パン屋のフランチャイズは3タイプある|どれを選ぶかで費用も朝の起床時間も変わる
最初にお伝えしておきます。この記事には「パン屋のフランチャイズなら手取り月◯万円」という表はありません。
開業ジャパン編集部は、掲載しているブランドについては本部が公表している金額をそのまま載せていますが、パン屋(ベーカリー)のフランチャイズ本部について、加盟金・ロイヤリティ・モデル収支を金額つきで確認できている一次データを、現時点では持っていないからです。数字のない比較表を作って「約◯万円」と書き足すことはできますが、それは読者にとって害にしかなりません。
かわりにこの記事では、パン屋という商売の利益がどこで決まるのかを分解します。そこさえ分かれば、あなたが実際に本部からもらう資料の数字を、自分で正しく読めるようになります。
まず押さえるべきは、ひとくちに「パン屋のフランチャイズ」と言っても、中身が3つに分かれることです。
| ベイクオフ型 | スクラッチ型 | 販売専門型 | |
|---|---|---|---|
| どんな作り方 | 本部から届く冷凍生地を、店で発酵させて焼く | 小麦粉から店で仕込んで焼く | 焼き上がった商品が届き、並べて売るだけ |
| 初期費用の傾向 | 中くらい | いちばん高い | いちばん低い |
| 主な設備 | 冷凍庫・ホイロ・オーブン | ミキサー・分割機・ドウコンディショナー・オーブン | 陳列什器・レジ |
| 技術の習得 | 数日〜数週間の研修で立ち上がることが多い | 数か月単位。職人の採用が前提になりやすい | ほぼ不要 |
| 仕込み開始の目安 | 開店の2〜4時間前 | 開店の5〜7時間前 | 納品を受け取るだけ |
| 材料の原価 | 高め(加工済みの生地を買うため) | 低め(粉から作るため) | いちばん高い(完成品を買うため) |
| 廃棄の調整 | 焼く量をあとから足せるので調整しやすい | 仕込んだ量で決まるので調整しにくい | 発注数で決まる |
| 本部への依存 | 高い | 低め | いちばん高い |
※これは業態としての一般的な傾向をまとめたものです。同じ「ベイクオフ型」でもブランドによって設備も研修も違います。
用語を補足します。ホイロは生地を発酵させる保温庫のことです。ドウコンディショナーは、生地の温度と時間をプログラムで管理して「朝になったら発酵が終わっている」状態を作る機械です。スクラッチ型で早朝の労働時間を減らしたい店が入れますが、そのぶん設備投資が増えます。
地方で初めて開業する方の相談を受けていると、「パンを作るのが好きだからスクラッチ型」と入り口で決めてしまう方が多いのですが、スクラッチ型は初期費用・労働時間・採用難易度の3つが同時に重くなる選択です。好きかどうかと、続けられるかどうかは別問題として分けて考えてください。
パン屋の利益を決めるのは売上ではなく「廃棄率」
パンは、その日に売れなければ基本的に商品価値がなくなります。夕方に値引きしても売り切れなかった分は捨てることになる。これが飲食業のなかでもパン屋がとくに厳しい点です。
では、廃棄がどれくらい利益に効くのか。仮の数字で計算してみます。
前提(すべて編集部の仮置き): 月商300万円、材料費は売価に対して35%、パート・アルバイト人件費60万円、家賃24万円、水道光熱費21万円、ロイヤリティ9万円(売上の3%と仮定)、包材・広告・雑費15万円。
「廃棄率」は、焼いた商品の売価合計のうち、売れずに捨てた割合とします。
| 廃棄率5% | 廃棄率10% | 廃棄率15% | 廃棄率20% | |
|---|---|---|---|---|
| 焼いた商品の売価合計 | 315.8万円 | 333.3万円 | 352.9万円 | 375.0万円 |
| 材料費 | 110.5万円 | 116.7万円 | 123.5万円 | 131.3万円 |
| 返済前・税前に残る額 | 60.5万円 | 54.3万円 | 47.5万円 | 39.7万円 |
| 返済後に残る額 | 借入額しだい(別途差し引く) | 同左 | 同左 | 同左 |
| 自分の人件費の扱い | 含まず | 含まず | 含まず | 含まず |
(編集部逆算)
読み取ってほしいのは1点だけです。廃棄率が5ポイント上がると、月に6万円前後が消えます。 5%と20%を比べれば月20.8万円、年間で約250万円の差です。売上は同じ300万円なのに、です。
さらに厄介なのは、廃棄を怖がって焼く量を減らすと、今度は「夕方に行ったら何も残っていない店」になり、客足が落ちるという逆方向の損が発生することです。この綱引きをどう設計するかが、パン屋という商売の本体だと思ってください。
