開業の基礎

居酒屋は本当に儲かるのか|売上から手元に残るまでの内訳を実データで見る

2026/8/16 更新

居酒屋は本当に儲かるのか|売上から手元に残るまでの内訳を実データで見る

居酒屋は儲かるのか|「売上」ではなく「残る額」で見る

「居酒屋は儲かるのか」と聞かれたとき、いちばん危ないのは月商(1ヶ月の売上)だけで判断してしまうことです。月商1,000万円の店と月商400万円の店を比べれば、前者のほうが儲かっていそうに見えます。けれど手元に残る額で見ると、逆転することは珍しくありません。

理由はシンプルで、居酒屋の売上はそのほとんどが出ていくお金だからです。仕入れ、スタッフの給料、家賃、電気代。これらを引いたあとに残ったものが利益で、そこからさらに借入の返済と税金を払って、ようやく自分の生活費になります。

この記事では、その「売上 → 手元」までの流れを、一般論ではなく実際に公表されている数字で追いかけます。開業ジャパン掲載の居酒屋ブランド3社の収支モデルと、政府統計による飲食店の店舗数データを使います。


前提:飲食店は全国に約50万店ある

まず、自分が入ろうとしている市場の大きさを押さえておきます。

項目数値
飲食店の全国事業所数499,193事業所
全産業の事業所数5,287,701事業所
全体に占める割合9.4%

出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和6年経済センサス-活動調査」を加工して作成

日本にある事業所のおよそ11軒に1軒が飲食店、という計算になります。産業を細かく分けた区分の中でも最多クラスです。

これは2つの意味を持ちます。ひとつは「参入しやすい」ということ。特別な国家資格がなくても、食品衛生責任者の講習を受ければ開業できます。もうひとつは「同じことをやる店が周りに山ほどある」ということです。

つまり居酒屋で儲かるかどうかは、業種を選んだ時点では決まりません。同じ月商でも利益が2倍違ってくる「内訳の作り方」で決まります。


売上100万円は、どこへ消えるのか

居酒屋の費用は、業界で「FLR」と呼ばれる3つが大半を占めます。

  • F(フード)= 食材の原価…仕入れ代
  • L(レイバー)= 人件費…スタッフの給料、社会保険料
  • R(レント)= 家賃…店舗の賃料と共益費

この3つの合計が売上の70%以内に収まっていれば健全、というのが業界でよく使われる目安です。裏を返すと、残りの30%で光熱費・販促費・消耗品・修繕をまかない、その後に残ったものが利益ということになります。

月商300万円の店をモデルにすると、こうなります(計算例です)。

項目比率金額
売上100%300万円
食材原価(F)30%90万円
人件費(L)30%90万円
家賃(R)10%30万円
FLR小計70%210万円
水道光熱費6%18万円
販促費(グルメサイト・SNS広告)3%9万円
消耗品・その他6%18万円
営業利益15%45万円

ここで一度立ち止まってほしいのが、この45万円はまだ「あなたの給料」ではないという点です。個人事業として開業した場合、店主の生活費はこの45万円の中から出します。さらに開業時に借りたお金の返済がここに乗ってきます。

仮に1,000万円を10年で返す場合、元金だけで月およそ8.3万円。利息を足すと月9万円前後です。45万円 − 9万円 = 36万円。ここから所得税・住民税・国民健康保険料を払うと、実際に自由に使えるのは月25万〜30万円程度、というのが現実的な着地です。

月商300万円=年商3,600万円の店の店主の手取りが、月25万円台。 これが「売上から手元に残るまで」の距離感です。

居酒屋の売上が原価・人件費・家賃を通って手元に残るまでの流れ


実在ブランド3社の数字を、そのまま並べる

ここからは架空の計算ではなく、開業ジャパンに掲載しているフランチャイズ本部が公表しているモデル数値を見ていきます。

ブランド業態初期費用加盟金ロイヤリティモデル売上月間利益(本部公表)投資回収
大衆酒場 むに居酒屋1,630万円150万円売上の5%月商1,200万円月300万円1年
大衆酒泉テルマエ大衆酒場1,926万円300万円売上の3%月商600〜1,200万円月120〜240万円(売上の20%程度)半年〜1年半
たこ焼き酒場たこまるたこ焼き居酒屋890万円(10坪店舗)100万円売上の5%月商350〜500万円月60〜120万円2年

