フランチャイズオーナーの年収は「月商」ではなく4回の引き算で決まる
加盟相談でいちばん多い勘違いが、これです。
「月商130万円って書いてあるから、年間1,500万円くらい入ってくるんですよね?」
入ってきません。月商(その月の売上の合計)は、お客さまから預かった金額であって、あなたのお金ではありません。そこから4回の引き算を通り抜けて、やっと「オーナーの年収」になります。
- 売上 →(材料費・車両費・広告費などを引く)→ 粗利
- 粗利 →(ロイヤリティ=本部に払う使用料を引く)→ 店の利益
- 店の利益 →(借入の返済を引く)→ 手元に残る現金
- 手元の現金 →(税金・社会保険料を引く)→ 自分と家族が使えるお金
多くの本部の資料が示すのは、だいたい2番目までです。3と4は自分で計算しないと出てきません。この記事では、実在ブランドの公表値を使って、1から4まで全部つないでみます。
先に結論の目安を、レンジ(幅)で置いておきます。無店舗型の清掃・サービス系フランチャイズで、オーナーが自分で現場に出る前提のモデルです。
| 立ち上がりの程度 | 月商 | 返済前・税前に残る額 | 返済後(月2万円と仮定) | 自分の人件費の扱い |
|---|---|---|---|---|
| 本部モデル通り | 132万円 | 約32万円(本部公表値) | 約30万円(編集部逆算) | 含まず(オーナー1名稼働) |
| モデルの6割 | 約79万円 | 約10〜15万円(編集部逆算) | 約8〜13万円(編集部逆算) | 含まず |
| モデルの3割 | 約40万円 | 赤字の可能性(編集部逆算) | 赤字(編集部逆算) | 含まず |
「自分の人件費を含まず」がこの表のいちばん大事な行です。 32万円は「オーナーが働いた分の給料」でもあります。人を雇ってこの数字を出しているわけではないので、あなたが現場に立たなくなった瞬間、この32万円は消えます。
実データで分解する:月商132万円が手取り32万円になるまで
使うのは、家事代行・お掃除サービスのフランチャイズ「おそうじ革命(お掃除・お庭サービス)」の本部公表値です。
| 項目 | 公表値 |
|---|---|
| 初期費用 | 105万円 |
| 加盟金 | 30万円(キャンペーン適用時。通常200万円) |
| ロイヤリティ | 売上の25% |
| モデル売上 | 月商132万円 |
| 手取り | 約32万円(利益率62%・オーナー1名稼働モデル) |
| 期間利益 | 月32万円(手取りモデル) |
→ ブランド詳細:おそうじ革命の募集要項
ここから、引かれている100万円(132万円 − 32万円)の中身を追います。
| 段階 | 金額 | 出どころ |
|---|---|---|
| 月商 | 132万円 | 本部公表 |
| ロイヤリティ(売上の25%) | −33万円 | 132万円×25%(編集部逆算) |
| その他の経費(材料・車両・広告・通信など) | −約67万円 | 差額から算出(編集部逆算) |
| 残る額(返済前・税前) | 約32万円 | 本部公表 |
| 借入返済(仮に100万円を5年返済) | −約2万円 | 編集部逆算 |
| 自分の人件費 | 含まず | オーナー1名稼働モデルのため |
ここで一つ、本部に必ず確認してほしい数字があります。公表されている「利益率62%」です。
- もし62%がロイヤリティを引く前の粗利率なら → 132万円×62%=約81.8万円 → ここから33万円のロイヤリティを引いて約48.8万円 → さらに約17万円の諸経費で32万円(編集部逆算)
- もし62%がロイヤリティを引いた後の率なら → 引かれる経費の内訳はまったく別の形になります
同じ「62%」でも、意味が違えば、売上が下がったときの落ち方がまるで変わります。ロイヤリティは売上に比例して減りますが、車両のリース代や通信費は売上が半分になっても半分にはなりません。「その62%は、どこまで引いた後の数字ですか?」——この一文を説明会で聞けるかどうかで、判断の精度が変わります。

その32万円は、まだ「年収」ではない
月32万円 × 12ヶ月 = 年384万円(返済前・税前・自分の人件費含まず/編集部逆算)。
多くの人はここで「年収384万円か」と受け取りますが、個人事業主(会社に雇われず自分で商売をする人)の場合、ここからさらに引かれます。
| 引かれるもの | 内容 |
|---|---|
| 国民健康保険料 | 会社員時代のように会社が半分払ってくれません |
| 国民年金保険料 | 同上。全額自己負担 |
| 所得税・住民税 | 前年の所得に対してかかるため、2年目に一気に来る |
| 個人事業税 | 業種と所得額によってかかる場合がある |