だから、本部を見るときの質問はこうなります。
- 直営店やモデル店舗の廃棄率は実績で何%か
- その廃棄率は、どういう焼成計画(いつ何個焼くか)を前提にした数字か
- 廃棄が出たとき、その材料費は加盟店が全額かぶるのか、本部の補填や返品制度があるのか
3つ目は特に重要です。冷凍生地を使うベイクオフ型でも、「焼く前の生地は返品できるが、焼いてしまったら加盟店負担」という設計が一般的です。契約書の文言を必ず確認してください。
朝は本当に早いのか|1日の時間割で「自分の人件費」を見積もる
パン屋の収支計画でいちばん抜けやすいのが、オーナー自身の労働です。本部が出すモデル収支の多くは「オーナーが働く前提」で作られていて、オーナーの給料は費用に入っていません。つまりモデル収支の利益は、あなたの給料込みの数字です。
どれくらい働くことになるのかを、時間割で見ておきます(7時開店の店の一例)。
| 時刻 | ベイクオフ型 | スクラッチ型 |
|---|---|---|
| 2:30〜3:00 | — | 出勤・ミキシング開始 |
| 4:30 | 出勤・冷凍生地を解凍しホイロへ | 分割・成形 |
| 5:30 | 1回目の焼成 | 1回目の焼成 |
| 7:00 | 開店 | 開店 |
| 10:00 | 2回目の焼成・品出し | 2回目の焼成・品出し |
| 12:00 | 昼のピーク対応 | 昼のピーク対応 |
| 15:00 | 追加焼成か値引きかの判断 | 追加焼成か値引きかの判断 |
| 18:00 | 閉店・清掃・翌日の準備 | 閉店・清掃・翌日の仕込み |
| 19:30 | 退勤 | 退勤 |
※店舗規模・商品数・ブランドによって大きく変わります。あくまで構造を掴むための一例です。
ベイクオフ型でも実働は1日13時間前後、スクラッチ型なら15時間を超えることがあります。ここに仕入れ、シフト作成、売上管理、本部への報告が乗ります。
自分の人件費をいくらで置くかを決めてください。仮に月30万円とすると、さきほどの廃棄率10%のケース(返済前・税前54.3万円)から30万円を引いて、返済前で24.3万円。ここから借入返済を引いた残りが、あなたが本当に使えるお金です。月商300万円で自己資金以外に1,500万円を10年で借りていれば、元金だけで月12.5万円前後が出ていきます。
この計算を、本部の資料を見る前に自分で一度やっておくこと。これが失敗を減らす一番確実な方法です。
小麦とバターが値上がりしたとき、誰が負担するのか
パン屋は、原材料の相場が利益に直撃する業種です。小麦粉、バター、油脂、卵、包材。ここ数年、これらの価格は動き続けています。
フランチャイズの場合、材料は本部または本部指定の業者から仕入れる契約になっているのが普通です。そのとき、値上がり分の扱いは大きく3パターンに分かれます。
- 本部が一定期間は価格を据え置く … 加盟店は計画が立てやすい。ただし据え置き期間が終わったあと一気に上がることもある
- 市況に応じて本部が随時改定する … 加盟店がそのまま負担する。事前通知の有無・期間を必ず確認
- 改定時に本部が理由を説明し、販売価格の見直しもセットで協議する … 加盟店にとっては最も安全だが、実際にどこまで運用されているかは既存店に聞くしかない
ここで見落とされがちなのが、仕入れ値を自分で下げられないという点です。個人店なら「粉を別の問屋に変える」「配合を見直す」という手が打てますが、フランチャイズでは指定仕入れが原則です。値上がりに対して自分で打てる手が少ない。これはフランチャイズの安心料の裏返しだと理解しておいてください。
契約前に確認する文言は、ざっくりこの3つです。
- 仕入価格の改定は、何日前までに通知されるか
- 改定に加盟店が納得できない場合、契約を解除できるか(違約金は発生するか)
- 販売価格を加盟店が自分で変えられるか、それとも本部の承認が必要か
3つ目が「本部承認が必要」なのに、仕入れ値は随時改定される契約だと、原価だけが上がって売価を上げられない状態になります。ここは必ず紙で確認してください。
ロイヤリティの金額より、「何に対して何%か」を見る

ロイヤリティ(本部に毎月払う費用)を比べるとき、多くの人は「5%と3%なら3%のほうが得」と考えます。でも実際に効いてくるのは率よりも方式です。
- 定額方式 … 売上に関係なく毎月いくら。売上が伸びるほど負担率は下がる
- 売上歩合方式 … 総売上の何%。売れなければ負担も減るが、利益が薄い月でも必ず発生する
