先に数字を1つ置きます。無店舗のお掃除フランチャイズ「お掃除のえる」の本部公表モデルは、月商132万円・オーナー手取り約82万円(返済前・税前・オーナー1名稼働)。悪くない数字に見えますが、この売上から本部へ毎月**ロイヤリティ33万円(売上の25%)**が出ていきます。
「フランチャイズオーナーはやめとけ」という言葉は、だいたいこの33万円の重さを、契約した後で初めて実感した人から出てきます。業種が悪いのでも、本部が悪いのでもなく、契約前に確認できたはずのことを確認しないまま始めてしまった——後悔の中身は、驚くほど同じ5つに集中します。
この記事では、その5つを順番に分解し、それぞれ「契約前なら消せる回避策」をセットで書きます。地方在住で、初めて1人で開業する人を想定しています。
フランチャイズオーナーはやめとけ、と言われる5つの理由|先に結論
後悔の正体を先に表にします。右端が、契約書にハンコを押す前にやっておけば消せる作業です。
| # | 後悔の内容 | 何が起きるか | 契約前にやること |
|---|---|---|---|
| 1 | ロイヤリティは「利益」でなく「売上」から引かれる | 赤字の月でも本部への支払いが発生する | 計算の元になる金額(売上か粗利か)を契約書で確認 |
| 2 | 「本部がやってくれる」の範囲が曖昧だった | 集客が自己責任になり、広告費が二重に出ていく | 広告分担金の金額と、その対価に含まれる作業を一覧でもらう |
| 3 | 手取りに自分の人件費が入ったまま判断した | 時給換算すると前職以下だったと後から気づく | モデル収支に「自分の給料」が含まれているか聞く |
| 4 | 商圏(テリトリー)の約束がなかった | 近所に同じ看板の店ができて売上が割れる | 独占商圏の有無・範囲・期間を契約書の条文で確認 |
| 5 | やめるときに一番お金がかかる | 中途解約金・原状回復・競業避止で辞められない | 解約条項と競業避止条項を、契約前に声に出して読む |
5つとも共通しているのは、**「始めた後では交渉できないが、始める前なら質問できる」**という点です。やめとけと言われる理由の多くは、業種のリスクではなく、情報の非対称——本部は知っていて、加盟する側が聞かなかったこと——から生まれています。
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後悔1|ロイヤリティは「利益」ではなく「売上」から引かれる
ロイヤリティとは、看板・ノウハウ・本部サポートを使う対価として毎月本部に払うお金です。問題は計算の元になる金額で、多くのフランチャイズは**売上(または粗利)に対して◯%**という決め方をします。利益に対してではありません。
つまり、赤字の月でも満額払います。ここが、自分1人の独立開業との一番大きな違いです。
お掃除のえるの本部公表モデルで見てみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 想定月商(オーナー1名稼働) | 132万円 |
| ロイヤリティ(売上の25%) | ▲33万円 |
| 広告分担金 | ▲10万円 |
| その他経費(差引) | ▲約7万円 |
| 返済前・税前に残る額 | 約82万円(利益率62%) |
| 返済後 | 初期費用105万円を全額借入した場合、月返済は約1.3万円が目安。差し引き約80万円台前半(編集部逆算) |
| 自分の人件費の扱い | 含まず。この82万円は、オーナー1名が現場で働いた対価そのもの |
※金額は本部公表値。キャンペーンや時期によって変動します。最新の条件は公式サイト・本部資料で必ず確認してください。詳細はお掃除のえるの掲載ページにあります。
ここで大事なのは、月商が落ちた月に何が起きるかです。仮に月商が半分の66万円になっても、ロイヤリティは25%のまま16.5万円、広告分担金10万円は定額なので満額。固定費と本部への支払いが先に出ていき、残りが自分の取り分になります。
回避策
- 契約書で「ロイヤリティの計算の元になる金額」が売上高か、粗利か、定額かを特定する
- 売上が想定の50%・70%になった月の数字を、自分で1回計算しておく(本部のモデル収支は、たいてい好調な月を示したものです)
- 方式ごとの損得はフランチャイズのロイヤリティ相場で整理しています
後悔2|「本部がやってくれる」の中身を確かめていなかった
説明会で一番気持ちよく聞こえるのが「集客は本部がやります」です。しかしこの一言の中身は本部によってまったく違い、チラシのデザインだけ渡して配布は加盟店負担というケースもあれば、配布まで本部が代行するケースもあります。
お掃除のえるの場合、月10万円の広告分担金に対して、本部がチラシのデザインとエリア配布、YouTube、SNS、WEB広告を代行する形になっています。月43万円(ロイヤリティ33万円+広告分担金10万円)という支払いの中身は、言い換えれば集客という一番しんどい作業の外注費です。
