フランチャイズ

ゴーストレストランのフランチャイズは「厨房の空き時間」で決まる|加盟前に確認する9項目

2026/9/18 更新

ゴーストレストランのフランチャイズは「厨房の空き時間」で決まる|加盟前に確認する9項目

「客席をつくらなくていい」「厨房を借りるだけで飲食を始められる」。最近、開業ジャパンの相談窓口にも、こうした説明を受けてゴーストレストランのフランチャイズを検討しはじめた方からの問い合わせが届くようになりました。この記事は、その相談で毎回同じところでつまずくので書いています。

先にお伝えしておきます。**この記事には「ゴーストレストランは儲かります」とは書きません。**編集部は現時点で、デリバリー専門業態の加盟オーナーから「実際にいくら残ったか」という金額つきの一次データを持っていないからです。持っていない数字を、それらしく書くことはしません。

代わりにこの記事では、売上から何がどの順番で引かれるのかという構造を、電卓を叩ける形まで分解します。構造がわかれば、本部から見せられた数字が現実的かどうか、自分で判定できるようになります。

ゴーストレストランのフランチャイズとは、何を借りて何を売る仕組みか

ゴーストレストランとは、お客さんが座る席を持たず、デリバリー(出前)とテイクアウトだけで料理を売る飲食店のことです。「バーチャルレストラン」「クラウドキッチン」とも呼ばれます。幽霊のように実店舗が見えないので、この名前がついています。

フランチャイズ(FC)とは、本部のブランド名・レシピ・仕組みを使わせてもらう代わりに、加盟金やロイヤリティ(使用料)を払う契約のことです。ゴーストレストランのFCは、だいたい次の3タイプに分かれます。

タイプ厨房をどうするか初期費用の傾向向いている人
間借り型既存の飲食店の、営業していない時間帯に厨房を借りる最も軽い。数十万円〜設備投資を避けたい未経験者
自前厨房型デリバリー専用の小さな物件を自分で借りる重い。数百万円〜複数ブランドを同時に回したい人
併設型すでに自分でやっている飲食店の厨房で、もう1ブランド動かす最も軽い。数万円〜既存店の空き時間と人手を活かしたい人

この記事を読んでいる方が飲食店をすでに経営しているなら、併設型がいちばん理屈が通ります。厨房・冷蔵庫・食材の仕入れルート・営業許可・スタッフという、すでに持っている資産の「空いている時間」だけを売上に変える形だからです。ゼロから間借り先を探す場合とは、前提がまるで違います。

逆に、飲食の経験がまったくない方が間借り型から入る場合は、この記事の後半にある落とし穴のセクションを、契約書にサインする前に必ず読んでください。

「儲かるか」の答えは、この分解表の中にある

ゴーストレストランの収支が普通の飲食店と決定的に違うのは、売上の3割前後がプラットフォーム(Uber Eats や出前館などの注文アプリ)に持っていかれる点です。

大手デリバリーサービスの手数料は、配達まで任せるプランだと注文額の30%台になることが多いとされています。料率はプラン・時期・エリアで変わるため、**必ず各社の公式サイトで最新の数字を確認してください。**この記事では、わかりやすさのために35%で計算しています。

普通の飲食店で「FL比率(食材費と人件費の合計を売上の60%以内に抑える)」という目安を聞いたことがあるかもしれません。ゴーストレストランでは、その計算の手前で3割が消えます。飲食業の原価構造そのものについては、ラーメン屋は本当に儲かるのかで1円ずつ追っているので、基礎から知りたい方はそちらをどうぞ。ここではデリバリー固有の部分だけを厚く見ます。

月商80万円のとき、手元にいくら残るか(編集部逆算)