金額は家族構成・お住まいの自治体・青色申告(帳簿をきちんとつけると控除が受けられる制度)の使い方で大きく変わるため、ここで断定的な数字は出しません。ただ、感覚として**「会社員の年収384万円」と同じ暮らしにはならない**とだけは、はっきり言えます。会社員なら会社が半分負担していた社会保険料が、まるごと自分に乗るからです。
とくに事故が多いのが、2年目の税金です。1年目に頑張って利益を出し、その現金を設備や生活に使い切ってしまうと、翌年の住民税・国民健康保険の請求が来たときに払えなくなります。売上は順調なのに現金が尽きる、という状態です。利益の2〜3割は、税金用の別口座に手をつけずに置いておく——これは加盟の成否とは関係なく、独立した人全員に共通する自衛策です。
※税額・保険料の計算は個人の状況で大きく変わります。最新の制度と自分の場合の金額は、必ずお住まいの自治体窓口や税理士で確認してください。
下振れするのはこの3条件
モデル通りにいかないとき、原因はだいたいこの3つに絞られます。
1. 稼働日数が埋まらない 清掃・サービス系は、1日に入れられる件数に上限があります。月商132万円を出すには、それに見合う件数が毎月入り続ける必要があります。開業3ヶ月目に、何件入っている想定ですか?——本部のモデルが「軌道に乗った後」の数字なのか、「初月から」の数字なのかで、必要な運転資金がまったく変わります。
2. 集客を本部に頼りきる 「本部から仕事が回ってくる」タイプの契約は、回ってくる件数が本部の広告予算に左右されます。直近1年で、1加盟店あたり月平均何件を送客しましたか? 答えられない、あるいは「エリアによります」で終わるなら、自分で集客する前提で計画を立てるべきです。
3. 自分が動けなくなる オーナー1名稼働モデルの最大の弱点です。風邪、家族の入院、腰痛。1人で回している商売は、自分が止まると売上がゼロになります。人を雇えば止まりませんが、その人件費は上の32万円には入っていません。
オーナー1名稼働モデルの天井を、自分の時給で見る
32万円という数字は、金額だけ見れば悪くありません。ただ、これを時給に割り戻すと、判断材料が一段はっきりします。
| 月の稼働 | 月32万円を時給に直すと(編集部逆算) |
|---|---|
| 週5日・1日8時間(月約173時間) | 約1,850円 |
| 週6日・1日9時間(月約234時間) | 約1,370円 |
| 週6日・1日11時間(月約286時間) | 約1,120円 |
※上表は「返済前・税前」の32万円をそのまま割ったものです。返済後・税引き後で見ると、さらに下がります。
これは「割に合わない」という話ではありません。同じ32万円でも、月173時間で出しているのか286時間で出しているのかで、続けられるかどうかがまるで違う、という話です。そして時間を減らすには人を雇うしかなく、雇った瞬間に手取りは32万円から減ります。
だから、オーナー1名稼働モデルを見るときの本当の質問はこれです。
「2人目を雇って、それでも手取りが減らないのは月商いくらからですか?」
この答えを持っている本部は、加盟店が長く続く設計を考えています。答えがない本部は、オーナーが1人で走り続けることを前提にしています。どちらが良い悪いではなく、自分が何年その働き方をできるかで選ぶべき部分です。
加盟金30万円と通常200万円の差を、回収月数に置き換える
このブランドの加盟金は、キャンペーン適用時30万円・通常200万円。差は170万円です。「今なら安い」と言われると得に見えますが、判断材料に変えるには回収月数に直すのがいちばん早いです。
| 条件 | 初期費用 | 月32万円で割った回収月数(編集部逆算) |
|---|---|---|
| キャンペーン適用(加盟金30万円) | 105万円 | 約3.3ヶ月 |
| 通常価格(加盟金200万円と仮定) | 約275万円 | 約8.6ヶ月 |
※どちらも「初月から月商132万円が出た場合」の理論値です。実際は立ち上がりに数ヶ月かかるのが普通なので、その分だけ後ろにずれます。運転資金(売上が立つまでの生活費+経費)は別に用意してください。
見てほしいのは、どちらの条件でも1年以内に回収できる計算になるという点です。つまりこのブランドで判断を分けるのは加盟金の額ではなく、**「月商132万円が本当に出るのか」**の一点に集約されます。キャンペーンの締切に急かされて、確かめるべき質問を飛ばすのがいちばんもったいない使い方です。
なお、キャンペーン価格は時期によって変わります。最新の条件は必ず公式の募集要項で確認してください。
業態が変わると、年収の見え方そのものが変わる
ここまでは無店舗型サービスの例でした。業態が変わると、引き算の形も、そもそもの見え方も変わります。
| 業態 | 年収を読むときの注意点 |
|---|---|
| 無店舗型サービス(清掃・修理など) | 家賃がない分、引かれるものが少ない。ただし売上の上限=自分の稼働時間 |
| 飲食店 | 家賃・人件費・食材費が重い。詳しくは「飲食店オーナーの年収はいくら?」で内訳を分解しています |
