「家賃がいらないから儲かる」「1日で20万円売れた」。キッチンカーの話には、威勢のいい数字がよく出てきます。そのほとんどは**月商(げっしょう=1か月にレジを通ったお金の合計)**か、**営業利益(えいぎょうりえき=売上から経費を引いた儲け)**の話です。あなたの財布に入る額ではありません。
この記事では、キッチンカーでの開業に対応している実在フランチャイズの公表数値を土台に、売上が生活費になるまでを関門ごとに削っていきます。ゴールは、あなたが自分の地域の数字で電卓を叩けるようになることです。
キッチンカーは儲かるのか|結論は手取り月12万〜20万円が現実線
先に結論のレンジ表を出します。オーナー1人で回す前提です。
| 稼働の型 | 月の営業日数 | 月商 | 営業利益 | 手元に残る目安 |
|---|---|---|---|---|
| 週末・イベント中心(副業型) | 6〜8日 | 15〜30万円 | 1〜8万円 | 月0〜5万円 |
| 平日ランチ主体・ワンオペ | 18〜22日 | 60〜90万円 | 18〜30万円 | 月12〜20万円 |
| 好立地×高稼働・2人体制 | 22日前後 | 120〜180万円 | 35〜60万円 | 月22〜40万円 |
この表の営業利益は、すべて「返済前・税前・自分の人件費含まず」の数字です。(編集部逆算/収益を保証するものではありません)
この但し書きが、この記事でいちばん大事な一行です。世の中に出回るキッチンカーの利益額は、ほぼ例外なくこの状態で語られます。ここから、
- 借りたお金の返済(利益から出ていくのに、経費にはならない)
- 所得税・住民税・国民健康保険・国民年金
- あなた自身の給料(そもそも計算に入っていない)
を引いて、ようやく生活費になります。営業利益27万円が、家計に届くころには18万円前後になっている。これがキッチンカーの平均的な着地です。
売上80万円が手元18万円になるまで|5つの関門で分解する
具体的に削ります。アサイーボウル専門店「J BOWL」のキッチンカー・間借り型を例にします。本部が公表している条件は次のとおりです。
- 初期費用:175万円(キッチンカー・間借り型) ※店舗型は295万円
- 加盟金:50万円 ※店舗型は100万円
- ロイヤリティ:売上の10% + SNS運用代行 月3万円(必須)
- 平均客単価 1,800円/原価率 27%(他社平均33%)/損益分岐点 1日13杯・最小人員1名
損益分岐点1日13杯は、逆算すると1日23,400円。月22日で約51万円です。まずはここを超えるのが第一歩になります。
では1日20杯・月22日、月商約80万円だとどうなるか。編集部で内訳を組みます。
| 項目 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|
| 売上 | 800,000円 | 客単価1,800円 × 約445杯 |
| ① 材料原価 27% | ▲216,000円 | 本部公表の原価率 |
| ② ロイヤリティ 10% | ▲80,000円 | 本部公表 |
| ② SNS運用代行 | ▲30,000円 | 必須。売上ゼロでも毎月かかる |
| ③ 出店場所代 15% | ▲120,000円 | 編集部想定。売上歩合が一般的 |
| ④ 車両維持(燃料・駐車場・保険・車検積立) | ▲50,000円 | 編集部想定 |
| ④ 容器・消耗品 3% | ▲24,000円 | 編集部想定 |
| ④ 通信・雑費 | ▲10,000円 | 編集部想定 |
| 営業利益 | 270,000円 | 返済前・税前・自分の人件費含まず |
(編集部逆算)

ここからが本番です。
関門⑤:返済。 175万円を日本政策金融公庫の創業融資で7年借りたとすると、月々の返済はおよそ2.2万円(元金・利息込みの概算)。残り24.8万円。
関門⑥:税金と社会保険。 事業の利益が年324万円のとき、青色申告特別控除や基礎控除を引いたあとの所得税・住民税に、国民健康保険料と国民年金保険料を足すと、年70〜90万円=月6〜7万円前後が出ていきます。家族構成と自治体で大きく変わるため、必ずお住まいの市区町村の公式サイトで確認してください。
結果、月商80万円 → 手元に残るのは月18万円前後(編集部逆算)。
「思ったより少ない」と感じたなら、その感覚が正しいです。そしてもう一つ、伸ばしたときの効き方も知っておいてください。月商を80万円から120万円に増やしても、増えた40万円のうち手元に残るのは約18万円です。原価もロイヤリティも場所代も売上に比例して増えるからです。売上1.5倍=手取り1.5倍にはなりません。ここを勘違いすると、体力の限界まで出店枠を詰め込む計画を組んでしまいます。
実在ブランドの数字で確かめる|キッチンカー型は条件がまるごと違う
キッチンカー開業に対応している掲載2ブランドを、項目ごとに並べます。
| 項目 | お結びみこと | J BOWL |
|---|---|---|
| 業態 | おむすび専門店(2坪〜/キッチンカー可) | アサイーボウル専門店(キッチンカー・間借り型) |
| 初期費用 | 80万円 | 175万円 ※店舗型は295万円 |