項目金額何で決まるか
売上(注文額の合計)800,000円注文数 × 客単価
デリバリー手数料(35%と仮定)−280,000円契約プラン。自分で配れば下がる
食材原価(30%と仮定)−240,000円本部指定の仕入れ単価
包材費(容器・袋・カトラリー、3%)−24,000円デリバリー特有。店内飲食にはない費用
ロイヤリティ(5%と仮定)−40,000円計算のもとになる金額に注意(後述)
厨房使用料(間借り、固定)−50,000円間借り先との条件
水道光熱・通信−20,000円
アプリ内広告費−20,000円出さないと表示順位が落ちやすい
返済前・税前に残る額126,000円
返済後(300万円を7年・年2%で借りた場合、月返済約3.8万円)約88,000円借入条件で変動
自分の人件費の扱い含まず調理も受注も自分1人で行う前提

ここで手を止めてほしいのが最後の行です。この88,000円は、自分の給料を1円も引く前の金額です。もし月160時間この仕事に使っているなら、時給に直すと約550円。これが「儲かるかどうか」を判断するときの、いちばん正直な数字です。

お金と資金のイメージ

月商150万円まで伸びたとき(編集部逆算)

項目金額
売上1,500,000円
デリバリー手数料(35%)−525,000円
食材原価(30%)−450,000円
包材費(3%)−45,000円
ロイヤリティ(5%)−75,000円
厨房使用料−50,000円
水道光熱・通信−25,000円
アプリ内広告費−30,000円
アルバイト(月60時間×1,200円)−72,000円
返済前・税前に残る額228,000円
返済後(上と同条件)約190,000円
自分の人件費の扱い含まず

売上が約1.9倍になっても、手元に残る額は約2.2倍。固定費が薄く伸びるぶん改善はしますが、売上に比例して増える費用(手数料・原価・包材・ロイヤリティ)が合計73%を占めるため、伸び方は緩やかです。これがゴーストレストランの利益構造の正体です。

いずれも編集部が一般的な料率から逆算したモデルで、実在の店舗の実績ではありません。自分が検討している本部の数字に置き換えて、同じ順番で引いてみてください。

ロイヤリティは「型」で下振れ耐性が変わる

ロイヤリティには大きく3つの型があります。ゴーストレストランは売上が天候・季節・アプリの表示順位で大きくぶれるため、どの型かによって、売上が落ちた月の痛み方がまったく違います。

型仕組み売上が伸びたとき売上が落ちたとき
売上歩合型売上の◯%負担も一緒に増える負担も減るので耐えやすい
月額固定型毎月いくら増えないので有利固定費として重くのしかかる
仕入れ込み型ロイヤリティ0円だが食材は本部から購入一見わかりやすい原価に何%乗っているか見えない

3つめの「仕入れ込み型」が、いちばん判断を誤りやすいところです。「ロイヤリティ0円」と大きく書いてある募集要項でも、本部指定の食材が市場価格より2割高ければ、原価30%の商売なら実質6%のロイヤリティを払っているのと同じです。必ず仕入れ単価表を見せてもらい、同じ食材の一般的な卸価格と比べてください。

他業種の実例で「型」の効き方を見る

飲食ではありませんが、開業ジャパン掲載ブランドの実データを並べると、型の違いが数字にどう出るかがはっきりします。ゴーストレストランの数字ではない点に注意しつつ、構造の参考にしてください。

ブランド業種初期費用ロイヤリティの型本部モデルの月商返済前・税前に残る額返済後自分の人件費の扱い
ブランドインパクトブランド品物販・EC30万円(加盟金のみ。店舗・オフィス不要)月額固定5万円(売上連動なし)100万円約9.5万円本部未公表(借入条件による)含まず(オーナー運営で人件費0の前提)
同上同上同上同上200万円約24.5万円同上同上
Dr.Resetリラクゼーション約400万円(加盟金120万円+保証金30万円)月額固定10万円140万円約15.5万円(営業利益モデル)本部未公表本部未公表
ビルパービルメンテナンス500万円(加盟金0円)―60〜80万円月1.4万円〜本部未公表本部未公表