※金額はいずれも本部公表値です。物件条件や時期によって変動します。加盟を検討する際は必ず各本部の最新情報をご確認ください。数値は目標モデルであり、この通りの収益が保証されるものではありません。

大衆酒場 むに:粗利824万円から、利益は269万円になる

むにの平均店モデルを、内訳まで開くとこうなります。

項目金額
月間売上(平均店)1,224万円
食材原価(32.7%)400万円
粗利益824万円
加盟店オーナー利益269万円
投資回収1年

注目してほしいのは、粗利益824万円と、オーナーの手元に残る269万円のあいだに、555万円の差があることです。この555万円が人件費・家賃・光熱費・ロイヤリティ(売上の5%=約61万円)などにあたります。

食材代を引いた時点では「824万円も残った」と見えますが、実際に残るのはその3分の1弱。売上に対する利益率は約22%です。飲食業としては高い水準ですが、それでも売上の8割近くは出ていくということです。

初期費用1,630万円の内訳も公表されており、加盟金150万円・居抜き物件の取得費600万円・内外装費400万円が主な柱です。居抜き(前のお店の設備を引き継ぐ物件)を使うことで、内装費を抑える設計になっています。

大衆酒泉テルマエ:原価率21%という設計

テルマエの平均店モデルは、原価の考え方が対照的です。

項目金額
月間売上(平均店)829万円
原価174万円(売上の約21%)
粗利益655万円
加盟店オーナー利益(平均店)155万円
黒字化・投資回収半年〜1年半

原価率21%は、むにの32.7%と比べて11ポイント以上低い数字です。同じ月商800万円台なら、この差だけで月90万円近く違ってきます。

この差はコンセプトから来ています。テルマエは卓上の蛇口からハイボールが出るセルフ飲み放題の業態で、ドリンク比率が高く、フードは低原価のものが中心です。ドリンクは食材と比べて原価率が低いため、飲みの比率が上がるほど原価率は下がります。加えてモバイルオーダー(お客さんがスマホで注文する仕組み)でホールの人手を減らしています。

一方で初期費用は1,926万円と3社の中で最も高く、加盟金も300万円。ロイヤリティは売上の3%と低めです。「初期投資は重いが、毎月の変動費は軽い」タイプと言えます。

たこ焼き酒場たこまる:投資を抑えて、規模も抑える

項目金額
月間売上(10坪・15〜20席)377万円
月間売上(20坪・30〜40席)441万円
原価128〜141万円
営業利益60〜120万円
黒字化まで2〜3ヶ月
投資回収2年

10坪型なら初期費用890万円。むにやテルマエの半分以下です。そのぶん月商も377万円と小さくなりますが、黒字化まで2〜3ヶ月という早さが特徴として挙げられています。

売上の軸が店内飲食だけでなく、テイクアウト・デリバリー・出前と複数あるのも構造上の違いです。居酒屋は夜だけの商売になりがちですが、たこ焼きは昼のおやつ需要も拾えます。時間帯を分散させると、同じ家賃で稼げる時間が増えます。


3社を並べて見えてくること

数字を横に並べると、居酒屋の収益構造の「効きどころ」がはっきりします。

1. 原価率の10ポイントは、努力では埋まらない

むに32.7%とテルマエ21%の差は、店主の頑張りの差ではなく業態設計の差です。月商800万円なら年間で1,000万円以上の違いになります。開業前にどの業態を選ぶかが、開業後の努力より効いてしまう部分です。

2. 投資額と回収期間は比例しない

ブランド初期費用投資回収
むに1,630万円1年
テルマエ1,926万円半年〜1年半
たこまる890万円2年

いちばん安いたこまるが、いちばん回収に時間がかかるモデルになっています。投資が小さいぶん利益の絶対額も小さいためです。「初期費用が安い=早く回収できる」ではありません。

3. ロイヤリティの%は、額に直して比べる

売上の5%と3%は、数字だけ見ると2ポイント差です。しかし月商1,200万円なら、5%=60万円、3%=36万円で、月24万円の差になります。年間288万円。%のままではなく、自分が見込む月商を掛けた「円」で比べてください。