| 加盟金 | 30万円 | 50万円 ※店舗型は100万円 |
| ロイヤリティ | 売上の10% | 売上の10% + SNS運用代行 月3万円(必須) |
| 本部公表の売上モデル | 月商20万〜40万円 | 客単価1,800円/損益分岐 1日13杯 |
| 本部公表の月間利益 | 月10万〜20万円 | 月86万円(平均的なお店)/189万円(繁盛店)※店舗型のモデル |
| 回収目安 | 約6ヶ月/黒字化は初月から | 約4ヶ月(初期投資300万円 ÷ 月86万円) |
| 契約期間 | 3年(違約金なし) | 3年・自動更新/解約は3ヶ月前申告・違約金なし |
| この利益額の前提 | 返済前・税前・オーナー自身の人件費含まず | 同左 |
※いずれも本部公表値。金額・条件は時期により変動するため、最新情報は必ず各本部の公式資料で確認してください。
この表から読み取ってほしいことが3つあります。
① 本部の収支モデルが「店舗型」の数字であることがある。 J BOWLの月間営業利益86万円は、本部資料の**お店(店舗型)**のモデルです。キッチンカー型の利益として公表されているわけではありません。加盟相談では必ず「この86万円は店舗型ですか、キッチンカー型ですか」「キッチンカー型で稼働している店の実績はありますか」と聞いてください。ここを確認しないまま契約するのが、いちばん多い失敗です。
② 初期費用が安い=有利、ではない。 お結びみことは80万円で始められ、回収目安も約6ヶ月と軽い。ただし公表モデルの月商は20万〜40万円、営業利益は月10万〜20万円です。これは専業の生活費としては足りません。本部も対象として「既存店のメニューを増やしたい方」を挙げており、本業や既存店の横に足す型として設計されています。同じ「キッチンカーでできる」でも、狙っている勝ち方が違います。
③ 固定で出ていくロイヤリティに注意。 J BOWLのSNS運用代行 月3万円は、売上がゼロでも払うお金です。月商30万円の月なら売上の10%に相当し、変動ロイヤリティ10%と合わせて実質20%になります。雨と台風で出店できなかった月に、これが効いてきます。
なお、J BOWLの投資回収「約4ヶ月」は、初期投資300万円 ÷ 月86万円という計算です。ただし本部側も初期費用295万円に物件取得費・造作・厨房設備は含まれないと明示しています。キッチンカー型なら、車両費が175万円に含まれるのか別途なのかで総投資額が数百万円変わります。回収期間を自分で計算し直すために、ここは最初に確認すべき一点です。
下振れはどこで起きるか|稼働日数と場所代の2つだけ
キッチンカーの収支が計画から外れるとき、原因はほぼこの2つに絞られます。
下振れ要因1:稼働日数
先ほどのモデルは月22日稼働でした。ここが崩れます。固定費(SNS運用代行3万円+車両維持5万円+通信雑費1万円=月9万円)は、出店しない日も減りません。
| 月の稼働日数 | 月商(1日20杯・単価1,800円) | 営業利益 |
|---|---|---|
| 22日 | 79.2万円 | 26.6万円 |
| 18日 | 64.8万円 | 20.2万円 |
| 14日 | 50.4万円 | 13.7万円 |
| 10日 | 36.0万円 | 7.2万円 |
| 6日 | 21.6万円 | 0.7万円 |
(編集部逆算/変動費は売上の55%、固定費は月9万円で計算)
22日が18日に減るだけで、営業利益は2割落ちます。 大雨、台風、猛暑、厳寒、車の故障、体調不良、出店枠が取れなかった日。これらを合計すると、年間の平均稼働日数が計画より2〜4日少ないのはごく普通です。
計画は「月22日」ではなく「月18日」で組んでください。18日で生活が回る計画なら、22日出られた月は貯金ができます。逆をやると、毎月足りない理由を探すことになります。
下振れ要因2:場所代
キッチンカーにとっての家賃が、出店料です。多くは売上歩合制(売れた額の何%かを払う方式)で、出店先によって幅が大きく違います。
| 出店先 | 場所代の一般的な形 | 特徴 |
|---|---|---|
| オフィス街・工場前 | 固定 3,000〜5,000円/日、または売上の10〜15% | 平日ランチが読める。競合が入ると分散する |
| 商業施設・スーパー前 | 売上の15〜20% | 集客力は高いが、取り分は薄い |
| イベント・フェス | 売上の15〜25%+出店料 | 1日の売上は大きいが、日程が不安定 |
| 自社・知人の敷地 | 無料〜数千円 | 場所代は浮くが、集客は完全に自力 |
※編集部が一般的な条件を整理した目安です。契約前に個別に確認してください。
歩合が15%か20%かの差は、月商80万円なら月4万円、年間48万円。手取りの約3か月分が、この5%に乗っています。契約書の歩合率は、値切る余地があるかどうかも含めて必ず確認してください。
キッチンカーだけにある落とし穴
店舗型の飲食店にはない、移動販売固有の論点です。数字を詰める前に、ここを潰しておく必要があります。
- 営業許可は保健所の管轄ごと。 車両の営業許可は、営業する地域を管轄する保健所で取るのが原則です。都道府県をまたいで出店する計画なら、その分の手続きが必要になるケースがあります。「隣県のイベントに呼ばれたのに、許可がなくて出られない」は実際に起きます。必ず出店予定地の保健所に事前相談してください。