| コンビニ | オープンアカウントという独自の会計方式があり、手取りの読み方が他業態とまったく違う(下記) |
コンビニで検討している人のために、「オープンアカウント」について触れておきます。これは本部が加盟店のお金を一つの帳簿でまとめて管理する仕組みです。商品の仕入れ代金を本部が立て替え、売上から差し引き、その差額を貸し借りとして記録していきます。
何が起きるかというと、「今月いくら儲かったのか」が、自分の通帳を見ても分からなくなるのです。本部から送られてくる計算書を読まないと、手取りが確定しない。しかも仕入れ代金の立て替え分には金利がつく設計になっているのが一般的です。
コンビニ系を検討しているなら、加盟金やロイヤリティ率より先に、この会計方式の説明を受けてください。「毎月、私の口座に実際に振り込まれるのはいくらですか」「その金額はどの書類のどの欄に出ますか」——この2つを、契約前に紙で確認できるかどうかが分かれ目です。
業種別の年収ランキング|当サイトが逆算した公開値を並べる
「結局、どの業種がいくら残るのか」を知りたい方のために、当サイトが個別記事で逆算・公開してきた数字を業種別に並べます。各行は「何を引いた後の数字か」の前提が違うので、金額の大小だけで順位をつけずに、必ず前提ごと読んでください。
| 業種(記事の例) | 手元に残る額(編集部逆算) | 前提 |
|---|---|---|
| ハンバーガー大手(マクドナルド) | 年900万円前後 | 年商2億円の店・返済前・税前 |
| 飲食店(焼鳥店モデル) | 年792万円 | 月商330万円・返済前・税前 |
| コンビニ(セブン・ローソン・ファミマ) | 手取り月22万〜59万円 | 日商40万〜65万円の3パターン・契約タイプで大きく割れる |
| カフェ(コメダ珈琲) | 年382万〜1,198万円 | 1店舗・返済後・税前 |
| ラーメン(油そば・二郎系) | 年396万円 | 営業利益月39万円のケース・返済後・税前 |
| 清掃・無店舗サービス(本記事) | 年384万円 | 月商132万円・オーナー1名稼働・返済前・税前 |
| 買取(買取大吉) | 年50万〜186万円 | 開業資金を全額借入した1年目・税引き前 |
こうして並べると、「業種で年収が決まる」のではなく、月商の規模・自分が現場に立つか・返済をどれだけ背負うかの3つで決まっていることが分かります。同じ飲食でも、年商2億円の大型店と月商160万円のラーメン店では桁が変わりますし、逆に無店舗の清掃と1店舗のカフェは、業種がまったく違うのにほぼ同じ水準に並びます。気になる業種があれば、リンク先の記事で「その数字が何段階目か」まで確認してください。
背景:「FCオーナーの平均年収」という数字が当てにならない理由
ネットで「フランチャイズオーナー 年収」と調べると、いろいろな平均値が出てきます。ただ、その数字はほぼ使えません。理由は3つです。
- どの段階の数字か書いていない。返済前か後か、税引き前か後か、自分の人件費を含むか含まないか。この4つが揃っていない数字は比較できません。
- 業態がバラバラ。無店舗型と多店舗経営の飲食を平均しても、あなたの参考にはなりません。
- 続けている人だけが答えている。うまくいかずに辞めた人は、その調査に答えていません。
だから見るべきは平均値ではなく、**「あなたが検討している1ブランドの、条件つきの数字」**です。今回のおそうじ革命の例で言えば、「月商132万円・オーナー1名稼働・返済前・税前で32万円」。条件が全部くっついているから、判断に使えます。
事業所数や業界規模といった統計は、開業してから知っても間に合います。契約前に必要なのは、目の前の1枚の収支モデルが、何を含んで何を含んでいないかを読める力だけです。
まとめ:見るべきは金額ではなく「何段階目の数字か」
- 本部資料の「手取り」は、たいてい返済前・税前・自分の人件費含まず
- 月32万円は、年384万円ではなく、そこから社会保険料と税金を引いた後が実際の生活費
- 「利益率◯%」は、どこまで引いた後の率かを必ず聞く
- 1名稼働モデルは、2人目を雇っても成立する月商を確認する
- キャンペーン価格は、回収月数に直すと冷静に比べられる
数字が読めるようになると、怖いブランドと、そうでないブランドの見分けがつくようになります。逆に言えば、読めないまま契約するのがいちばん危ない。
自分が検討しているブランドの収支モデルを見て、「この32万円って何段階目の数字だろう」と迷ったら、開業ジャパンの無料LINE相談に資料の写真をそのまま送ってもらえれば、一緒に読み解きます。加盟を決めていない段階、むしろ迷っている段階の相談のほうが役に立ちます。
まずは自分に合う業態を絞りたい方は、開業診断から始めてみてください。3分ほどの質問で、向いている開業スタイルの方向性が見えてきます。
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