- 粗利分配方式 … 売上から原価を引いた粗利の何%。原価が上がると本部の取り分も減るので、値上がり局面では加盟店に優しい
- ロイヤリティなし・仕入差益型 … 名目上のロイヤリティは0円だが、本部が卸す材料の価格に利益が乗っている
パン屋で特に注意したいのが4つ目です。冷凍生地を本部から買う構造では、あなたが焼いて捨てたパンの生地代も、本部にとっては売上です。 ロイヤリティ0%と書いてあっても、実質的な本部への支払いは生地代に含まれている可能性があります。「ロイヤリティは何%ですか」ではなく、「本部の収益源は何と何ですか」と聞いてください。
方式の違いが手元にどう効くかは、実際に条件を公表しているブランドを並べると分かりやすくなります。以下は開業ジャパンに掲載している別業種のブランドですが、同じ「月◯万円」でも前提がまったく違うことを確認するために載せます。
| ブランドインパクト(ブランド品物販・EC) | Dr.Reset(リラクゼーション) | ビルパー(ビルメンテナンス) | |
|---|---|---|---|
| 加盟金 | 30万円 | 120万円(+保証金30万円) | 0円 |
| 初期費用 | 30万円〜(店舗・オフィス費は不要) | 約500万円 | 500万円 |
| ロイヤリティ方式 | 月額固定5万円(売上連動なし) | 定額 月10万円 | 運営フル委託・売上の14%が加盟店に配分 |
| 返済前・税前に残る額(本部モデル) | 月59.5万円(月商100万円時) | 月65万円〜(営業利益モデル) | 月8.4万円〜(月商60〜80万円時) |
| 返済後に残る額 | 本部未公表 | 本部未公表 | 本部未公表 |
| 自分の人件費の扱い | 含まず(オーナー運営で人件費0の前提) | 本部未公表 | 運営は本部が代行するため、オーナーの労働を前提としない |
出典:各本部公表値(掲載時点)。ブランドインパクト / Dr.Reset / ビルパー。金額は時期により変動します。最新情報は各公式サイトでご確認ください。
3社を並べると、「返済後に残る額」はどこも公表していないことが分かります。これは特定の本部が不誠実なのではなく、借入額が加盟者ごとに違う以上、本部には出しようがない数字だからです。だからこそ、返済後の数字は加盟希望者が自分で埋めるしかない。
そしてブランドインパクトのように「人件費0の前提」と明記してくれている本部は、むしろ親切なほうです。パン屋の本部から収支モデルをもらったら、その利益にオーナーの給料が含まれているのかどうかを、最初に聞いてください。
物件と設備で、想定外の工事費が出る
パン屋は、飲食業のなかでも物件の制約が強い業態です。居抜き(前のテナントの設備が残っている物件)でない限り、内装工事の見積もりが想像より膨らみます。
チェックすべきは主に次の5点です。
| 項目 | なぜ問題になるか |
|---|---|
| 三相200Vの動力電源 | 業務用オーブン・ミキサーは家庭用コンセントでは動かない。引き込み工事が必要な物件がある |
| 電気容量 | オーブンを複数台動かすと契約容量が足りず、増設工事になることがある |
| 排気・ダクト | 焼成の熱と匂いを逃がす必要がある。上階が住居のビルでは苦情の原因になりやすい |
| 床荷重 | ミキサーやオーブンは重い。2階以上のテナントで制限に引っかかることがある |
| 給排水とグリーストラップ | 保健所の営業許可に関わる。後付けは高くつく |
地方の場合、駅前より住宅街や幹線道路沿いで駐車場が確保できる物件のほうが向くケースが多くあります。パンは日常の買い物であり、車で来て10分で帰る動線が成立するからです。逆に、駐車場が1〜2台しかない路面店は、朝と夕方のピークで機会損失が出ます。
本部に聞くべきは「直営店の駐車場は何台か」「商圏人口は何人を想定しているか」。この2つに具体的な数字が返ってこない本部は、立地開発の蓄積が薄い可能性があります。
契約前にパン屋の本部へ聞く7つの質問
一般的なフランチャイズの確認事項(契約期間・違約金・テリトリー権など)に加えて、パン屋だから聞くべきことを7つに絞りました。
- 直営店・モデル店舗の廃棄率の実績は何%か。その数字はいつの、どの店のものか
- 焼いてしまったパンの材料費は、全額加盟店負担か。返品・補填の制度はあるか
- 冷凍生地・材料の価格改定ルール(通知期間・改定頻度・過去2年の改定実績)
- 販売価格を加盟店の判断で変えられるか。変えられない場合、原価上昇時の対応は
- 本部の収益源は何か(加盟金・ロイヤリティ・仕入差益・設備販売のうちどれとどれか)
- モデル収支の利益に、オーナーの人件費は含まれているか