この見方ができると、ロイヤリティが高い・安いだけで本部を比べるのが意味を持たなくなります。見るべきは「いくら払うか」ではなく、払った額に対して何が返ってくるかです。
| 確認すること | 良い回答の例 | 危ない回答の例 |
|---|---|---|
| 広告分担金の使途 | 配布エリア・部数・媒体まで具体的に出てくる | 「本部全体のブランディングに使います」 |
| 集客の実績 | 直近の加盟店で、1ヶ月の問い合わせ件数が出てくる | 「やる気次第です」 |
| 追加の販促費 | 加盟店が自腹で出す販促費の目安額が出てくる | 「特にありません」(実際は出ていることが多い) |
回避策
- 「本部がやること」「加盟店がやること」を紙の一覧でもらう。口頭説明だけで進めない
- 既存加盟店に1店でも電話し、実際に問い合わせが何件来ているか聞く(本部に紹介を依頼してよい)
- 聞くべき項目はFC説明会で必ず聞くべき10の質問にまとめています

後悔3|手取りに「自分の人件費」が入ったまま判断していた
これが、数字に強い人でも引っかかる落とし穴です。フランチャイズ本部が出すモデル収支の「手取り」「オーナー利益」には、オーナー自身の給料が引かれていないことがほとんどです。
先ほどの82万円も同じで、これは「オーナー1名が現場で働いた対価」です。投資のリターンではありません。だから正しく比べるには、働いた時間で割る必要があります。
お掃除のえるのモデルを、1件2万円の作業と仮定して時間に直してみます(以下はすべて編集部逆算です)。
| 項目 | 計算 |
|---|---|
| 月商132万円 ÷ 1件2万円 | 月66件 |
| 月66件 ÷ 月22日稼働 | 1日3件 |
| 1日の拘束時間(移動・見積・事務込み) | 約10時間と仮定 |
| 月の労働時間 | 約220時間 |
| 手取り82万円 ÷ 220時間 | 時給 約3,700円(編集部逆算) |
時給3,700円は、会社員の給与と比べればかなり高い水準です。ただしここから国民健康保険・国民年金・所得税・住民税を自分で払い、有給も退職金もありません。そこまで引いて、前職の手取りと並べて初めて「独立する意味があるか」の判断ができます。
逆に言えば、この計算をせずに「月82万円も残るのか」と判断した人が、半年後に「思ったより割に合わない」と感じる——これが3つ目の後悔です。
回避策
- 本部のモデル収支に自分の給料が含まれているかどうかを、必ず口頭で確認する
- 月の想定件数 × 1件あたりの作業時間を自分で計算し、時給に直す
- 社会保険料・税金を引いた後の金額で、前職の手取りと比べる
- 数字を自分で動かしたい方はFC投資回収シミュレーターが使えます
後悔4|商圏(テリトリー)の約束がなく、近所に同じ看板が立った
地方で開業する人にとって、これは収入を直撃します。商圏(テリトリー)とは、そのエリアで営業できる権利の範囲のこと。独占商圏(テリトリー権)があれば、本部は同じエリアに別の加盟店を入れません。
お掃除のえるは「半径10kmの独占商圏・1エリア1店舗」を条件に掲げています。半径10kmというのは、車で20分前後の範囲です。地方で1人・1台で回るなら、現実的に動ける広さと一致します。
逆に、独占商圏がない契約だと何が起きるか。人口の少ないエリアほど、同じ看板が2つ立った瞬間に売上が割れます。都市部なら需要が厚いので共存できても、商圏人口が限られる地方では、競合1店の追加が致命傷になりやすいのです。
確認したいのは次の4点です。
- 独占商圏があるか(「配慮します」ではなく、契約書の条文にあるか)
- 範囲の決め方(半径◯km、市区町村単位、人口◯万人単位のどれか)
- 期間(契約期間中ずっとか、最初の数年だけか)
- 直営店・ネット通販・他業態は対象外になっていないか(加盟店は入れないが本部の直営は入れる、という契約もあります)
商圏そのものの見方は商圏調査の基本に、人口より先に見るべき数字を書いています。
回避策
- 「独占商圏あり」と口頭で言われたら、契約書の何条に書いてあるかを指差してもらう
- 書かれていなければ、書面に追記できるか交渉する(できないなら、それも判断材料です)
- 自宅から半径10kmに何世帯あるかを、自治体の統計ページで調べておく
後悔5|やめるときに、一番お金がかかる
「やめとけ」と最も強く言われるのが、ここです。始めるときの加盟金や初期費用は誰でも気にしますが、辞めるときの費用を契約前に読んでいる人はほとんどいません。
フランチャイズ契約には、次のような条項が置かれていることがあります。金額や年数は契約書ごとにまったく違うので、必ず自分の契約書で確認してください。
| 条項 | よくある内容 | 契約前に聞くこと |
|---|---|---|
| 契約期間 | 3年・5年などの期間が設定される | 途中でやめた場合、何が発生するか |