注目してほしいのはブランドインパクトの2行です。月商が100万円から200万円へ倍になると、残る額は9.5万円から24.5万円へ2.6倍になります。ロイヤリティが固定5万円のまま動かないからです。これが月額固定型の強みです。

裏を返せば、月商が半分に落ちても5万円は必ず出ていきます。売上が読みにくい業態で月額固定型を選ぶのは、下振れに弱い選択だということです。ゴーストレストランの本部が月額固定型を提示してきたら、「月商がいくらを下回ると赤字になるか」を、上の分解表に自分で当てはめて計算してください。

金額はいずれも本部公表値で、時期により変動します。検討する際は各ブランドの公式情報で最新をご確認ください。

ゴーストレストラン特有の落とし穴6つ

ここからは、普通の飲食FCの記事には出てこない、この業態だけの論点です。

1. ロイヤリティが「どの金額」にかかるか 契約書を見ると、ロイヤリティの計算のもとになる金額が、プラットフォーム手数料を引く前の注文額になっていることがあります。月商80万円なら、実際に入金されるのは52万円なのに、80万円に対して5%=4万円を払う形です。入金額に対する実質負担は7.7%になります。「ロイヤリティは、アプリの手数料を引く前と後、どちらの金額に何%ですか」——この一言を必ず聞いてください。

2. 営業許可は「施設ごと」にかかる 飲食店営業許可は、人ではなく厨房(施設)に対して出るものです。間借りで他人の厨房を使う場合、その厨房で別の事業者として営業してよいのか、許可の名義をどうするのかは、管轄の保健所に事前相談するのが確実です。扱う商品によっては菓子製造業などの別区分が必要になることもあります。制度の運用は自治体ごとに差があるため、必ず地元の保健所と公式情報で確認してください。

3. 売上の大半が1日2〜3時間に集中する デリバリーの注文は、昼11〜13時と夜18〜21時にかたまります。つまりそのピーク時間に1人で何食さばけるかが、売上の物理的な上限です。1食あたり調理・梱包に5分かかるなら、昼2時間で最大24食。客単価2,000円なら昼の上限は48,000円です。月商80万円という数字が現実的かどうかは、この掛け算で先に検算できます。

4. 同じブランドが近所に増える(共食い) デリバリーアプリは、お客さんの現在地から近い順に店を表示します。同じブランドが半径数kmに複数入ると、注文を奪い合うことになります。テリトリー(独占エリア)の定めが契約書の何条にあるかを、口頭ではなく条文で確認してください。「今のところ予定はありません」という回答は、約束ではありません。

5. 評価が落ちると表示順位も落ちる アプリ上の★評価は集客に直結します。しかも配達の遅れは、配達員の事情であってもお店の評価に響くことがあります。自分でコントロールしきれない要素が売上を左右する——これは店内飲食にはないリスクです。

6. 撤退は軽い。ただし何も残らない 設備投資が小さいぶん、やめるときの損失も小さい。これはゴーストレストランの本当の長所です。一方で、ブランドは本部のもの、お客さんの情報はプラットフォームのものです。3年続けても、自分の手元に常連客も看板も残りません。「将来お店を持つための踏み台」として考えているなら、この点は先に飲み込んでおく必要があります。

地方で検討するなら、まずこの4つを確かめる

地方在住の方からの相談で、契約直前に判明して白紙に戻ったケースがあります。そもそも自分の商圏でデリバリーアプリが動いていなかったというものです。

  • 対応エリアの確認:各デリバリーサービスの公式サイトにエリア一覧があります。自宅・厨房の住所が入っているか、最初に見てください。
  • 配達員の数:エリアに登録している配達員が少ないと、注文が入っても長時間マッチングしない状態が起きます。実際にお客として何度か注文してみるのが、いちばん確実な調査です。
  • 半径2〜3kmの世帯数:デリバリーの商圏は歩いて行ける距離より少し広い程度です。車社会の地域では、そもそも「配達してもらう」習慣が薄い場合もあります。
  • テイクアウト・法人弁当という代替案:地方では、デリバリーより「近隣の事業所へまとめて届ける弁当」のほうが売上が安定することがあります。同じ厨房・同じレシピで、売り先だけ変える発想です。本部がこれを認めているかも聞いておく価値があります。