- 直近3年で閉店・契約終了した店舗は何店か、その理由は何か
7つ目は必ず聞いてください。開店数は本部が積極的に出しますが、閉店数は聞かなければ出てきません。答えを濁す本部は、その時点で判断材料になります。
なお、フランチャイズ本部には「法定開示書面(情報開示書面)」を交付する仕組みがあります。これは加盟店の数の推移や訴訟の有無などが書かれた書類で、契約前に受け取って読む権利があります。制度の詳細や最新の運用は、公式の情報で確認してください。
背景:パン屋はどれくらいある業種なのか
パン屋の多くは「作って、その場で売る」製造小売にあたり、統計上は食料品製造業に含まれます。政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和3年経済センサス-活動調査」を加工して集計すると、食料品製造業の全国事業所数は43,766事業所(全97産業中33位、全事業所5,287,701の0.8%)でした。
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和3年経済センサス-活動調査」を加工して作成
原価率や人件費率の一般的な考え方(FL比率など)については、飲食業全体に共通する話なので本記事では深入りしません。パン屋に固有の論点は、ここまでで挙げた廃棄率・早朝労働・指定仕入れ・設備制約の4つに集中しています。
よくある質問
Q. パンを作った経験がなくても開業できますか A. ベイクオフ型や販売専門型であれば、未経験から始められる設計になっている本部が多くあります。ただし「作れること」と「売れる店を回せること」は別です。研修で何を教えてもらえるのか(製造だけか、発注・シフト・数値管理まで含むか)を確認してください。
Q. 副業でできますか A. 店舗型のパン屋は現実的に難しいと考えてください。時間割の項で見たとおり、早朝から夕方までの拘束が毎日発生します。雇われ店長を置く前提なら別ですが、そのぶん人件費が積み上がり、上の試算表の利益は大きく減ります。
Q. ロイヤリティが安いブランドを選べばいいですか A. ロイヤリティの額だけで判断するのは危険です。本部の収益源が仕入差益に寄っている場合、ロイヤリティが安くても総支払額は変わらないことがあります。年間でいくら本部に払うことになるのかを、材料費も含めて合計で比べてください。
Q. 地方でも成り立ちますか A. 商圏人口と車の動線しだいです。人口が少なくても、通勤ルート上にあり駐車場が確保できていれば成立している店はあります。逆に人口があっても競合ベーカリーとスーパーのインストアベーカリーが密集していれば厳しくなります。本部が持っている近隣エリアの実績データを見せてもらうのが近道です。
Q. 失敗しやすいのはどんなケースですか A. 相談を受けていて多いのは、(1)モデル収支の利益を「自分の手取り」だと思い込んでいた、(2)廃棄率を本部モデルどおりに抑えられず原価が計画を超えた、(3)早朝勤務が体力的に続かず人を雇ったら人件費で利益が消えた、の3つです。いずれもこの記事で扱った論点です。
まとめ|判断の順番
パン屋のフランチャイズを検討するとき、見るべき順番はこうです。
- 3タイプのどれかを決める(ベイクオフ/スクラッチ/販売専門)。ここで初期費用も労働時間も決まる
- 廃棄率を何%で計画するかを決め、上の試算表の形で返済前・税前の額を出す
- 自分の人件費をいくらで置くかを決め、そこから引く
- 借入の返済額を引いて、最後に残る額を見る
- そのうえで、本部に7つの質問をして、自分の前提と本部の前提のズレを潰す
この順番でやれば、本部の資料に書かれた「月◯万円」に引っ張られずに判断できます。数字が合わないと分かったら、それは失敗ではなく、お金を払う前に気づけた成功です。
もし試算の途中で「この数字の置き方で合っているのか分からない」となったら、その時点で一度、外の目を入れてください。開業ジャパンでは無料のLINE相談を受け付けています。本部の資料をそのまま送っていただければ、どの数字が前提つきなのかを一緒に読み解きます。もちろん、相談したからといって加盟をすすめることはありません。
パン屋以外の選択肢も含めて条件を並べて比べたい方は、フランチャイズ一覧から初期費用・ロイヤリティ・本部モデルの公表条件を確認できます。
※記載した金額・条件は掲載時点の各本部公表値です。変更される場合がありますので、最新情報は必ず各公式サイトでご確認ください。
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