件費を含むか、必ず3点確認する
  • 据置期間は返済を減らす制度ではなく、後ろにずらす制度
  • 標準ケースと下振れケース(売上70%)の2本を作る

金額の条件は制度や時期によって変わります。金利・返済期間・据置の可否は、日本政策金融公庫や借入先の公式サイトで最新情報を確認してください。

自分がどの業態に向いているのか、そもそも必要な開業資金がいくらなのかが決まっていない段階なら、そこから整理したほうが早いです。開業診断で、条件に合う開業の形を絞り込んでから返済計画を立ててみてください。

なお、借入額の設定や本部への確認事項で迷っている場合は、無料のLINE相談も使えます。急ぎでなければ、まず上のチェックリストを自分で埋めてみるほうが力になります。

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