- 自宅の台所で仕込みはできない。 家庭用キッチンで作ったものを販売することは認められていません。車内で完結しない仕込みがある業態は、シェアキッチンや仕込み専用施設を別途借りることになり、月2〜4万円の固定費が乗ります。J BOWLのようにセントラル工場で製造したものを店で盛るだけの設計は、この費用と手間を回避しやすい構造だと言えます。
- 給水・排水タンクの容量で、扱える調理が変わる。 タンクの容量区分によって、提供できる品目や調理工程に制限がかかることがあります。車両を買ってから知ると取り返しがつきません。 要件は自治体で異なるため、車両を決める前に保健所で確認してください。
- 売上の天井は「ピークの2時間」で決まる。 席がないキッチンカーの勝負は、ランチの2時間に集中します。1時間に何食さばけるかが、そのまま売上の上限です。J BOWLの「最小人員1名・1日13杯で損益分岐」という設計は、この天井の低さを、原価率27%と固定費の軽さで補う考え方だと読めます。オペレーションが複雑な業態をキッチンカーでやると、行列ができても売上は伸びません。
- 車を買う前に、出店枠を押さえる。 順番を逆にする人がとても多いところです。平日ランチの定期枠が確保できるかどうかで、収支は倍近く変わります。枠のあてがないまま車を作ると、300万円の資産が週末しか動かない状態になります。
- 車両は資産ではなく消耗品。 車検、タイヤ、冷蔵設備の修理、エンジントラブル。中古から始めるほど、この積立を毎月の経費に入れておく必要があります。
背景|なぜ家賃を持たない形が選ばれるのか
飲食店は全国に499,193事業所あり、事業所数では産業小分類の1位です(出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和3年経済センサス-活動調査」を加工して作成)。それだけ競争が激しく、だからこそ家賃と内装費を持たずに始められる形に関心が集まっています。原価率やFL比率といった飲食店共通の考え方は、カフェは本当に儲かるのかと無店舗で開業する方法で整理しています。
キッチンカーの本質的な強みは、家賃という固定費を、場所代という変動費に置き換えられることです。店舗なら売上ゼロでも家賃20万円が出ていきますが、キッチンカーは出店しなければ場所代はかかりません。潰れにくい構造です。
その裏返しが、天井の低さ。席がなく、営業時間は限られ、雨の日は動けません。「大きく儲ける業態」ではなく、「小さく始めて、潰れずに続けながら次の一手を探す業態」と捉えるのが実態に近い、というのが編集部の見方です。
フランチャイズに加盟せず自力で始める場合の資金目安も置いておきます。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 車両(中古軽トラ+架装) | 150〜300万円 |
| 車両(新規製作・キッチン一式) | 300〜600万円 |
| 調理機材・冷蔵冷凍設備 | 30〜80万円 |
| 営業許可・食品衛生責任者講習 | 2〜4万円 |
| 車両保険・自動車税・登録関係 | 10〜20万円 |
| 什器・容器・のぼり・POP | 10〜30万円 |
| 運転資金(3か月分) | 60〜120万円 |
※編集部が一般的な小規模開業を想定して整理した目安です。許可の手数料や要件は自治体ごとに異なり、創業融資や補助金の条件も年度で変わります。必ず営業予定地の保健所・市区町村と、各制度の公式サイトで最新情報を確認してください。
契約・購入の前に確認する3つの数字
長くなったので、最後に確認事項を3つに絞ります。
- ピーク時間に何食さばけるか。 実際に厨房の動線で作ってみて計測してください。これが売上の天井そのものです。
- 月の稼働日数を18日で置いたときの利益。 22日の計画は必ず崩れます。18日で生活が回るかどうかだけを見てください。
- 売上ゼロの月に出ていくお金。 駐車場・保険・仕込み場所・固定ロイヤリティ・返済。この合計が、あなたが毎月背負う下限です。
「キッチンカーは儲かるのか」への正直な答えは、平日ランチの出店枠を安定して確保できるなら、手取り月12万〜20万円は現実的な射程に入る。枠が取れなければ、車があっても売上は立たない、というところです。必ず儲かる業態ではありません。ただし、固定費が軽いぶん撤退しやすく、失敗しても傷が浅く済む業態でもあります。
同じ「キッチンカー可」でも、お結びみことのように本業に足す型と、J BOWLのように専業で回す型では、必要な資金も働き方も別物です。初期費用・ロイヤリティ・収支モデルはフランチャイズ一覧で条件ごとに比べられます。
この記事の数字を、あなたの地域の場所代と稼働日数に置き換えるとどうなるか。確認したい方は無料LINE相談もあります。「この歩合率で成り立ちますか」「車両は中古と新規どちらが妥当ですか」といった1点だけの質問でも構いません。急いで決める話ではないので、判断材料が足りないと感じたときにだけ使ってください。
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