自分で配達する選択肢もあります。手数料は下がりますが、配達に使った時間ぶん、調理できる量が減るというトレードオフになります。1人で回す前提なら、ここは先に決めておくべきところです。

加盟前に本部へ聞く9つの質問

そのまま送っても使えるように、質問の形で並べます。返答を書き込む欄をつくって、複数の本部を比べてください。

  1. ロイヤリティは、プラットフォーム手数料を引く前と後のどちらの金額に、何%(または月額いくら)かかりますか。
  2. 食材は本部指定ですか。指定なら、主要品目の仕入れ単価表を見せていただけますか。
  3. 加盟金・保証金・システム利用料・広告分担金・研修費を含めて、毎月出ていく固定費の合計はいくらになりますか。
  4. 直営店またはモデル店の直近12か月の月商レンジと、その店の立地条件(人口・競合数)を教えてください。
  5. テリトリー(同一ブランドの出店制限)は、契約書の第何条に書かれていますか。
  6. 契約期間・中途解約金・自動更新の条件はどうなっていますか。
  7. デリバリーアプリのアカウントは誰の名義になりますか。本部名義の場合、契約終了時に評価や売上履歴は引き継げますか。
  8. 1つの厨房で、御社以外のブランドも並行して運営してよいですか。
  9. 本部のサポートは、レシピ提供のほかに何が含まれますか(商品写真の撮影、アプリ内の値付け、広告運用など)。

このうち7番が、意外といちばん効きます。アカウントが本部名義だと、苦労して積み上げた★評価もレビュー件数も、契約が終われば手元に残りません。逆に自分名義なら、ブランドを変えても実績を持ち越せます。

なお飲食業のフランチャイズには、法律で定められた説明書面(法定開示書面)を本部が加盟希望者に交付する仕組みがあります。対象となる本部の条件は制度上決まっているので、「法定開示書面はいただけますか」と聞いてみるのが手っ取り早い確認方法です。制度の詳細は中小企業庁などの公式情報をご確認ください。

向いている人・向いていない人

具体的にどういう人か
向いているすでに飲食店を経営していて、厨房とスタッフに空き時間がある / 自分で調理ができ、ピーク2時間を1人で回せる体力がある / 半径3km以内にデリバリー需要があると、注文体験で確かめられた / 「まず小さく試して、ダメなら畳む」と割り切れる
向いていない飲食未経験で、調理も含めて人に任せる前提でいる / 初期費用の安さだけで比較している / 商圏でデリバリーアプリが十分に稼働していない / 「将来は実店舗へ」と考えていて、常連客が自分に残らないことを受け入れられない

ゴーストレストランのフランチャイズは、入口が軽く、天井も低い商売です。少ない元手で飲食の実務を経験する手段としては合理的ですが、「席をつくらないぶん儲かる」仕組みではありません。席をつくらないぶんの費用が、そっくりプラットフォーム手数料に置き換わっている——この記事でいちばんお伝えしたかったのは、その一点です。

上の分解表に、検討中の本部からもらった数字を入れてみてください。返済前・税前に残る額から借入返済を引き、そこから自分の働いた時間で割る。その時給が納得できる金額なら、話を進める価値があります。

数字を入れてみたけれど、この前提で合っているのか不安、という段階でしたら、無料のLINE相談で構造の見方だけ確認していくのも手です。勧誘はしませんので、計算式の検算だけでも構いません。ほかの業態と並べて比べたい方は、フランチャイズ一覧から初期費用とロイヤリティの型を見比べてみてください。

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