| 中途解約金 | 残存期間のロイヤリティ相当額などが請求されることがある | 計算式を具体的な金額で出してもらう |
| 原状回復 | 看板・内装・備品を自費で元に戻す | 概算費用の目安 |
| 競業避止義務 | 解約後◯年間、同業の営業を禁止される | 年数・距離・対象業種の範囲 |
| 自動更新 | 更新時に更新料が発生することがある | 更新料の有無と金額 |
特に見落としやすいのが競業避止義務です。これは「やめた後、同じ業種を一定期間やってはいけない」という約束で、せっかく身につけた技術で独立し直す道が数年間ふさがれることがあります。業種ごと変えるしかなくなるため、実質的にやめた後のキャリアまで縛る条項です。
そして加盟金は、原則として返ってきません。フランチャイズの加盟金とはで詳しく書いていますが、「返ってこないお金」として扱うのが前提です。お掃除のえるの加盟金はキャンペーン適用時30万円〜(通常200万円)とされており、こうしたキャンペーンの適用条件・期限も契約書で確認すべき項目になります。
回避策
- 契約書の解約・競業避止・更新の3条項だけは、必ず声に出して読む
- 読んで意味が分からない条項は、その場でサインせず持ち帰る(持ち帰らせない本部は、それ自体が答えです)
- 12項目のチェックはフランチャイズ契約書のチェックリストにまとめています
地方・初心者が「やめとけ」を回避する3つの条件
ここまでの5つを踏まえると、地方在住で初めて開業する人が選ぶべき条件は、かなりはっきりします。
条件1:固定費(特に家賃)が小さいこと 売上が落ちた月に一番効くのは家賃です。無店舗型・自宅開業型なら、悪い月でも傷が浅く済みます。お掃除のえるが初期費用105万円〜で始められるのも、店舗も事務所も不要だからです。業種の選択肢は店舗なしで開業できる仕事7選にあります。
条件2:1人で回し切れる規模から始めること 人を雇った瞬間、売上が落ちても人件費は固定で出ていきます。まず自分1人で成立する規模を選び、忙しくて回らなくなってから増やす順番が安全です。
条件3:回収期間が読めること 初期費用が小さいほど、失敗したときの傷も小さくなります。105万円の投資なら、月の利益が30万円でも4ヶ月前後で回収できる計算です(編集部逆算)。一方で初期費用が1,000万円を超える業態は、数年単位で逃げられなくなります。
| 比べる軸 | 低資金・無店舗型 | 大型店舗型 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 数十万〜数百万円 | 1,000万円超も |
| 月の固定費 | 小さい(家賃なし) | 家賃・人件費が重い |
| 悪い月の耐久力 | 高い | 低い |
| 上限の売上 | 自分の稼働時間が天井 | 規模で伸ばせる |
どちらが優れているという話ではなく、失敗したときに生活が壊れない側から始めるのが、初めての開業では現実的です。向き不向きの整理はフランチャイズはやめたほうがいい?、撤退の実例はフランチャイズで失敗する人の共通点が参考になります。
契約前に本部へ送る、11の質問
最後に、ここまでの内容をそのまま質問文にしました。メールやLINEでコピーして送れます。答えが曖昧な項目が3つ以上あれば、その本部は保留でいいと思います。
- ロイヤリティの計算の元になる金額は、売上高・粗利・定額のどれですか
- 売上が想定の50%だった月の、ロイヤリティと固定費の合計はいくらになりますか
- 広告分担金で、本部が実施する作業を一覧でいただけますか
- 直近1年に開業した加盟店の、開業3ヶ月目の問い合わせ件数を教えてください
- モデル収支の「オーナー利益」に、オーナー自身の給料は含まれていますか
- モデル収支の想定稼働は、月何日・1日何時間ですか
- 独占商圏は契約書の第何条に書かれていますか。範囲と期間を教えてください
- 本部直営店は、その商圏に出店しない約束に含まれますか
- 契約期間中に解約した場合、発生する費用の計算式を教えてください
- 競業避止義務は、解約後何年・どの範囲・どの業種が対象ですか
- 加盟金のキャンペーン条件と適用期限を、書面でいただけますか
「フランチャイズオーナーはやめとけ」という言葉は、半分は正しく、半分は言いすぎです。正しいのは、契約書を読まずに始めると取り返しがつかないという点。言いすぎなのは、仕組み自体が悪いという部分で、集客という一番難しい機能を外注できる点には確かな価値があります。差が出るのは業種ではなく、ハンコを押す前に何を聞いたかです。
※この記事の金額はすべて本部公表値または編集部逆算で、時期や条件により変動します。制度・費用の最新情報は、必ず各本部の公式サイトと契約書でご確認ください。
自分に向いている業種から探したい方は開業診断を、具体的な条件を比べたい方はフランチャイズ一覧から、初期費用とロイヤリティを並べて見てみてください。
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