儲からない居酒屋に共通する、5つのつまずき

数字が示す落とし穴を、行動レベルに落とすとこうなります。

  1. 人件費を「時給×人数」でしか見ていない…社会保険料や採用にかかる広告費が抜けがちです。実務では給料の1.15〜1.2倍で見ておくと近くなります。
  2. 家賃を売上の10%以内に収められていない…家賃は売上が落ちても1円も減りません。固定費の中で最も逃げられない項目です。
  3. オープン後3ヶ月分の運転資金を持っていない…開業資金を内装に使い切ってしまい、客足がつく前に資金が尽きるパターンです。設備費とは別に、3〜6ヶ月分の固定費を確保しておきます。
  4. 店主の給料を経費に入れていない…「利益45万円」と喜んでいたら、それが自分の給料だった、というのはよくある勘違いです。
  5. 売れ筋を数字で追っていない…どのメニューがいくつ出たかを記録していないと、原価率を下げる打ち手が「なんとなく」になります。

地方で開業を考えている人が、追加で見るべき3点

地方は家賃が安いぶん有利に見えますが、条件が都市部とは違います。

客数の上限が読める

商圏人口が限られるため、「頑張れば売上が伸びる」余地は都市部より小さくなります。逆に言えば上限が読めるので計画は立てやすい。月商400万円が上限の立地で月商800万円の計画を立てないことが大事です。

車社会は来店手段が限られる

お酒を出す店にとって、飲酒運転の問題は集客に直結します。代行タクシーの有無、駅からの距離、送迎の可否は、都市部よりはるかに重い判断材料です。

人が集まりにくい

人件費の単価は都市部より低くても、そもそも応募が来ないことがあります。テルマエのモバイルオーダーやたこまるのテイクアウト主体のように、少人数で回る仕組みを持つ業態は、地方ではとくに現実的な選択肢になります。

なお、開業時の資金には国や自治体の補助金・助成金が使える場合があります。地域によって内容も締切も違うため、必ず公式サイトで最新情報を確認してください。


フランチャイズ本部の数字を見るときのチェック項目

本部が出す収支モデルは「うまくいったときの姿」です。契約前に、以下は必ず質問してください。

  • そのモデル売上は平均店の数字か、上位店の数字か
  • 利益は店主の給料を引いた後か、前か
  • 初期費用に物件取得費・運転資金が含まれているか
  • ロイヤリティは売上に対してか、粗利に対してか
  • 契約期間と、途中解約したときの違約金

3社のうち、むには「平均店」、テルマエも「平均店」と明記されています。この表記があるかどうかで、数字の信頼度はかなり変わります。


参考:居酒屋以外の選択肢と比べると

主題からは外れますが、投資額と利益率の関係を掴むために1つだけ他業種を挙げます。

おそうじのえるというお掃除・お庭サービスのブランドは、初期費用105万円〜、月商132万円に対して手取り約62万円(利益率62%・オーナー1名稼働モデル)という数字を公表しています。ロイヤリティは売上の25%と高めです。

売上の規模は居酒屋の3分の1以下ですが、在庫も客席も持たないぶん利益率が高く、投資も小さい。 居酒屋は「大きく投資して大きく回す」、こちらは「小さく始めて手元に残す」。どちらが良いかではなく、自分が用意できる資金と、目指す手取りの額で決まります。


まとめ

  • 飲食店は全国に約50万事業所。参入しやすい反面、競合も多い(出典:e-Stat「令和6年経済センサス-活動調査」)
  • 売上のうち手元に残るのは、うまく設計できて15〜22%程度。粗利益と最終利益は別物
  • 原価率は業態設計でほぼ決まる(実データで21%〜32.7%の開きがある)
  • 初期費用の安さと回収の早さは比例しない
  • ロイヤリティの%は、見込み月商を掛けた「円」で比較する

居酒屋が儲かるかどうかは、業種の問題ではなく内訳の問題です。そして内訳のかなりの部分は、開業する前の業態選びと物件選びで決まってしまいます。

まずは各ブランドの初期費用・原価率・利益モデルを並べて見比べたい方は、フランチャイズ一覧から気になるブランドの数字をチェックしてみてください。「自分の資金額だと、どの規模の店が現実的なのか」「この立地でこの月商は成り立つのか」を一緒に計算したい段階でしたら、無料のLINE相談で気軽に質問いただけます。物件も資金も決まっていない状態で構いません。むしろ契約書にサインする前が、いちばん相談の価値がある時期です。

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